振り上げられた斧
登場人物
シャイロック:奴隷商
ジョー:わたし モンスター
クリス:3歳くらいの男の子
レムハルト伯爵:貴族
シェリー:歌姫
ミアンナ:シャイロック邸のメイド
わたしは、都市国家の一つ、商都タイスにあるシャイロックの屋敷、その中庭の見下ろせる東側4階の小部屋に住んでいる。屋敷は約100m角の正方形、中庭にあるシャイロックが一人住む小屋を中心として城砦のように屋敷が取り囲み、大きな屋敷の少ないタイス西地区では異彩をはなっている。豪商の多い東地区では無いのは、シャイロックが最下級の貴族でもあるといっても、蔑まれる奴隷商であるためだ。シャイロックは厳重に結界で幾重にも守られた小屋でプライベートのひと時を過ごす。
「ジョーあと1時間ほどしたらお客様がいらっしゃるから、いつものようにね。」
「がぅ。」
わたしは肩に乗っていたクリスを、呼びに来たミアンナに押し付けて広い階段を下りて、応接室に入った。貴族用の応接室はほかの部屋と違い、成金趣味でつくられている。この部屋を見てたいていの貴族はシャイロックを軽んじ、自分たちの優位さを確認し、安心する。
「レムハルト伯爵さま、ごとうちゃ~く。」
門から玄関まで整列した屋敷の召使の中を5人の付き人とともに、30歳くらいの紳士が歩いてくる。
玄関ではシャイロックが自らで迎える。ただシャイロックも曲がりなりにも貴族の端に列しているのでシャイロックも護衛であるわたしも跪く必要はない。
ソファに座った伯爵はおもむろに用件を切り出した。
「シェリーを買いたい。」
シェリー・エトワールはゼビュロシア一番との誉れの高い歌姫、だがシャイロックの奴隷である。
「シェリーを呼びなさい。」
5分ほどたって、軽いノックのあとにやさしく澄み渡った声が響く。
「シェリーまいりました。」
「入れ。」
軽やかな衣擦れの音とともに入ってきた女性に、安っぽくとも輝いていた部屋の飾りはその光を失った。
美しさも限度を超えると形容できなくなる。
シェリーはシャイロックの右後ろに立ち、左手を軽くソファの背に置いた。
「以前見積もりさせていただきましたように、金貨4万5千枚、もしくはジョゼフェル魔法貨90枚になります。」
伯爵は、表情も変えずに国家予算の数倍の金額に対して、
「よかろう。」と答えた。
わたしは思わず手をにぎりしめてしまった。
「そこのモンスターもついでに買ってやろう。」
私のほうをステッキの持ち手で指した。
「これは国難級になります。金貨5万枚はいただきますが。」
私のほうが高かった。
「分かったすぐに払ってやるから、持ち主の変更をしろ。」
黒服の付き人が袋を取り出した。
「さぁ早く変更しろ。」
シェリーさんとわたしを伯爵の前に立たせ、魔方陣が一瞬きらめいただけでわたしたちの主人は伯爵になった。
「では、改めさせていただきます。」
袋を開けたシャイロックの動きが止まる。
「これは・・」
袋からこぼれる銅貨。
「殺せ!」
伯爵の命令によってわたしのバトルアックスはシャイロックの頭上に高く振り上げられ、シェリーさんの両手のひらに稲妻が集約する。
シャイロックの最後・・にしたら話が続かない
さて




