#1:誕生! 俺の弟!
生まれる瞬間は頭が潰れるかと思ったし、ママのおっぱいを飲んでいるのは苦痛だったので、しばらくの間はボケーっとして過ごすことにした。数学の授業の時のアレである。それを月単位で行い、めでたく一歳の誕生日を迎えた。
姉ちゃんとの理想の年齢差は、一~二歳程度。同じ学校に通えるぐらいである。子作りから出産まで、まあ最低でも一年ぐらいはかかるだろう。そんなざっくりとした概算から、二歳差以内の弟を仕込んでもらうには、そろそろ仕掛けねばなるまいと思い至った。
だから俺は、なかなかうまく動かない幼い口で、頑張って喋った。
「おとうと、ほしい」
以前からだーだとかぶーぶとか言って練習していた甲斐あり、なんとか認識できるであろう言語を発することができた。
これには両親もたいそう驚いていた。あまりにも驚きが激しすぎて、内容を認識してくれなかった。確かに、赤ちゃんの言語レベルとしてはかなり高度なものだっただろう。いきなり二語文はハイレベルすぎたかもしれない。
というわけで、だーだとかぶーぶと同レベルの言語で言い直すことにした。
「おとーと。おとーと」
これならいいだろう。両親は若干驚いていたものの、今度は喋ったことよりも内容に着目してくれた。
計画通り。
母には悪いが、またそのお腹を痛めて子供を産んでもらう。頑張れ親父。目指せ一姫二太郎。
※
半年後には、母のお腹がすっかり膨らんでいた。
当然だ。寝たふりをして、しっかりとこの目で両親のプロレスごっこを確認したのだから。なかなかにキツい光景であったが、両親が二人共美形だったのが不幸中の幸いだった。
それからしばらくして、無事に弟が生まれた。本当に良かった。
幼子故に無力ながらも、俺は必死に弟のお世話に貢献した。弟に好かれなければ、話にならないからだ。
それから十年近く、ごく普通に家族の絆を深め合った。一緒にお風呂に入ったり、おままごとに巻き込んだりした。弟が転んで泣いた時は、手を差し伸べてやったりした。
申し遅れたが、今の俺の名前は彩芽である。修司は弟の名前になった。以前の俺と同じ名前で呼ばれる弟の存在には奇妙な感覚を覚えたが、しかしより一層没入感が深まった。生まれ変わった俺は、いいお姉ちゃんを手に入れたのである。
弟が高校受験をする頃には、奇妙な感覚にも慣れていた。
それよりも、弟が同じ高校に入るよう仕向けることのほうに意識が行っていた。
前の人生の記憶を活かした俺は、調子に乗って県内でも上位の高校に入ってしまった。まあ元々頭は良いほうだったし、学校の勉強についていけないということもなかったのだが……問題は弟だ。
修司は、俺が甘やかしていたこともあり、少々怠惰な人間に育ってしまっていたのだ。
これはいけない。
俺は心を鬼にした。一時的にスパルタお姉ちゃんにクラスチェンジし、弟の勉強をビシバシ指導した。
「違うでしょ。これは動詞。こっちが名詞」
「英語なんてできなくてもいいだろー」
こんなことを言うのも、俺が今まで甘やかしてきたからである。
「だーめ。受験生の言っていい言葉じゃありません」
責任をもって、弟の性根を鍛え直した。
後はまあ、俺が通ってる高校の魅力をたまに話してやったり、それとなく同じ高校に来てくれたら嬉しいなアピールとかもして、なんとか同じ高校に入学させることができた。
ここまで大体作戦通り。
そろそろ、弟を誘惑しよう。
俺の夢は、お姉ちゃんに中出し孕ませックスして責任を取ることだった。つまり、今の俺の夢は、弟に中出し孕ませックスされて責任をとってもらうことだ。
修司が入学する頃には、俺はもう高三だ。
同じ高校の生徒で居られるのは、一年間のみ。
この限られた時間の中で、どれだけ弟の意識をこちらに向けることができるか。それが勝負の肝であることは、今までに見た姉モノを分析した結果からも明らかだ。俺は詳しいんだ。
スパルタお姉ちゃんを二年間やっていたせいで、修司がプチ反抗期に突入しているのが問題ではあるが……。
しかし、ピンチはチャンスである。
厳しい姉というイメージを持たれているのなら、そのイメージを逆手に取ってやらない手はない。
つまり、ギャップ萌えだ。
それは姉モノの常套手段でもある。形は違えど、ギャップ萌えを取り入れた姉モノは古今東西どこを探しても多く出土する。
そう、全ては掌の上。
この先どうあがいても、修司は彩芽に無様腰振りすることになるのだ。