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第一話 土ボタルの洞穴。(土ボタルはハエの仲間です)


「どうじゃ。成功か……?」


 目の前には、白い顎髭に覆われて、頭にとんがり帽子を乗っけた、偏屈で頑固者っぽい感じのとっつきにくそうな雰囲気をした、見るからに魔法使いってなあ、恰好の爺さんが居た。

 だが、見た目は魔法使いっぽい恰好なのに、服の色が迷彩柄ってのは、中々に先鋭的だな。


 周囲を見ると、どうやら地下の鍾乳洞にでも籠っているらしく、周囲には鍾乳石や石筍が其処かしかに存在し、棚田の様な広い地下水源が存在している。


 しかも、オレの傍にある鍾乳石はただの鍾乳石ではないらしく、目の前の魔法使いジジイの持って来た松明に照らされて乱反射を行っており、まるで、地下に居ながらにして星空に包まれている様な不思議な感覚に陥ってしまう。


 余りに神秘的で魅惑的過ぎるその光景の美しさは、文字や言葉では到底表現することができず、異常な事態に巻き込まれてしまっている筈なのにも関わらず、オレは暫くの間は思考を停止させて、その光景に目も心も奪われてしまうほどであった。

 

 そうしてオレが動くこともできずにその光景に魅入られていると、突如として目の前の爺さんが鋭い舌打ちをして、唐突にオレをディスった。


「ちッ失敗か。ポンコツめ」


 その瞬間、オレは眼の前の爺さんを殴った。

 オレは、売られた喧嘩は一瞬で買い上げるタイプだ。

 何が何だか判らねえが、ディスられたままですっこんでいたら、第一南中の狂犬の名前が泣くぜ。

 オレは、ボクシングのファイティングスタイルを決めてジイサンの目の前に立塞がると、わざとらしくシャドーボクシングを決めてやった。


 あれ?何か、オレの手、おかしくね?

 一瞬、視界に映ったオレの体に違和感を感じるが、それも一瞬の事。


「な、何をするんじゃ!主人の命令に反抗するなぞ、ゴーレムの風上に置けん!今すぐ、ワシの命令に従って、行動せんか!」


 腰を抜かして怯えながらも、やたらと偉そうに上からオレに何事かを言っているジイサンの態度に、オレは切れた。

 オレは、こういう頭ごなしに何か言って来る奴が、此の世で一番嫌いなので、とりあえず目の前の爺さんの胸倉を掴み上げて、拳を振り上げた。

 これ以上、何か言ってくる様なら、ぶん殴る。


「ぎゃー!スマンスマンスマン!ワシが悪かった!心の底から謝る!許してくれ!そうだよね。どんな奴でも、初対面で偉そうに言われた腹が立つよね!ごめんごめんごめん!」


 オレの怒りを感じたのだろう。ジイサンは、途端に手のひらを返したように謝りだし、見ているこっちが気の毒になるくらいに情けない姿を晒して、命乞いをしてくる。

 それを見れば、途端にオレの気持ちが萎えた。

 まあ、いいか。一応、謝っては貰えたしな。

 ってか、何かもう、見ていてこの爺さん、面白くなってきた。

 つーか、オレ、この爺さん結構好きかもしれない。


 まあ、それはさておき。


 一体、オレの現状は今どうなっているのか。


 それを目の前の爺さんに聞かねばならないようだ。


ーーー☆ーーー


 一時間後。


 天上から逆さづりにされた爺さん、改め、魔術師テオドールは、申し訳なさそうな目で地面に胡坐をかくオレに向かって、ちょっとしたお願いをしてくる。


「……えーと、呉さん。呉・徹さん。申し訳ありません。許してください。下ろしてください」


 許さん。


 貴様はそうやって、宙づりにされていろ。


 視線すらも使って哀願してくるジジイに対して、オレは無言で睨みつけることで、その怒りの大きさを示す。


 オレが何故ここまで目の前のジジイに対して怒りを燃やしているのか。


 答えは単純だ。


 こいつがオレを殺したからだ。

 

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