#Prolog:俺自身がお姉ちゃんになることだ
俺の名前は笹沼 修司。お姉ちゃんに中○し孕ませ○クスして責任をとりたい高校生だ。
俺がお姉ちゃんへの想いに気づいたのは、中学二年生の時。その日から俺は、お姉ちゃんへの想いを胸に、お姉ちゃんとの未来を妄想し続けてきた。
この想いは、世界中の誰にも負けやしない。俺こそが、世界で一番お姉ちゃんを愛しているのだ。
しかし、一つだけ問題がある。
俺には、姉が居ないのだ。
一人っ子なのだ。
そう、俺は、姉の居ない姉萌え男子なのだ。この世で一番虚しい存在なのだ。
だから俺は、今日に至るまで、ただひたすらに存在しないお姉ちゃんへの想いを醸成させてきた。数多の姉文庫を読破し、姉コミックで暇をつぶした。無論、姉アニメも網羅している。ユキ姉いいよね……。
しかしそんな俺に、ある転機が訪れた。
スズメバチに刺されてしまったのだ。
スズメバチに刺されたのは、小学生の頃家族で行ったハイキング以来である。通算二度目のスズメバチによる洗礼を受けた俺は、アナフィラキシーショックで死んでしまった。
死んだ俺が、なぜこうして自分語りをしているかだって?
その理由は多分、目の前の髭のおじさんがよく知っていると思う。
「自分語りは済んだか?」
「ああ、俺がどうなってるのか、思い出せた」
今際の際でこの謎世界にたどり着いた俺は、記憶が混乱していた。自分が何者なのか、なぜここに居るのか、全くわからなかったんだ。
そこで俺は、今までの人生を振り返った。と言っても、俺の人生はお姉ちゃんへの想いで埋め尽くされている。それさえ思い出せれば、十分だった。
「で、ここはどこなんだ?」
俺が訊ねると、髭のおじさんはさも当然のことのように答える。
「生と死の狭間の世界じゃ」
意味がわからねえ。
「俺は死後の世界なんか信用しちゃいねえんだ」
これは親父の受け売りだが……魂の存在が証明されないかぎり人はただの物質であり、死んだらそこでお終いである。
だが、それはこのおじさんも同じ認識のようだった。
「死後の世界はない。死んだら無になる。だからここは、生と死の狭間の世界なんじゃ」
つまり、死後の世界はないが、生と死の狭間の世界ならある、ということらしい。
俺死んだんじゃなかったのか。
「じゃあ、どうして俺はここに居るんだ?」
どちらにせよ、それがわからない。たしかに俺は死んだはずだ。だが、実際には死んでいない。それはなぜか。
髭のおじさんは、たっぷりと蓄えたあご髭をもしゃもしゃしながら語る。
「申し訳ないんじゃが、君の死はわしの手違いなんじゃ。本来ならあってはならないものなんじゃ……」
長く長く、おじさんはこの世界の "システム" について語りだした。
要約するとこうだ。
この世界には、定められた運命が存在している。
それはおじさんよりも更に上位の存在が定めた絶対のルールであり、それに沿うようにおじさんは人間一人一人を形成するのだという。
しかし俺は、おじさんがあくびをした瞬間に形成された命であり、若干仕様が変わってしまったせいで本来の運命から逸れてしまったらしい。
「わしは最後まで隠し通すつもりだったんじゃが、君の死により上位存在にバレてしまっての……。君の命の形成から、やり直すことになってしまったんじゃ」
「はあ……」
「つまり君が生まれてから今日までの時間は、全て "なかったこと" になるんじゃよ」
「……え?」
「簡単に言うと、人生やり直しじゃ」
なんてこった。
これじゃあ、またあの面倒な中三の夏休みの宿題をやらなきゃならないじゃないか。受験だって、二度とゴメンだ。
「嫌ですよめんどくさい……」
「まあそう言うであろうことは予想がついておった。じゃから、上位存在とわしから、詫びを入れる」
「謝るぐらいなら最初からやるなよ」
「そう言うな……。君の生まれた瞬間から、世界の運命を書きなおしてやるんじゃから」
あまりたやすく理解できる言葉ではなかった。
「運命を、書き直す?」
「そうじゃ。やり直す君の命の形は、君が決めていい。出血大サービスで、記憶も持ち越しじゃ。わしらはそれに合わせて、世界の運命を書き直す」
「……つまり、俺にお姉ちゃんができるってこと?」
「そうは言っておらん。君が産まれるまでの運命は変えられんよ」
がっかりである。
「その代わり、君は自分の好きな肉体を手に入れることができる。人類史以来の天才でも、傾国の美男子でもいいぞ」
「お姉ちゃんくれないならなあ……」
肩を落とす俺。
しかし次の瞬間、あることを思いついた。
「あ、そうだ。じゃあ俺のこと女にしてくれよ。それだけでいい。できるだろ?」
言うと、おじさんは少し不思議そうな顔をした。
「そりゃあできるが……それでいいのか?」
「ああ、もちろん」
「そうか……じゃあ、行くぞ。心の準備はいいか?」
「いつでも来い」
俺にお姉ちゃんができないなら、どうやって夢を叶えるのか?
答えは実にシンプルである。
俺自身がお姉ちゃんになることだ。