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2.

2.


「やっぱり、まずは何をすればいいかわからないとだよな」

昼休み、いつものベンチに座るなり俺が切り出す。

「と言うと、どうすればいいんでしょうか?」

波音が首をかしげて俺を見る。

「まず、部活がどうやったら作れるかわからないとだろ。生憎、俺は今の今まで校則なんぞ気にかけた事が無いわけだが、おまえは?」

苦笑いをしながら波音に問いかける。

正直、希望は紙っぺらよりも薄いが。

「私も、よくわからないです」

「だよなぁ…。誰か知ってるような奴いないか?」

自分でも考える。

野田……いや、ムリムリ。教師か?って、嫌だよな。

「あの、クラス委員長とかなら、そういうのに詳しくないですか?」

波音が思い出したように言う。

クラス委員長……西菜が知ってるか?ゴジラの数倍の戦闘力を持つあいつが。

「とーもーやーっ!」

はっとして振り返る。

どこからか、聞き覚えのある声と殺気が……。

その時、遠くから『ビュンッ』という風を切るような音が聞こえて、咄嗟とっさに身を低くしてその『何か』を避ける。

刹那せつな、自分の背後で強烈な破壊音。

音のした方を見ると、一本のシャーペンが半分ほど木にめり込んでいる。

「あっぶねーーーーーーーっ!」

「な、な、何があったんでしょうか!?」

俺は無言でシャーペンが飛んできた方向に目をやる。

殺気立った視線。長い髪。あそこはちょうど俺の教室のような………

「西菜!?あいつ、三階の教室から中庭ここまで投げたのか…?」

波音がわけのわからないまま俺の視線を追う。

っつーか、あいつも野田みたいに俺の心中を読んだのかっ。

「あれ、ウチのクラス委員長なんだが、行くか?見ての通りバケモノだぞ…?」

『ビュンッ!……ドスッ』

さっきと似た音を聞いて恐る恐る振り返る。

今度は、別の(さっきよりも俺に近い)木に丸い穴が空いている。ちょうど、シャーペンが一本通るくらいの穴が。

「だーれーが、バケモノよっ!」

おまけに超地獄耳だ。

「よーしっ、そこ動かないでね。今度はアンタの脳天に穴空けたげるっ♪」

「よーしっ、波音。俺の教室行くぞ。…俺が死なない内に」


3-Dの教室にて。

「よう、西菜。おまえの『委員長バズーカ』の火力は今日も絶好調だな」

教室に入るなり、俺が何事も無かったように、気さくに西菜に話しかける。

「よう、じゃないわよっ!おかげでのどがメチャメチャ痛いわ!」

知らん……。

そこで、俺の後ろについてくる人影に西菜が気づく。

「誰よ?その

怪しむような目。

俺は自分で何を言ってもこいつの考えにはどうにもテコ入れできないと悟る。

「とりあえず自己紹介しろよ」

波音を促す。

「あ……えっと、その………」

なかなか話が進まない。

肩をつかんで前に押し出そうとした時に、波音の肩が小刻みに震えている事に気づく。

どんだけテンパッてんだ……って、仕方ない、か。

「ほれ」

今度は本当に押し出す。

それでもなかなか切り出せない波音を見て、西菜が俺を見る。

俺が苦笑いをしながら手を合わせて頼み込むようにすると、西菜はとりあえずうなずく。

「ねぇ、アタシ、このクラスの委員長やってる西菜 雪乃って言うの。よろしく」

西菜が自ら波音に近づいて優しく話しかける。

こういう所はなかなかどうして人望があるのの裏付けになるものだ。

波音が振り返って俺を見る。

今度は波音に黙ってうなずいて見せる。

そうすると、波音は安心したように肩の力を抜いて少しぎこちないが微笑む。

「わ、私、B組の波音 渚ですっ。

 その…少しお聞きしたい事があるんです。ちょっとだけお時間いいですか?」

西菜が少し考える。

「アタシはいいんだけどさ、もうすぐ予鈴鳴るわよ?」

俺も時計を見て確認する。

「なら、放課後でいいか?そんなに時間もかからないと思うし」

「それならいいわ。ほら、波音……ちゃん。教室に戻りな」

タイミングよく予鈴が鳴る。

俺も今はどうにもならない思ったので、そこで話を切り上げる。

「じゃあ、放課後に中庭のベンチで落ち合おう。いいな?」

「はい、わかりました」

波音が小さく頭を下げて教室から出て行く。


その後しばらく、俺は西菜からの疑いの視線に耐える羽目になった。


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