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「何をやっているんだ!おまえら、二人そろって遅刻するとは」
俺と波音はあの後、ギリギリ間に合わなかった。
おかげで生活主任に説教される破目になった。
「えーと。俺がこいつに迷惑かけただけなんで、
とりあえず、こいつは勘弁してやってくれないっスか?」
今にも泣き出しそうな顔の彼女を庇うような形で教師に話す。
「ほう。おまえが他人を庇うとはな。本当なのか?」
教師が波音に問う。
うつむいたまま何も答えない彼女の為に、あれこれと嘘をつく。
「こいつ、俺と目が合ったら、ビビッちゃって、
少しからかってたらこんな事になっちゃったんです」
スゲー矛盾した話だな。
自分で思う。というか、もしこいつが正直に話したらまずい。
……まぁ、大丈夫だろうが。
「まぁ、話にも信憑性もある。これ以上何も言わない。
それで、波音の遅刻は見なかった事にしよう」
まさかの返答。
驚いて波音が口を開こうとしたのを見て、慌てて俺は口を塞ぐ。
「あ、ありがとうございますっ。 ほら、行くぞ!」
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「嘘は良くないと思います」
そのまま退散しようとした俺の袖を掴んで、波音が言う。
「いや、俺はおまえを庇ってだな……」
「それでもダメですっ。確かに、何も言えなかった私も悪いですけど。嘘はいけません」
こいつ、どんだけ真面目なんだよ。
このままでは、もっと面倒な事になりそうなので、話を有耶無耶にする事にした。
「なぁ。おまえ、かわいいいな。学年で五本の指に入るかも知れないぞ?」
すると、少しうつむいて波音が言う。
「私、かわいくなんて無いです。それに、藤崎さんの方が、背も高いしカッコいいです」
恥ずかしい事を普通に言う。
俺が返答に困っていると、波音も自分が何を言ったのか気づいたのか、急いで目を逸らす。
顔が赤い。
少々罪悪感はあるが、チャンスを逃すわけにはいかない。
「じゃあ、俺もう行くから。また後でなっ」
強行突破。
後ろから呼び声が聞こえたが、この際無視だ。