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子の心、親知らず

南の国に向かうのは俺、メアル、サローナ、タタ、ナミニッサ、ナレリナ、ハオスイ、フロイド、グレイブさん、デイズの計9人と1匹である。ギオ王様からは馬車を用意しようかと提案されたが、使者として出向く訳でもないし、普通に旅人として行った方が警戒されないかもしれないと言って断っておいた。


最初徒歩で向かうのもどうかと思った。サローナが動けるのも知っているし、ナミニッサ、ナレリナも王族でありながら、きちんと鍛えているのもあの平原での戦いでわかっている。ハオスイに至っては特に問題ないとわかっているし、フロイドとグレイブさんもここまで一緒に旅をしてきたので問題ない。デイズもあの時よりは弱くなっているが特に問題はなさそうだった。不安要素はタタだったのだが、どうやらここまでの旅路で程良く鍛えられており、本人かも大丈夫だと言われた。まぁ、もし疲れたら俺がおぶっていくよと伝えると、女性陣全員が挙手して私も私もと言われた。君達は充分動けるでしょうが。まぁ、急いだ方がいいのは変わらないので、俺にとってはそこそこの速度で南の国へと向かった。




「止まりやがれ!!」


俺達の前に唐突に人が立ち塞がった。俺は皆を後ろへと隠すように回すと、走りを止め相対するように止まり、目の前に居る人物へと視線を向ける。年は俺よりは上だろうが若いだろう。青空のような青い髪に精悍な顔つき、動きやすそうな軽装に長剣を俺達へと向けている。


「……盗賊か?」

「そうだ。命が惜しければ金と身包みを置いていけ!!」


お決まりの台詞だな。それはいい。別に盗賊如き特に問題は無い。普通に倒す事は簡単に出来る。出来るのだが……問題は……


「……なぁ、あの木の陰に隠れてこっちを見ている人はお前の知り合いか?」

「え?」


俺の言葉に青髪の青年が後ろを振り返り、隠れていた人を確認する。隠れていた人は恰幅のよいおばさんで、今は青年に向けて手を振っている。なんとなく目元が青年に似ているような……


「かあちゃんっ!!なんでここに居るんだよ!!」


青年がそう叫んだ。え?かあちゃん?母親なの?


「だって、心配だったから……10年間も家に引きこもってたアンタが先日家を出て、盗賊とは言え、就職して初めての実戦だろ?怪我しないかと心配で心配で……」


心配する所はそこではないと思う。


「俺は大丈夫だよ!!通信講座で長剣の免許皆伝を取得したんだからさ!!恥ずかしいからもう帰れよ!!」


お前もお前で大丈夫ではない。どこからその自信が出てくるんだ。


「馬鹿野郎!!かあちゃんはお前を心配してここまできたんだぞ!!」


新たな人物が出て来た。かなりごついおっさんだ。話の流れから考えると……


「とうちゃんまでっ!!」


でしょうね!!


「なんでとうちゃんまで来てんだよっ!!」

「とうちゃんもアンタの事が心配なんだよ」

「かあちゃん、それは言わない約束だったろ」


お前もかよ!!てか、親子勢揃いですか?


「もう心配しなくても俺は平気だから、さっさと帰れよ!!何が悲しくて親に見られながら仕事しないといけないんだよ!!」


青髪の青年が声を荒げて親を帰らせようと叫ぶ。だが……


「馬鹿野郎!!お前のとうちゃんもかあちゃんも、お前が怪我しないか心配で見守ってんだろうが!!ちったぁ、その親心を分かってやれよ!!」

「親戚のおじさんまで!!」


「そうよ!!それに、あんなに頑なに家から一歩出なかったアナタが、やっと家から飛び出し、しかも就職までして……アナタのお父さんとお母さんはその雄姿を、目に焼き付けたいのよ!!」

「親戚の姉ちゃんまで!!」


「そうじゃぞ、やっとの事で働きだしたんじゃ、そりゃ心配もするし、嬉しいし、見に来たくもなるものじゃ!!」

「じいちゃんまで!!」


「辛くなったら、いつでも戻ってきていいんだからね?」

「ばあちゃんも!!」


「「「「「「フレェ~!!フレェ~~!!」」」」」」


何やら一糸乱れぬ動きで応援が始まった。


「「「「「「頑張れぇ~~!!頑張れぇ~~!!」」」」」」

「いいから全員帰れよ!!!」


青髪の青年がそう叫び、その場でくるっと回って親達に背を向ける。俺達からは顔が丸見えなのだが、真っ赤になって体はぷるぷると震えている。わかります。本当に恥ずかしいんですね。きっと色々な葛藤の末に、覚悟を決めて10年間籠っていた家を飛び出し、盗賊なんだけど就職?して、その初めての盗賊行為をするって時に、自分を知っている親類がこぞってその姿を見に来る……うん、恥ずかしいね、コレ……


けど、俺達も急ぐのでさっさとケリつけようか……青髪の青年の精神力もそろそろ限界のようだし……


「……じゃあ……俺達もむざむざやられる訳にもいかないし……や、やろっか?」

「……」


俺が殴りかかる構えをとると、青髪の青年も長剣を俺に向けて構える。


「頑張って~!!」

「よし!!やっちまえ!!」

「怪我すんじゃねぇぞ!!」

「ファイトだよ~!!」

「期待しとるぞ!!」

「危なくなったら逃げるんだよ~!!」


青髪の青年の後ろから更なる応援の声が飛んでくる……やり辛ぇ……


青髪の青年も更に顔を真っ赤にしている。


「……えっと……やめ……とく?……さすがにちょっと……ねぇ……」

「……次はないからな……それまでに親達はどうにかしとく……」

「……そうして下さい」


青髪の青年が長剣を鞘にしまい、親達の方へと歩いていく。


「どうしたんだい?」

「なんで戦わねぇんだよ?」

「なんかあったか?」

「なんでこっちに来たの?」

「どうしたんじゃ?」

「怪我してないかい?」


「お前等が恥ずかしいんだよ~~~~~!!」


青髪の青年はそう叫び、泣きながら走り去っていった。親達も不思議そうな顔をしながら、その後を追って行った。あれは多分、しばらくは無理だな……


そして俺達もこの場に留まる訳にもいかないので先へと進んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 職業選択の自由 [気になる点] 職業に貴賎はない??? [一言] (o^-')b ??
[良い点] 完全にあの勇者の世界の盗賊さんが来ちゃいましたね。そのうち毒を塗ったナイフを舐めてしぬんじゃないんですか?笑
[気になる点] 不安要素はタタだったのだが、どうやらここまでの旅路で程良く鍛えられており、本人かも大丈夫だと言われた。 本人からも大丈夫だと言われた。になるのかな? [一言] 気軽に読めるので、最後ま…
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