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マーラオからの救援要請

マーちゃんと呼ばれた獣耳の少女がハオスイの元へ駆け込んで抱きついた。少女の頭は金色の髪にぴんとした金色の猫のような耳がついており、その顔は汗まみれで悲しげな表情をしている。きっと普段なら目尻が上がった快活そうな顔立ちをしているのだろう。服装は豹柄の獣の毛でも使ったような布地を胸と腰回り、足に巻いている。そんな服装なので体つきもわかるが、引き締まった体に少しだけ胸とお尻が出ている。お尻には頭と同じ金色の猫のような尻尾が付いていた。そんな少女がハオスイに抱きついたまま、切羽詰まった声で話しだした。


「助けてハオちゃん!!このままじゃ私達獣人族が終わっちゃう!!」

「……どういう事?」


ハオスイの言葉に少女が続きを話そうとするが、そこでようやく俺達に気付いたのか怯えるようにしてハオスイの影へと隠れ、威嚇するように目付きを鋭くしてこちらを睨んできた。


「フ~、フ~」

「……落ち着いて……旦那様とメアルとセレナは信用出来る……他は知らないけど」


グレイブさんも信用出来るよ。フロイドは知らないけど。しかし、それを言うと話が進まないし、何やら少女は焦っているようだからしょうがないか。俺がハオスイにグレイブさんとフロイドの事を説明し、それをハオスイが諭すように少女へ伝えると、ようやく少女はこちらを睨むのをやめたので、これでやっと少女の話を聞く事が出来るだろう。




1度少女には落ち着いてもらい、俺達は話し合いの場を作った。ハオスイの寝ているベッドを中心にしてその周りに集まった。ハオスイの強い希望により俺はハオスイの隣へ、ベッドの上で座る事になった。グレイブさんとフロイドはにたにたした笑みを、セレナさんはどこか微笑ましそうに俺とハオスイを見てくる。フロイドは後でぶっ飛ばす。メアルはいつものように俺の頭の上に居り、少女は俺とは反対方向のハオスイの隣に座っている。


「さて、それで何やら大変な事が起こりそうな気配だが何があったんだ?」


グレイブさんがそう切り出すと少女が覚悟を決めた顔で話しだした。


「私の名前はマーラオ=レガニール。西にある獣人の王国「レガニール」の王・ギオ=レガニールの娘です」


そう言って少女・マーラオはゆっくりと俺達に頭を下げた。


「……前に人族に奴隷にされそうな所を助けた」


ハオスイがそう言うとマーラオは顔を真っ赤にして反論した。


「あれは他の仲間を助けようとして、ちょっとしくじっただけで!!」


怒ってるという感じではなくハオスイとの仲睦ましい感じを受けた。多分そこからこの2人は友達になったんだろうな。


「それで助けを求めるという事は何やら大変な事が起こったのでしょうか?」


フロイドが話の続きを促すと、マーラオは真剣な顔をして俺達へと向き直る。


「はい。是非とも王の娘として勇者ハオスイにご助力をお願いしたく参りました。現在我が国は穏健派と強硬派に二分しております。私達王族は穏健派に属しておりますが、戦闘に特化した獣人のほとんどが強硬派に所属してしまい発言権がありません。獣人は強い者に従う傾向が強いですから。強硬派の一番上に居るのはお父様の弟であるデイズ=レオニール。彼は私達獣人の中で一番強く、優しかったのですが、ある日突然人が変わったようになり、今は獣人の地位向上、奴隷獣人の解放を謳い文句に国の南にある獣人奴隷を数多く抱える王国へ戦争を仕掛けるつもりなのです。理由も気持ちもわかりますが手段がいけません。戦争は双方に憎しみしか与えませんから。私達穏健派はデイズの強行を止めようとしたのですが、逆に返り討ちに合いお父様を含め数多くの者が捕らえられてしまいました。今王国の実権を握っているのはデイズであり、着々と戦争の準備を整えています」


結構大変な事が起ころうとしているんだな。俺は周りの様子を確認すると、グレイブさんとフロイドは何やら考え込んでおり、セレナさんは絶句していた。ハオスイはいつもの表情でよく分からない。メアルはあくびをしていた。眠くなったのかな?俺がいつものようにメアルを撫でてているとハオスイがメアルに羨ましそうな視線を送りだしたので、空いている手でハオスイの頭を撫でていると、グレイブさんが真剣な顔でマーラオへと言葉を発した。


「事情は分かった。それで勇者ハオスイに何をさせるつもりだったんだ?」

「私と共に王国へと行ってもらい、まずはお父様達を助け出して欲しいのです」

「まずはという事は続きがあるんだな?」

「その後はお父様達と共に強硬派を止める手助けをお願い出来ればと……」

「簡単に言うが分かってるのか?強硬派は大部分が武闘派なんだろう?確実に戦いになるぞ。それは大きな危険が伴うんじゃないのか?」

「それは……そうですが……」


マーラオはそれだけ言うと俯いてしまった。手を固く握り締め何も言わない。すると俺に撫でられているハオスイがマーラオへと顔を向ける。


「……私なら大丈夫。友達が困ってるなら助ける」

「……ハオちゃん」


マーラオが嬉しいような、それでいて申し訳なさそうな表情をハオスイへと向ける。


「そうは言うが今の体の状態じゃ無理だ。自分の体調が万全では無い事くらいわかるだろう?そんな状態で行くのは死ぬ事と一緒だぞ」

「……わかってる。だから……」


ん?ハオスイが俺へと視線を向ける……あっ!!なんだろう。背筋に悪寒が。ハオスイが次に言う事がわかった。


「……旦那様にお願いする。マーちゃんを助けて」


言うと思った。それでも俺はメアルとハオスイを撫で続けた。無言でそうしているとマーラオが驚きに満ちた表情でハオスイへと問いただす。


「えぇ!!ハオちゃん結婚したの?」

「……まだしてない。けど、将来そうなる。きっと。絶対。確定事項」


その念押しは俺に向けてですかね?俺が苦笑いを浮かべているとグレイブさん達が次々に言葉を俺へと投げかけてきた。


「まぁ、ワズ坊ならあっという間に終わらせるだろうな。おめでとう」

「これで安心ですね。おめでとうございます」

「ワズ様に任せておけば大丈夫です。おめでとうございます」

「キュイ!キュイ!」


なんで皆最後に感謝の言葉を投げかける。まだ結婚してねぇよ!!する予定もまだ未定だよ!!なんでもう決定してんだよ!!


「……えっと、話が見えないんだけど……」

「……マーちゃん、旦那様に任せておけば大丈夫。旦那様は私より強い」

「えぇ!!ハオちゃんより強いの?」


マーラオが俺に疑わしげな視線を送る。すいません。よく疑う気持ちは最もですが事実です。強さに関しては。結婚はまだしてません。そこは信じて下さい。


「……お願い旦那様。助けてあげて」


ハオスイが再び俺へと懇願してきた。表情はいつもと一緒だが目が真剣な感じがする。本当に友達を助けて欲しいのだろう。真剣な気持ちが伝わってきた。まぁ、ハオスイが今こんな状態なのは俺にも原因がある訳だし……あるか?……まぁいいか。それにこんな真剣な表情で頼まれて断るのは気が引けるし……しょうがないか……


「……わかった。いいよ。ただし、力ずくで解決する事になるかもしれないよ?」

「……問題ない」


いやいや、ハオスイの方に問題なくてもマーラオの方には問題があるかもしれないじゃないか!!


「ハオちゃんの旦那様がデイズを倒してくれるのなら問題は解決する。強き者として獣人を抑えてくれれば後は私達穏健派が何とかします。元々はハオちゃんにその役を任せるつもりでしたので」


あっ、そういう問題なんですね。なら俺でもどうにか出来るかな?


そうして俺はマーラオと共に西にある獣人の王国へと向かう事になった。

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