ハオスイとの関係
今部屋には俺とハオスイしか居ない。ハオスイのお願いでメアル、グレイブさん、セレナさん、フロイドには部屋から出ていってもらい2人きりにしてもらった。ハオスイはまだ体調が万全ではないとの事なので、そのままベッドにいてもらい、俺はベッドの横へと椅子を持っていき、それに腰かけている。正直2人きりなんてドキドキしたのだが、なんとか平静は保てたと思う。俺が椅子に座りハオスイへと視線を向けると、ハオスイは俺に向けて頭を下げていた。
「……救ってくれて、ありがとう」
「……私を救うためにホワイトドラゴン様の涙を手に入れてきたのも聞いた……本当にありがとう」
セレナさんに聞いたのかな?確かにグレイブさんと居る時に話してたし。まぁいいか。俺は気にしてないよ、と伝えるために俺へと向いているハオスイの頭をつい撫でてしまった。触り心地がよくてさらさらしている髪だった。少し撫でていると急にハオスイがぼひゅっと音が聞こえそうな程真っ赤になり湯気が出ている。あれ?俺何かやらかした?名残り惜しいと思いつつも、このままじゃ話も出来ないと思い手を離すと、ハオスイはゆっくりと顔を上げ、俺が撫でた部分を愛おしそうに触っていた。その仕草を眺めていると、俺と目が合ったハオスイが「うぅぅ……」と言いながら再び毛布を頭の上から被った。
暫くして、ようやく顔を出したハオスイは自分の過去の事を俺にぽつりぽつりと教えてくれた。それを聞いた俺は何も言わず安心させるように笑顔で再びもう1度頭を撫でておいた。とりあえず、あの行商は今度会ったら絶対しばく。存分に撫でておいて、再び隠れたハオスイが出てくるのを待つ。
ハオスイがこそっと、俺がまだ居るのかと確認するような目付きで出てきた。まだ居ますよ~。さてと……じゃ、聞く事聞いときますか。
「それで……えっと……勝った人の奥さんになるって話だけど」
「……うん。なる。旦那様の奥さんになる」
ハオスイがずずいっと俺に近付き、立て続けに答えてきた。
「いや、そうじゃなくて……ハオスイはそれでいいのか?いきなり現れた俺の奥さんになるって?勝手につけた条件だろ?それに従う必要はないんじゃないか?確かに俺が勝ったけど、ハオスイを無理やり奥さんにしようなんて気はないし。ハオスイにはハオスイの人生を歩んで欲しいというか……それに、まだハオスイは結婚出来る歳じゃないし……えっと、何言ってんだ俺?」
「……つまり私の事が嫌いって事?」
ぎょっとした。ハオスイがその目に涙を浮かべて悲しそうな顔をしている。
「ち、違う!!そういう事じゃなくて!!自分の気持ちを優先しろって事で!!」
「……嫌いなの?」
「いや、まぁ……嫌いではないけど……」
「……けど?」
「……まだお互いの事がよく分かってないというか……」
「……それなら大丈夫。私が結婚出来るようになるまでまだ半年程ある。その間に旦那様をメロメロにさせるから問題ない。それとも、もう他に奥さんが居るとか?」
「いや居ません。モテてもいません。そんな相手も居ません」
自分で言ってて悲しくなった。
「……なら尚更問題ない……居たとしても説得して旦那様の奥さんになる」
「ハーレムかよ」
ハオスイは前向きだなぁ……
「ハオスイはそれでいいのか?……えっと……俺の奥さんになるって事」
「……問題ない。私は旦那様に惚れてるから」
え?そうなの?……う~ん……いつのまに?俺何かしたか?よくわからん。まっ、とりあえずこれから結論までは半年あるんだ。まずはゆっくりとハオスイを知っていく事から始めようかな……ん?あれ?俺も前向きに検討してる?確かに正直悪くない気分だし、ハオスイの気持ちをちゃんと受け止めてやりたいと思ってるんだよなぁ……けど、どうにも踏ん切りがつかない……それにハオスイのしっかりした気持ちを聞いていて自分の中でわかった事がある。これは自分から確かめないといけない事なんだ……きっと……
そんな風に思考の海に沈んでいるとハオスイはごそごそと自分のギルドカードを取り出して俺に渡してきた。
「……それに同時に感謝もしてる。旦那様に負けた事で新たな可能性が発現した」
ギルドカードを受け取ってステータスを確認する。
名前:ハオスイ=ツルギ
種族:龍人(勇者)
年齢:14歳
HP:1546/7691
MP:257/658
STR:759
VIT:800
INT:438
MND:698
AGL:761
DEX:367
スキル
「戦闘王」Lv.Max(複合)
「戦術王」Lv.Max(複合)
「龍化」(固有)
「固有魔法:龍」Lv.Max(固有)(現在使用不可)
「超回復」Lv.Max
「身体強化」Lv.7
「全耐性」Lv.8
「状態異常無効」
「勇者」Lv.6
「限界突破」(固有)
あれ?ステータスが下がってる?でも、とりあえず魔王が消えて勇者になっているのに、ほっとした。勇者と魔王じゃ上昇率が違うのかな?しかし、ハオスイが言った新たな可能性って何だ?ん?スキルの一番下に前は無かったスキルがあるな。「限界突破」……なんだこの胸躍る言葉は。限界突破……なんて素敵な響きなんだ。俺は限界突破スキルを確認した。
「限界突破」(固有)
人の限界を超える。ステータス上限が1桁上がる。
……つまり、今のハオスイは鍛えれば鍛えるほど前より強くなっていくって事か。けど、なんでこれが俺に負けたからなんだ?
「……旦那様に負けて上を知った。きっとそれが理由」
そういうもんなのか?……まぁ、発現したって事はそういう事なのかな。ハオスイ自身がそれで納得してるみたいだし、それでいいか。しかし、別に気になる事があるな。
「えっと……それはわかったけど、俺の呼び方は旦那様で固定なの?」
「……将来そうなるから問題ない」
そうですか。まぁいいけどさ。俺はハオスイにギルドカードを返す。
「とりあえず今はまだ万全じゃないみたいだし、ゆっくり休む事だな」
「……わかってる。早く体の調子を戻して旦那様に鍛えてもらう」
「……そうですか」
あれ?俺ハオスイに教える事ある?どう考えても戦闘スキルに関しては教える事は無いと思うんだけど。そんな事を考えていると、部屋の外が何やら騒がしくなった。ハオスイも騒がしくなっている事に気付いたのか2人して扉の方へと視線を送ると、ドバンッと勢いよく扉が開かれ、そこから1人の獣耳の少女を先頭にグレイブさん達が中へと入ってきた。
「助けて!!ハオちゃん!!」
「……マーちゃん?」
ん?知り合いですか?
 




