体調不良だから覚えてません
毒の沼地の件から数日が経った。だがその数日間……いや今も、俺の体はひどく重い。疲れているという訳ではないが上手く体が動かせない。何かが体の中で渦巻いているというか、体が中にある異物と混じり合おうとしているような、そんな感覚がずっと続いており、体力が万全になる事はなかった。特に初日は酷く動くことも出来ず、ひたすら寝て過ごした。今は幾分マシになって動けるようにはなったが、たまに混じり合う感覚がひどくなり身動きがとれない時がある。ほんとなんなんだろうなぁ……やっぱ毒を飲んだのがいけなかったのかなぁ……
そんな状態ながら俺はギャレットさんの所へ向かっている。お昼頃、強面さんが宿屋まで来て、館で快気祝いをするらしく、俺に御礼も言いたいそうなので呼びに来たらしい。タタさんにも来て下さいと言われた事を思い出し、強面さんと一緒に向かう事にしたのだ。館に辿り着くと、警備の人達からの拍手で迎えられたが、バシバシ肩を叩かれたりしたのがキツかった。やめて~!!今はやめて~!!……それでもなんとか笑顔でのりきり、警備の皆さんと共に館へと入っていく。こちらを毛嫌いしている猫の獣人さんも、嫌々ながら拍手しているのがその表情から感じとれた。そんな顔で拍手されても嬉しくないです。
応接間には壊れた物や跡は無く、代わりに大きなテーブルとその上には豪華な料理が数多くあった。ギャレットさんは俺を見つけると両手を広げて近付いてきた。
「よぅ!!やっときたな!!いや~、あの時は助かった。ありがとうな!!」
バシバシッ!!
い、痛いっ!!叩くのはやめて~!!
その後はギャレットさんに促されるまま料理を味わい雑談を交わした。今日は営業せずこのまま快気祝いらしく、レーガンも後から来るとの事だ。強面さんにも改めて御礼を言われ、他の人達にも「助かった」「ありがとう」等、何度も感謝の言葉を投げ掛けられていると、ふと呟いてしまった。
「そういや、タタさんは……?」
言った後にしまったと思い口に手を当て、辺りを見回すと近くに居た全員が俺を見て、にやにやしながら微笑ましい目を向けてくる。うぅ……恥ずかしい……すると、ちょうど近くに居たギャレットさんが近付いてきてーーー
「おぉ、そうだったな。そりゃ会いたいよなぁ。わりぃわりぃ気付かなくて」
にやにやしながら言われた。くっ、体調が万全だったなら殴ってたのに……命拾いしたな、ギャレットさん……
「今ちょっとはずせない用が出来てな。そんなに時間はかからないだろうから、もうすぐ来るとは思うから……なぁ?」
そう言ってギャレットさんは俺を一室へと案内し、ここで待つように言われ出ていった。え?何これ?いや、別に2人きりにして欲しい訳じゃないんだけど……けどまぁいっか。俺はそのままソファーへと座って一息ついた。正直助かった。先程から体の内から何かが暴れていてキツかった。
「ぐっ……うぅ……」
汗が止まらない。呼吸が苦しくなってきた。俺はそのままソファーに寝そべるように倒れ意識を失った。
……ん……
うっすらと目を開けるとタタさんが居た……ような……ダメ……だ……起きて……られな………………
………………なんだろう……なんか甘い……いい香りがする……それになんか……顔の下が柔らかいものに包まれて……気持ちがいい……あぁ……なんか体が楽になってきたな……
ハッ!!!!!
前にもこんな事があったよな。周りを見ればいつもの宿屋の部屋。メアルはばっちり俺の横で眠っている……ハッハッハッ!!また寝てしまったのか。今回はどうやって帰ってきたんだろうか。まさか、強面さんにお姫様抱っことかじゃないだろうな……嫌がらせでギャレットさんや話を聞いたレーガンとかならやりそうだな。頼む!!馬車で送ったとかでありますように!!……そういえば眠っている最中タタさんが居たような……ん~、まったく思い出せない。何か覚えていなきゃいけない事をされた気もするんだが……
まったく記憶にございません!!!
思い出せない事に何かこう……大切な青春の1ページを失ったような喪失感を感じる。うぅ……なんか勿体無い事したなぁって思うのは気のせいだ……きっと……
そう言えば何かいつも通りだな。体に疲労感も内から混ざり合うような感覚もない。というか、力が溢れてるような感じだ……溢れてる?
……いやいやまさか、そんなはずないって。だって、特に何かをした訳じゃないし、ここまでの強さだし、鍛練もしてないし、強くなる訳ないじゃないか……ただ、思い当たる節はある。毒の沼地を飲んだ後に発生した光の粒子だ。あの粒子は俺の体の中に消えた。そして、その後の体調不良……混じり会う感覚……もしかして俺の体と光の粒子が一体化しようとしていたのだとしたら……そして一体化が終わり体調が戻ったのだとしたら……
……よ、よし。確認してみよう。きっと今まで体調が悪かったから、元に戻った反動で力が強くなったと錯覚しているだけさ。そうに違いない。
俺はギルドカードを取り出し、血を1滴垂らした。




