プロローグ
闇夜を赤く染める炎。
まるで生きているかのように、次々とそこにあるものを飲み込んでいく。
つい先ほどまで、人々は踊り、騒ぎ、酒に酔い、一年に一度の盛大な祭りに酔いしれていたというのに、今は恐怖で半狂乱になった叫び声と、そんな人々を嘲笑うかのように唸りをあげて燃え上がる炎の音以外は聞こえない。
この国の象徴とも言うべき黄金に輝いた城は、すでに跡形もなく崩れ去っていた。
突如として現れた炎は、城と町を守るなん重にも重なった外壁の外からではなく、城の頂上から、雲を引き裂くように現れ、瞬く間に城を町を飲み込んでいった。
その様子を見つめる姿がある。
外壁の上に座り、漆黒の衣を纏い、表情一つ動かさない女。
傍らに真っ黒な猫が、同じように炎に飲まれる街を見つめてた。
やがて見るのも飽きたのか猫が女の顔も覗き込む。
しかし猫のことなど気づきもしていないかのようにただ一心に街を見続けていた。
これでよかったのか・・・?
耳に心地のよい低めの声が女の頭に響いたが、それに応える声はなかった。
かつて栄華を極めた黄金の国、サイアミズ帝国の首都ダイングラフはたったの一夜で跡形もなく消え失せた。
これが後に伝わるサイアミズの落日
今から500年前の出来事である
始まりました。初小説です。
実は夢に見たものを勝手に妄想を膨らませていたら書きたくなったんですが・・・。
どのくらい長くなるかわかりませんが、頑張って続けていきますのでよろしくお願いします。