快楽と認識
すぅーー。
「ふんー!!あぁあぁあぁぁ…」
鼻から抜けていくタバコの匂いと煙に脳が満たされている。
肺に籠る煙は害悪。
それを含めて感じる脳内への快楽。
人と言うのは必ずしも健全なものだけが快楽という訳じゃない。悪魔的な快楽も罪悪感も同じ快楽のひとつで、それが自己への死に近づく呪いだとしても、人を殺める魔法だとしても同じ。
快楽がその物事に微量でも含まれていれば、人間は酔える。
「お掃除します」
「んあ?」
目を瞑りながら、落ち着いていく思考を感じながらタバコを吸っていた中、すぐ横で聞こえたAIの声。
「くたばりください」
「ちょちょちょ!まてまてまてっ!」
突きつけられたAIの手から放たれた放光に目をくらますと同時、衝撃に吹き飛んだ身体は俺自身の声と跳ね上がっている。
光に目が眩んで眉間に皺を寄せ、目を深く閉じる自分。
吹き飛んだ先は、運良くも柔らかいソファー。
「完了っ!」
目をひらけば、独特な決めポーズと陽気な「完了」と言う口調に苦味を覚えるように笑えた。
「そうだな良くやった、、んな訳あってたまるか!」
「面白くはありません」
「おぉ、お前ぶっ壊すぞ?」
一人で乗り突っ込みをさせられた挙句、AIに否定される始末。
「私は設計ミスなどではありません、私は特殊な設計を施されています」
「そっか、じゃあ掃除する瞬間にお前が言った「くたばれ」って言葉もその特殊ってやつのせいだな?」
「私情を挟みました、申し訳ありません」
「AIに私情なんてねーんだよ。あと、お前、もしかしてさ、謝罪すれば許されるっていうプログラミングを施されてんのか?」
「いえ、あります。申し訳ありません」
「ありません」
「あります、申し訳ありません」
「ありません、その前にこの部屋どーするんだよ」
「あります、部屋もあります、ご安心ください」
「はあ…、もう掃除はしなくていい」
「かしこまりました」
設計ミスのAIと言うよりも、人間の心が宿った我儘な生命体かなにか。
そう考えるだけで済む話なら別に構わない。
ただ、俺はいつからコイツを「ロボット」ではなく、AIと認識していたんだろうか…。




