ロボットとAI
タバコがない。買い出しに行くか、またネット通販でまとめて注文するか。買い出しとなれば体力を使うが、久々に外へ出て歩くだけでも、運動という世間的な健康を得られる訳で、健康を得た俺の精神も少しは良くなるだろう。だから、偶には身だしなみも心も整えてみて、外に出て気持ちを落ち着かせることも悪くないはずだ。
…。
「カップ麺&冷凍食品Aセットと酒1箱と煙草1ケース。あとはライターだな」
結局、ややこしくなる話を要約して、ネット通販に頼っている。
後はドローンが頼んだ商品を運んでくるのを待つだけ。
それと、今は爆風とやらで埃まみれになったであろう体を洗い流したくなった俺。
風呂場へと向かう。
いつもなら薄暗く足場のない床を歩いて、また薄暗い廊下から風呂場に入る。
でも今は、玄関ドアが破られ、外の薄青い光が差し込んでいるのが目に入る。それと、どうしてかはわからないけれど、玄関の直ぐ外の脇で、体育座りをしたまま動かないロボット。影が伸びて来ている。
この光景に、自分の目が一瞬だけ見開いたのを感じた。しかし、直ぐに普段の脱力した細めに戻っていくと同時に、そのまま右に曲がって風呂場へと入った。
俺は何をしてるんだ?
シャワーを頭から浴びている最中。体全体が映される鏡の前で自分に問いていた。
濡れた髪は目を隠している。髪の毛の隙間から辛うじて見える顔。
最近になって剃ったばかりの髭は、もう苔のようになっている。
体は平均的な見た目だろうけれど、自分の中身に感じているエネルギーは0に等しい。
強く手を握ってみるが、対して外見が変わることもなく、常に脱力した全体がつまらなそうにしている。
「なにか、夢でもあるか?」
いや、無い。
「なにか、したいことは…」
いや、無い。
「生きる理由は…」
無い。
あぁ。
……。
タバコが吸いたい。
タバコが吸えないイライラと、この環境とゆう悪循環に慣れた空間。
シャワーを浴びて汗を流したはずの身体は布団に伏している。
苦し紛れに横たわっているそんな時だった。
遅くも、ちょうど良くも。インターホンがなった。
モニターを確認するまでもなく、開放された玄関先へ向かえば、何度も世話になっている鳥型の真っ白なドローンが頼んだ用品の詰まったダンボールを器用に持って宙に浮いていた。
待ってましたと言わんばかりに、後は受け取るだけの俺は体を外に出すことなく両腕をダンボールへと伸ばした。
バッ!シャアァ…。
「え…?」
玄関から小走りに飛び出た俺の腕よりも、遥かに勢いのついた白い腕。それは死角から飛び出した。
機械音と破裂音が同時に聞こえ、視界では真っ白なドローンが灰煙に包まれていた。
そして、俺が受け取るはずだった荷物は床に落ちた。
「侵入者を排除いたしました」
「いやいやいや!壊すなよ!侵入者じゃねーだろ!なんならお前の仲間内だろうよ!?お仕事の出来る可愛い小鳥さんだったじゃねーか!」
表情を変えないAIは自分の犯した罪すらも認識していないのか、自分の仕事を全うしたかのように真剣で、馬鹿そうだった。
「いいえ、この空中配達装置はあなたの部屋の監視、或いは盗聴を行う為の攻撃形ドローン、或いは偵察型ドローンに類似しています」
「あー?要するに弁償するのは俺じゃなくていいってことだよな?」
「よくわかりません」
「おまえさあ…えぇ?」
責任能力という概念が存在しないのか、やはりこのAIは設計ミスであり、あまり評価も良くないのだろう。
次々に問題を起こすAI。あまり関わらない方がいい。
それよりも、一刻も早くタバコを吸いたい。
AIは外で放置。運ばれてきた荷物を持って、薄暗い部屋へと向かった。




