Satan4 〜回想〜
第四話です。
過去の話を入れてみました。
文字数も多いです。
冴木と凛香が出会ったのは入学式の後、
俺が一番荒れているときで10人の不良と喧嘩したときだった。
「う、うう・・・・」
「北条・・・、死にてぇのか?」
冴木は北条と呼ばれる不良をタコ殴りにした。
「お前らー!何してるんだ!」
二人の警察官がやってきた。
「お前がやったのか」
「だったらなんだよ」
冴木は笑う。
「ちょっと署まで来てもらおうか」
腕をつかまれた。
「触んなよ!」
警官を殴ってしまった。
「な、なんて事をするんだ!逮捕だ!」
あっという間に手錠を掛けられた。
署に連れて行かれてすぐ担任の小野が来た。
「うちの生徒がご迷惑をおかけしてすいませんでした」
「次はこのような事がないようにしてください!」
小野が頭を下げた。
二人で署を出る。
「冴木」
「あ?なんだよ」
「二週間の停学だ」
「だから何?
学校なんか行きたくもねぇー」
「お前はなにか意味があって喧嘩したのか?」
「意味なんてねぇよ。
殴りたいから殴っただけだ」
「意味がないなら喧嘩なんかするんじゃない!」
小野から怒鳴られた。
「そんなの俺の勝手だろ?黙ってろよ」
冴木はその場を後にした。
帰宅する途中声をかけられた。
「冴木君だよね?」
「誰だ?お前・・・」
「クラスメイトの吉村凛香です」
「で、何の用?」
「冴木君が喧嘩した事は先生に聞きました。
そして、退学させるという話も・・・」
「学校なんて楽しくないから別に退学でもいいし」
「よくありません!冴木君は学校の大切さを知るべきです!
だから冴木君の退学をどうにかします!」
「どうにかするって?」
「全員の先生の前で冴木君をやめさせないようにお願いします!」
「・・・・無駄なことをするなよ」
「っ!?」
「俺の事なんか放っといてくれよ・・・」
「放っておけません!
退学がなくなるように頑張りましょう!」
冴木は一つ疑問に思った。
「何でお前は俺のためにそこまでするんだよ」
「そ、それは・・・冴木君がす、す・・・」
「す・・・?」
「と、とにかく退学なんて絶対させません!
それじゃあ帰ります!」
凛香は足早に去って行った。
なんなんだよ、小野だったり、さっきの凛香って奴だったり・・・
なんで俺に関わるんだよ・・・
「本当なんなんだよ!」
腹が立って大声を出していた。
「うるさーい!」
後ろから突然殴られた。
「こんな所でなに叫んでんのよ、恥ずかしい」
「何すんだよ!姉貴!」
そこには俺の姉貴、冴木美代がいた。
見た目はいいのだが内面はかなりドス黒い。
今までつき合ってきた彼氏に貢がせ、
限界と思うとすぐに捨てる非情な女だ。
しかし、俺には両親がいない。
ここまで生活できたのは姉貴のおかげだ。
感謝はしている。
「道の真ん中で叫ばれたら近所の評判が悪くなるじゃない」
「うるせーな、叫びたかったんだよ」
「えっ、なにそれ!?
ついにおかしくなった!?」
「おかしくなってねぇーよ!」
「ふふ、冗談よ」
美代は笑みを浮かべてこう言った。
「悩みでもあるのかい?弟よ」
「悩みなんか・・ねぇーよ・・・」
「素直じゃないね〜。まあ、後で聞いてあげる。
とりあえず帰ろう」
二人は家の方向へ進んだ。
家は築20年のアパートだ。
美代は鍵を開ける。
「ただいま〜!」
「ただいま・・・」
家に入ると自分の部屋へ移動する。
「斗真〜、夕食が出来たら来なさいよ」
「分かった」
部屋に入りドアを閉める。
ベッドに倒れ込む。
小野が言っていた言葉を思い出す。
「意味がないなら喧嘩なんかするんじゃない・・・」
分からなかった。
喧嘩に意味なんてあるのか?
殴りたいから殴る・・それが喧嘩というものじゃないのか?
凛香だってそうだ。なぜ俺に関わるのか全く分からない。
小野はともかく、凛香は接点がないはずだ・・・。
考えているとドアが開いた。
「斗真、ご飯よ」
「もうできたのか!?」
「何言ってんの?もう1時間経ってるよ?」
「時間経つの早いなー」
「へ〜、そんなに深い悩みがあるんだ?」
美代が笑みをこぼす。
「何で嬉しそうなんだよ!」
「だって〜、斗真がこんなに悩んでるの初めてなんだもん!」
「う、うるせー!早く飯喰おうぜ」
今日の夕食はグラタンだった。
表面に付いた焦げ目が食欲をそそる。
グラタンを口いっぱい頬張る。
あっという間に完食してしまった。
「ごちそうさま」
「斗真」
「なんだよ?」
「話聞かせてよ」
「・・・分かったよ」
俺は今日あった出来事を全て話した。
「・・・で、こういう事があったんだ」
「なるほどね・・・」
美代が考え込む。
「姉貴?」
「良かったね、斗真!」
「・・・は?」
「意外とモテてるじゃない」
「そんなことはどうでもいいんだよ!
凛香が退学させないようにするってはなしだっただろ!」
「でもほんとに良かった。あんたを見てくれている人がいて。
昔からあんたは敬遠されがちだったから・・・
そんな風にかまってくれるクラスメイトがいて
姉にとってはすごく嬉しい」
「・・・・・・」
「さあ、片付けるから部屋に戻ってなさい」
「ああ・・・」
「・・・大事にするのよ」
美代がボソリと呟いた。
部屋に戻りベッドに腰掛ける。
「はあ〜〜〜」
仰向けになる。
いろいろありすぎて疲れてしまった。
目を閉じる。
いつの間にか寝てしまっていた。
「・・・今何時だ?」
時計を見ると午前3時を回っていた。
もう一度寝ようとすると、携帯が鳴りだした。
見た事のない番号だ。
「誰だ?こんな時間に・・・」
電話を取る。
『冴木君・・・ですか?』
凛香だった。
「何してんだよ、こんな時間に」
『す、すいません。話したかった事があって』
「なんだよ?」
『西公園まで来てくれませんか?』
「なんで行かなきゃいけないんだよ?」
『急ぎのようなんです!お願いします!』
「・・・分かった」
『すぐ来てくださいね!』
電話を切った。
あいつはなんでテンションが高いんだよ・・・。
そう思いながら服を着替え、西公園に向かった。
「あ、冴木君!」
「まだ夜中だから大声を出すな」
「そうでしたね・・・気を付けます」
「・・・で、急ぎのようって何だ?」
「はい、冴木君は2週間の停学で学校に来れない間に
私が全校生徒の署名を集めます」
「なんで署名を?」
「知らないんですか?全校生徒の3分の2の
署名を集められれば決定を覆す事が出来るんです」
「・・・学校のルールなんて知らねーよ」
「そんなんじゃ退学させられますよ!」
「夕方にも言ったけど何で俺を退学させないようにするんだよ」
凛香は苦笑いを浮かべて言った。
「私は、小学生と中学生のときにずっと独りだったんです・・・」
「え?」
彼女は俯いて言葉を続けた。
「本当に寂しかった・・・。話す相手がいなくて・・・・。
消えてしまいたいと思っていました。けど、高校生になって
自分を変えようって思ったら変えられたんです。
そして冴木君がいつも独りでいるのを見てるとなんだか放っておけなくて・・・」
「・・・・・・」
「ずっと孤独はダメだと思います。学校にとけ込まないとダメです」
「・・・・・・」
「あと一つ理由があったんですけどまた今度言います。
なんかすいません・・・自分の考えを押し付けちゃって・・・」
「いや・・・いいよ・・・」
ここまで俺の事を考えてくれていたんだ・・・。
「それじゃあ、明日・・じゃなくて今日頑張って署名集めます!」
「おう・・・」
凛香は去って行った。
もう日が昇り始めている。
冴木も家に帰った。
家に着いた。
姉貴・・・起きてねえかな・・・。
扉を開けて家に入る。
家の中は静かだ。
どうやら寝ているようだ。
部屋に入る。
「どうせ停学だし寝とこう・・・」
そして冴木は眠りについた。
「・・・・くん」
声が聞こえる・・・。
「・・・・えきくん」
まただ・・・・・。
「冴木くん!冴木くん!」
目を開けるとなんと凛香がいた。
「うあああ!なんでいるんだよ!」
「冴木君のお姉さんが家に入れてくれました」
あ、あのやろ〜・・・。
「学校はどうした?」
「もう夕方ですよ?
学校は終わっています」
「そんなことより聞いてください!」
「なんだ?」
「署名、集まりましたよ!」
「・・・・・・・は?」
「集まったんですよ!」
「うそだろ・・・」
まだ一日も経ってないぞ・・・一体どうやって集めたんだ・・・?
「ということで、冴木君の退学はなくなりそうです!」
凛香がはしゃいでいる。
「退学はなくなったのか・・・」
口には出せないけど凛香には感謝していた。
俺を気にかけてくれた事、俺の・・・考え方を変えてくれた事・・・。
凛香が何かを思い出した顔をした。
「でも、まだ停学中なので学校にはこれませんよ。
だから・・・停学明けには必ず来てくださいね!」
「分かったよ」
冴木は少し微笑む。
「さ、冴木君が笑った・・・」
「わ、悪いかよ・・・」
「ううん、悪くないよ・・・」
凛香の顔が朱に染まる。
「良かったじゃん、斗真」
美代が部屋の入り口に立っている。
「姉貴!いつからそこに居るんだよ!」
「最初からだけど?」
何事もなかったように言い返してきた。
「さ、最初からですか!」
凛香がパニックになっている。
「お、落ち着け」
「お、落ち着くって何が!?
おおお落ち着いてるけど!」
「姉貴のせいでおかしな空気になったじゃねえか!」
美代が大笑いしている。
「だってこの子面白いもん!」
「笑うんじゃねえ!」
「わ、私はもう帰ります!
冴木君また今度あ、会おうね!
お、お邪魔しました!!」
「お、おい!」
凛香は帰って行った。
「・・・姉貴のせいだからな」
「まあ,いいじゃない。
あんた達の距離が縮まって」
「俺たちの距離ってなんだよ?」
「あんた、あの子の気持ち気づいていなかったの?」
「気持ち?」
「ま、いいか。その方が面白そうだし」
「なんだよ面白そうって・・・」
「ねえ、斗真」
「なんだよ」
「停学明けたら学校に行くこと!分かった?」
「分かってるよ!」
「分かってるならいいわ。
それじゃあ、私ちょっと出かけるから」
「出かけるってどこに?」
「決まってるじゃない、男探し。ご飯はどうする?」
「・・・腹減ってねえから」
「そう、じゃあ行ってくるね」
「ああ・・・」
美代も家を出た。
「何もする事がないな・・・」
まだ停学中なので外も出歩けない。
「また寝るか・・・」
ベッドに横たわる。
また眠りについた・・・。
携帯の着信音で目が覚めた。
時計を見ると午後8時を回っている。
電話に出る。
『冴木か!?』
担任の小野だった。
「なんか用か?」
『そっちに吉村が来なかったか?』
「夕方に来て、すぐ帰ったぞ」
『吉村がまだ家に帰っていないらしい』
「何!」
外でバイクの音が聞こえた。家の前だ。
「冴木ぃーーーー!!」
窓を開ける。
そこには、前に戦った不良がいた。
「お前のとこのお友達を預かってる。
北条さんがお呼びだ、埠頭にある第三倉庫に来い。逃げんなよ」
そして去って行った。
『冴木!聞こえるか!』
「ああ・・・」
『絶対に行くんじゃないぞ!
次は本当に退学になるぞ!』
「・・・意味のある喧嘩だったらいいんだよな?」
『っ!?いや、しかし・・・』
「助けないとダメなんだ・・・。
あいつが俺を助けてくれたように・・・
頼む・・・、小野先生・・・!」
小野が考え込む。
そして口を開いた。
『変わったな・・・お前。
意味のある喧嘩だったら俺が許す!
行ってこい!絶対助けてみせろ!』
「ああ、分かった!」
電話を切る。
急いで埠頭に向かった。
「家に・・・帰してください・・・」
「ダメに決まってんだろ」
「そんな・・・」
「こいつ可愛いじゃねえか、俺の女にならねえか?
いや俺の女にしてやるよ・・・・・」
北条がそう言って凛香に近づく。
「こ、来ないで・・・・・」
凛香が泣いている。
倉庫の扉が開いた。
「てめえら・・・なにしてんだよ!」
冴木が叫ぶ。
「よお、冴木。勝負しようぜ」
「なんで凛香を拉致した・・・」
「お前を呼ぶためだよ」
北条が笑う。
「ぜってー許さね・・・・」
凛香が泣いている。怯えている。
それを見ると血液が沸騰するくらい熱くなる。
「お前ら!冴木を潰せ!」
10人が飛びかかってきた。
冴木は正面から突っ込んだ。
10人をあっという間になぎ倒す。
残っているのは北条だけだ。
「ま、待ってくれ冴木!俺と手を組まないか?
俺とお前が組めば最強だ!な、いいだろ?」
そして冴木は言った。
「お前らみたいに女の子を拉致って
泣かせる奴と誰が組むかよ!!!」
冴木は怒りを込めて北条を殴った。
北条は気を失った。
冴木は凛香に近づく。
「ゴメンな・・・遅くなって・・・」
「ううん・・・いいよ・・・
助けにきてくれたから・・・・」
凛香は笑って言った。
それを見ていると胸が痛む。
「本当にゴメンな・・・ゴメン・・・・!」
「謝らなくていいよ。ところで喧嘩して大丈夫なの?」
「小野に許可とったから大丈夫だ」
「そっか・・・。」
「どうした?」
凛香は俯いて言った。
「助けてくれて本当ありがとう・・・」
「困った時はいつでも言ってくれよ。絶対助けるから」
冴木は笑って言った。
「あのさ・・・」
「なんだ?」
「斗真君って呼んでいい?」
「あ、ああいいけど・・・」
「じゃあ、斗真君。
これからもよろしく!」
「ああ、よろしくな」
一週間後・・・。
「斗真君!
今日から学校だよ!」
「おう」
冴木は準備して家を出た。
「斗真君、喧嘩はダメだからね!」
「・・・分かってる」
分かってると言ったが俺はまだ狙われていた。
片っ端から倒さないと終わらないと思う。
倒さないと凛香にまで危険が及ぶかもしれない・・・。
だから、俺は不良を全員ぶっ倒して喧嘩を終わらせようと思う。
「クラスメイトとは仲良くしないと駄目だよ!」
「はいはい、分かってるよ!」
冴木は笑って答えた。
これが冴木が魔界へ旅立つ5ヶ月前の出来事だった。
次回は魔界の話です。
次話もよろしくお願いします。