プロローグ 雷とかけて、柔道家ののど輪と解く、その心はどちらも落ちるでしょう
その日、オレは雷に打たれて死んだ。
その時のことは、今でも覚えている。というか、忘れようがない。
大学に合格して、埼玉に暮らしてから初めての夏。今でも鮮明に覚えている肌に突き差さるような、あの暑い日差しを浴びながらオレは、クーラーの着いていないアパートからの緊急避難として、一番近くにある徒歩十分で行けるコンビニへと目指していたのだった。
温暖化する地球のオゾン層にヤル気出せよ。熱くなるよりクールになる努力しろよ。とか、力無く訳の分からないことをぶつぶつと言いながら大通りの横断歩道で足を止めた時だった。
不意に、今まで燦々と輝いていた太陽に陰りが生じ、鼻先に小さな水滴が当たった、と思った瞬間、一瞬で街の中にはまさしく、バケツをひっくり返したような大雨が降り注ぎ、あれだけ陽炎を上げる程に熱しあげられていたアスファルトの道が、嘘のようにちょっとした川へと激変したのだ。
『ゲリラ豪雨かよ!チクショウ!』
もちろん、雨具など持ち合わせておらず、雨が降り注いだ瞬間にびしょ濡れになったオレは、思わず天に向かって怒鳴り声を上げてしまった。
その瞬間、雷がオレの頭に落ちてきて、オレは死んだ。
ちなみに、その時の俺はあまりにも突然にそんなことが巻き起こったので、正直、自分に何が起こったのか判らなかったが、その後に起こった色々な事を思い返して、漸くこの事実に思い当たったのである。
冗談みたいな死に方だったので逆に許せたが、自分の運の悪さを呪わずにはいられない。
そして、そんなオレは今、
「守護神様!バンザイ」
「護王霊武神様!バンザイ」
ゴーレムとなって、崇められている。