プロローグ3
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橋見 安広は手を固く握り,無線の音を聴いている.
無線から報告された内容は戦闘開始の音。
幸音と美香子の実力も十分であることを同じ課に所属している橋見は理解している。
しかし、戦闘環境が悪いのだ。
籠城。
その単語を橋見が聞いたとき、橋見は自分たちの戦況が悪いことを悟った。
橋見は運転に集中していたため、マンションの間取りや護衛対象の情報は、「運転の片手間に聞いた」ぐらいにしか知らない。
しかし、「マンション」「籠城」「護衛対象二人、隊員二人」
この三要素だけで焦るには十分、十分過ぎる内容である。
車を止めた際に橋見が見たマンションの大きさはそこまで大きくない。
そして、戦闘時には完全に無力となる母親と子供。
隊員二人で護りながらの籠城戦。
子供というのは、大人よりも厄介だ。時折予測できない行動をとる。
勝手に走り出した子供を護ろうとして、隊員が死亡する。
そんな事例も存在するのだ。
死を呼ぶ不確定要素が確実に交じっていると言える。
さらにマンションの屋内は狭い上に入口が玄関ドアとベランダの二つ。
一階の部屋であるためどちらからも侵入が容易い。
マンションの屋内は爆弾なり手榴弾なりを投げ入れられれば、それだけで致命的な一手となる。
その一手を敵がうてる。こちらが籠城戦を行う側であるのは不利である。
(籠城戦……だったら俺がやらなきゃいけねぇことは……)
橋見は車を隠すように停車し、降りた後即座にトランクを開ける。
車のトランクの中には黒のケースが入っており、橋見はケースを開けて中身を取り出していく。
ケースを開けた橋見は中から自分専用の装備とガスマスクを取り出す。
ガスマスクを装着し、自分専用の装備をポケットに忍ばせる。
さらに、ケースの中に付属として入れている有毒のガス手榴弾を持つ。
戦闘態勢を整えた橋見は車のトランクを閉めてマンションの方向に走り出した。
(ベランダはガラス窓だけで侵入しやすい。なら、鍵を閉めているであろう玄関口からの侵入に時間が掛かっているはず……)
マンションの玄関口が遠目に見える位置に移動した橋見が見たのは、予想通りC4をドアに張り付けているテロリストの姿だった。
(ビンゴッ!!)
即座に手に持ったガス手榴弾のピンを抜き、テロリスト集団の方向に全力で投球する。
発生させるガスは目と喉、鼻を苛め抜く有毒性のガスだ。
目暗ましも合わさって、相手の行動を阻害するには十分だ。
(幸音、美香子。俺が全力でサポートしてやんよ…!)
ピシュンッ!
橋見はポケットから自分専用の武器を持ち、能力を発動させた。