誰もやらないとは言ってないよ
PV30万、ユニーク4万突破しました!!
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これからも読んでくれる皆様に楽しんで頂けるよう頑張ります!!
俺がギルドカードを見てうんうん唸っている姿を見て、どこか興味を失ったかのような落ち込んだ声でハオスイが言葉を紡ぐ。
「……どう?これでわかった?誰も私には勝てない」
「……なら何故俺と戦おうとするんだ?」
すると、ハオスイは考え込むように上を見上げ、ゆっくりと俺へと視線を戻すと、こてんっと首を傾げる。
「……他にする事がないから?」
魔王化の影響……じゃなさそうだな。多分だけど、強くなりすぎたんだろうな。周りに誰も自分と競える者や強い者が居らず、目標を失った感じだろうか……ただ、習慣で戦ってるだけみたいな……そういう風にハオスイを見ると、確かに生きる気力みたいなものがないように思えた。
「……それにアナタは断れない」
「なぜ?」
「……ん」
と、ハオスイがメアルを指差す。
「……その子を保護した。世話した。ご飯をあげた」
それを言われると弱いなぁ……断るつもりはないんだけど、どうすれば無事に元に戻せるかがわからない……出来ればメアルを保護してもらったのだから、目の前のこの少女を救いたい。しかし、このまま考えていてもいい案が浮かぶとは思えなかった。正直、時間が欲しい。けど、あまり時間もかけられないと思う。いつ他の奴みたいに羽とかが生えだすかわからない。そこまでいくともう救えない気がした。
「……わかった。戦うのはいいけど、少し時間をくれないか?」
「……なら10分後」
「……わかった。それでよ……くないっ!!早いよ!!なんで10分後なんだよ!!」
「……なら1時間後?」
「ちっが~~う!!とりあえず今日はやめましょ?って意味だよ!!」
「……じゃあ、明日?」
「そういう事じゃねぇ!!」
「……むぅ……アナタの言ってる事は難しい」
「難しくねぇ~~~!!!」
……結局、2日後の昼になりました。はぁ……
とりあえず、この2日の間になんとか打開策を見付けないと、と思案しながら宿を出ると、そこには艶っぽい微笑みを浮かべる女性がこちらを見ていた。初めて見る上から下までが薄い1枚の布地を重ねて、腹部には太い帯が巻かれている服装に、髪は後ろに纏め上げられ、所々には金色の装飾がついた物を纏められた部分に差し込んでいた。妖艶な顔立ちを目の下にある黒子が更に強調しており、そんな女性に見られ、思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。その女性はゆっくりと俺へと歩み寄って来る。え?俺?と身構えると、女性は綺麗に一礼すると自己紹介をした。
「はじめまして、ワズさん。私はここオーセンの領主であり、グレイブの妻でもあるセレナと申します」
しゅ~~~~~ん……
なんだろう、一気に冷静になったな。
「はじめまして、ワズです。それでえっと……グレイブさんの奥さんが俺に何か用でしょうか?」
「えぇ、グレイブからの頼みもあり、宿が決まったのでワズさんを宿までご案内しようと参りました」
「あっ!そうなんですね。じゃあ、えっと、宜しくお願いします」
そうしてセレナさんの案内の元、後を着いて行っている最中、どこか遠くから男性の声で悲鳴が聞こえた。
「今、悲鳴が聞こえませんでしたか?」
「えぇ、どこかの馬鹿男が女湯への侵入か覗きをしようとしたのでしょう」
……え?いや……悲鳴だったんですけど……
「この街には壁がありませんから通常なら覗き放題入り放題だと思うのでしょうが、実際はおびただしい程の数の罠に、見えない防壁、外からの認識阻害物等、様々な手段が講じられておりますので。この女湯区には例え南の勇者であろうとも、許可無く入る事は出来ないだろうと、設置して頂いた商店の方が仰ってましたよ」
「……厳重なんですね」
「えぇ・・・・・・その方が設置する際よく「覗く奴はサーチ&デストロイ」と言っていたのが印象的でしたね」
「サーチ&デストロイ?何ですかそれ?」
「確か、見つけ次第皆殺しだったような……」
「こわっ!!」
何それ怖い!!というか、今現在それになってる人が居るって事なのか……まぁ、自業自得か。
そのまま混浴区へと戻り、案内されたのはこの区で一番大きく3階立ての豪華な宿だった。
「え?ここですか?」
「はい。私の経営する宿で、ここの一番いい部屋を取っております。それと昨日は失礼しました。ちょうど部屋が空いておらず、グレイブも客を優先しろと言ったのですが、まさか、納屋に泊まるなんて……」
「あぁ、別にいいですよ。気にしてないんで」
「そう言って貰えると、気が楽になります。では、お部屋へと案内しますね」
宿の中へと入ると、従業員の方はセレナさんに一礼してから仕事へと戻り、顔なじみなのか時折挨拶をしてくるお客さんも居たが、セレナさんは丁寧にお断りの対応をして俺を案内していく。そうして通された部屋は本当に広く豪華で、調度品も高そうな物が使用されているみたいで、正直俺みたいなのが使っていいのだろうかと思ってしまった。だが、この部屋から見える景色は見事であり、この景色だけでもこの部屋に泊まる価値はあるんじゃないだろうかと思った。そんな部屋の中央にあるテーブルではグレイブが1人のんびりと酒を飲んでいた。俺に気付くと片手を挙げて招き入れる。
「よぉ!ワズ坊!ハオスイちゃんとは話がついたのか?というか、その頭の上に乗ってんのがメアルか?」
「2日後戦う事になったよ。ほらメアル、友達のグレイブさんだ。挨拶して」
「キュイ~」
「おぅ!ワズ坊の友達のグレイブだ!宜しくな!」
そうだ。グレイブさんなら何か打開策があるかもしれない。そう思って俺は赤い玉の事、飲んだ者がどうなったか、ハオスイの現状を話した。それを聞いたグレイブさんは顔を上げ「う~ん……」と悩んだ後、俺へと視線を移す。
「……そんな事になってるのか……悪いな、何も思い浮かばんわ。セレナはどうだ?」
「そうですね。ハオスイさんは特に問題を起こす訳でもないし、むしろ、挑戦者を募った結果この街が盛り上がったのも事実。出来れば無事に元に戻って欲しいですけど……すいません。私もそういったものを治すモノは存じ上げないですね。お力になれず、すいません」
「いえ、気にしないで下さい。思い浮かばないのは俺も一緒ですから」
2人も何も思い浮かばないか。フロイドに聞いても一緒だろうか?この場には居ないし、後で念のために聞いてみるか。ただ、いつ戻ってくるかもわからないし、グレイブさんでも知らないぐらいなんだから、知ってるとは思えないんだよな。はぁ……現状手詰まりだな。ほんと神様にでも助けて欲しい気分だよ……
……ん?神様?……女神様?




