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確か、この辺だったはず、だよな?
辺りを見渡しながら、波音の家を探す。
もう日が暮れる頃。
小さいが、外装はそれなりに綺麗な店が目に入る。
店の前の看板には、「波音が聞こえる店 Cake shop namine」と書いてある。
どうやら間違い無さそうだ。
俺は中を覗いて見る。
店内はいかにもケーキ屋らしかった。
まあ、当たり前か。
俺が見たところ、店には誰もいないようだ。
この時間だから飯でも食っているのだろうか。
とりあえず、出来るだけ静かに店内に入る。
中に入ると、店から自宅に繋がっている事がわかる。
「なんか、不法侵入したみたいだな」
独り言をもらす。
まあ、このまま黙ってもいられない。よって、俺は覚悟を決める。
息を吸い込んで声を出してみる。
「あの~。誰かいないのかー?」
自宅の方から声が聞こえる。「お客さんですよ」とか、「んじゃ、俺が行くよ」とかだ。
俺、なんか、緊張をしている。
そういえば、女子の家なんか来たのは小学以来かも。
「おう。なんだ?誰かの誕生日か何かか?」
急に声をかけられ、驚いて振り向くと、背の高い男が立っていた。
「なんだよ。用も無いのに呼んだのか?ったく。クソガキが」
もし、客だったらどうするんだ?
苦笑いを隠しきれない。
「えー。波音さんに忘れ物を届けに来たんだけど」
俺がそう言った瞬間に口の悪いオッサンが目を真ん丸くする。
そのリアクションは何だ?
俺が心の中で思った瞬間、そのオッサンが俺の肩を掴んで揺さぶる。
「なんだよ!渚の友達か!?上がれよ。娘の友達なら大歓迎だぜ!」
急に大声出すなよ……。っつーか、唾飛んでるって。
言いたい事はたくさんあったが、俺はそのまま強引に家の中に連れられる。