すべ手はここから始まった 1
「どこで間違えたんだろう?」
私は砂漠にある洞窟の中で同行者と迷子になっている。地図に載っていた道、二手に分かれた場所での選択をミスしたのだ。
どちらに行くかを相談し、私は右と言って相手は左と答えた。なぜそう思うのか問いかけると、人は左から右へ視点が動くから、統計的に左を選ぶからだといった。
そこまでは私と似たような考えで、なぜなら私はあえて右を選んだから。でも彼はそこを逆読みして左だというのだ。
結局は運任せで棒が倒れた方へ進むことにした。その結果がこれ、行き止まりで、帰り道はモンスターが暴れたのか内部が崩れて封鎖された。
「ここで死ぬ運命なのか」
「まあ、遅かれ早かれ一週間後には死ぬんだから……」
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違う……あれでもないし、これでもないわ。
「転校生がくるんですって」
「ふーん?」
エリート校から田舎校への転入してくるもの好きな人間がこのクラスに来る話題で持ちきりの教室内で、唯一といっていいほど意識が飛んでいる女子生徒がいる。
「リネアったら、また道行く人の手を見ていたの?」
「……運命の人が、私の小指に赤い糸が結ばれた相手がいるかもしれないでしょ?」そういって小指を切なげに見つめる。
「だからって男女問わず手ばかりみてもしかたないでしょう」
「女装した男性かも知れないし、手だけ見てたから年齢性別まで気がつけなくて」
なぜそこまで運命の相手にこだわるのか、友人はリネアが幼少期の絵本の王子様を卒業できていないのだろうと呆れるのだった。
「はーい席に着いてください」
担任教師のシャウセントがやってくると皆が急いで着席した。
「転入生が来ることはもう知っていたようだね。入っておいで」
ガラッとドアを開けて、入ってきたのは白い制服の男子生徒。ミーゲンヴェルドに生きるものなら誰もが知る超名門の魔法学園の制服だった。
容姿は整っているが目つきは鋭く、教室の端まで伝わる闇属性のオーラをまとっており、近寄りがたい雰囲気で先ほどまで皆の活気はなくなった。