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第一話 始まりの終わり

それは天気の良い日曜日だった。


きっとこんな日は子供達が元気に遊んでいるんだと思うといてもたってもいられなくて外に飛び出した。


きっと今の時間帯なら子供ラッシュのはずだ。


いくら僕でも何をしたら犯罪だなんて理解している。もちろん見に行くだけである。最近は性犯罪者に厳しい世の中だ。なんか身体にチップ埋め込まれて現在地とかすぐわかるようにされるとか。本当に怖い時代だ。


ただ、最近の子供は外で遊ぶ子が少なくなってきた。特に、女子。


それはもう僕にとっては死活問題だ。僕を癒やしてくれる小さな天使ちゃんがいてくれるからこそ僕は犯罪に手を染めずに今を生きれると言うのに。


このまま少子化が進み幼女がこの世から消えれば僕はなんの迷いもなく日本を旅立つね。間違いない。


そういえば両親のいない幼女を養子にとるって相当難しいらしいよ。経済面はもちろん生活面などいろんな調査をされるらしい。子供のいない夫婦が一番ベストらしいが、そんな事ができれば苦労はしない。幼女と合法で同居。僕の夢は遠く、険しいようだ。


まあ、そんな犯罪じみた事を妄想していた僕には天罰がくだされる。皮肉にも幸せな天罰が……






公園についた


いや、公園だったものに着いた


そこは惨劇だった。


一人の少女が惨劇の中央に俯いて立っている。その少女は10歳前後くらいでいくつもの刃物のようなもので形成された翼のようなものが小さな背中にしっかりと生えていた。少女の周りには数人の小さな子供達が血を流し、倒れていた。


中央に立つ少女には傷一つないのにおびただしい血が身体に着いている。


本来は白かったであろう、肌とワンピースを真っ赤に染めて……


それは誰が見ても明らかに返り血で


この惨劇を起こしたのは彼女であった。

なんだよ……これは……。


悪夢にしてもやりすぎだ。


ここには現実感のあるものが何一つない。現実と呼べるものが何一つない。


そんなものを現実と認識できるわけがない。


僕の中にある確かな感情はただ一つ


恐怖だけだった。


何もかもが怖かった。


こんな小さな女の子が同い年くらいの子供を傷つけるなんて……もしかしたら殺してしまったなんて間違ってもそんなこと考えたくない


こんな異常事態がありえるだろうか。この時代で、この日本で、この町で。


この惨状に比べれば背中に生えている物騒な羽なんて気にならない。あんなのアニメでも漫画でも日常的なものだろう。

少女がこちらにゆっくりと近づいてくる。


「っ!……」


いつもの僕ならこんなに可愛い少女が近づいて来てくれようものなら嬉しさのあまりどうしたらいいかわからず、ただ打ち振るえながら呆然と立ちすくむしかないだろう。


あれ?結局今僕の取っている行動と全く同じだぞ?


違う違う。確かに僕は打ち振るえながら立っているけど、これは何かに期待しているわけではない。近づいてくる少女が怖くてたまらないのだ。とっている行動は同じでも心理状態が全然違う。幼女と熟女くらい違う。それはいくら何でも言い過ぎだ!僕のロリ人格が突っ込みをいれる。一人ロリ突っ込みをしてしまった。しかし、なんか僕結構余裕だな……いくら僕でも少女に殺されて幸せだなんて決して思わないはずだけど……。それとも人は危機的状況になると逆に冷静になれるてきなアレか?

恐怖で震える足を無理やり動かす。心底ブルっている僕は後ずさりするのが精一杯だけど……。こんなに小さな女の子に心底ビビってる自分はなんとも情けないと思う。でも、人が一番恐怖と感じるものは わからない ことだと思う。死ぬのが何故怖いか、単純に痛いのもあるだろうけど、僕は死んだらどうなるかわからないからだと思う。もしかしたら地獄に行くかもしれないし、何もないかもしれない。そんなどうなるかわからない、未知のものが怖くてたまらないのだと。この場合の僕の恐怖はただ一つだった。


何故彼女がこんな事をするのかわからなかった。


理解できなかった。

こんな小さな女の子が何を思ってこんな事をしたのか、彼女の心がまるで理解できない。


自分が殺されそうなのは知っている。それは、まあ、恐いけど、そんなこと気にならないくらい彼女の方が怖い。わからないから怖い。


少女はゆっくりと近づいてくる


わからない。わからない。わからない。何故君はこんな事をする。怖い怖い怖い怖い怖い怖い。君がとても怖い。


「……げて」


彼女は一体なんと言った?僕は耳をすませる


「……逃げて。わたしのそばにいたらダメ……みんな……お願い…逃げて…」


それは少女の悲痛なる叫びで、その言葉で今まで全く理解できなかった彼女の心が見えた気がした。


顔を上げてこちらを見る少女。彼女の表情を見て僕の中の恐怖は完全に消える。


何を考えているかわからなかった彼女を僕はとても怖かったけど、彼女の表情を見ればそれは一目瞭然だった。


泣いて、泣いて、赤くはらせて、どういうわけか血の涙を流して


そして、笑っていた。


痛々しくその表情は苦悶に歪めているのに無理やり頬をつり上げて、笑っていた。


僕の恐怖は別の感情に支配される


そうか……君は本当はこんなことしたくないんだな。


何故彼女がこんな事をやりたくないのにしなくてはならないとか何故こんな事ができる力があるかなど、まだまだわからないことは色々あるが、僕は彼女が誰かを傷つけたくない。そう思ってくれているなら、僕はそれだけで救われた。


だから、そんな顔しないでくれ


君はそんなに苦しんでいるじゃないか


もうやめてくれ……お願いだから、そんなに自分を傷つけないでくれ。きっと彼女は誰かを傷つけながら自分を傷つけ、誰かを殺し、自分も殺してきたのだろう。

もう、やめてくれ。


彼女は血の涙をながしながら笑っている。


痛々しく笑っている。


違うだろ。子供はそんなにつらそうに笑わないだろ。


そんな顔で泣いたりしないだろう。


頼むから、そんな顔しないでくれ。


僕は気がつくとゆっくりと少女に向かって歩いていく。


「やめて……わたしに近づいてこないで……」


さっきまで怖がって、逃げようとしてた自分が死ぬほど恥ずかしい。殺してやりたいほど……


少女は自分の身体を必死に抑えつけようとするが、まるで背中にある刃物の翼は勝手に動いていくように僕の右肩に突き刺さる。


「っつぅ!……」


一瞬遅れて肩に激しい激痛が走る。でもこんなもの、この少女の苦しみに比べたら


左肩、左脇腹に刺さる。それでも僕は少女に近づくのをやめない


なぁ、僕の事は気にしなくていいからさ……こんなロリコンは世間の為に死んだ方がいいくらいだからさ。だから、これで最後にしてくれよ。


「もう……止めて……死んじゃうよ……」


君の身体がどうしても僕を殺したいのなら、そうしてくれ。でもこれで最後にしてくれ


「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさい」


何、あやまる必要はないさ。僕達ロリコンは少女の事ならどんな事でも受け止めることができる生き物だよ。たとえそれで死んだとしても幸せだ。


左足、右下腹部 、両手首に刺さる


僕は血だらけになりながら、やっとの想いで少女を抱きしめる


「君は人を傷つけた事を一生悔いるだろうけど、でも、それは大切なことで……きっと、辛くて、嫌な事も一杯あるけど、頑張っていきるんだよ……頑張って幸せになるんだよ……他の誰も許してくれなくても、僕が許してあげるからさ……」


「いや……いや…いやあああ!! 」


僕の心臓は少女の翼によってもぎ取られた


最後に少女を抱きしめることができたんだ。


悔いなんて残るわけない


僕は死ぬ寸前までそんなことを考えていたのに


一つ心残りができてしまった。


君はちゃんと泣くことができる日がくるのだろうか


ちゃんと笑って


幸せになれる日がくるだろうか


そんな事だから、僕の人生はきれいにしまらないじゃないか。


本当に僕らしい、未練たらたらな、とてもカッコ悪い最後だった。


僕はこの日この公園で死んだ。

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