片付けと政府
室内に漂う煙の匂い。それは今咥えているタバコの物ではなく、ドアが吹っ飛んできた原因である、今俺の目の前にいる存在が元凶の煙。
今の爆発は、身体の内部に組み込まれた何かをどうにかしたのだろう。
そう納得せざるを得ない状況。タバコを吸っていなかったらこの落ち着きようもないだろう。
「AI No.173、ドア破壊許可が下されました。破壊完了しました」
「いや、許可してねえよ?あっ、ライターみっけた」
長い黒髪に白い肌。潤う瞳も完全に再現された女の姿。人型ロボット。
一見、それが命を持ったものだと判断してしまうほどに人間だ。
しかし、唯一に、機械混じりな女性の声。
不気味なお陰もあって、俺らとは駆け離れた存在であると言う境界線がはっきりと見える。
玄関ドアはへし曲がって、すぐそばの床に転がっている。爆風のせいで、玄関からゴミやら埃やらが散乱している。とは言え、もともとゴミ屋敷なこの部屋に『散乱』という言葉は要らないはずだが、どうしてもそれは新鮮で、散らかり具合が新しい。
玄関奥から差し込んだ光はどうしたてなのか、青い。
既にこの部屋で片付けを始めているロボット。そんな状況でタバコを吸い続け、冷静でいられる俺は頭がおかしいようだ。
「汚い部屋の片付けが終了しました」
三本目のタバコに火をつける。
声の方向、背後にあったはずの汚かったこの部屋は、本当に片付けられている。しかし、あのゴミどもをどこへやったのだろう。それに、何か大事な書類とか、ゴミの分別はされていたのだろうか。
まあ、それはあってもやらないから問題はないのか…。
「ドアが壊れてる時点で汚いもクソもあるかよ、それより、誰に頼まれて来たんだ?」
AI supportの便利さに感心してしまっている自分がなんだか悔しくて、話を変える。
そもそも、このロボットがここへ来た理由は政府の政策。AIの義務化。
ただ、『AI support』と言う次世代的なロボットにお世話をされる故の費用をいったい誰が払うのか。そんなことを明らかにするのが1番に大事だろう。
「依頼者は、ご希望により匿名とさせて頂いております。少なくともあなたよりはまともな方です」
「はぁー、どうせあのクソ政府どもだろ。じゃあ、金は誰が払うんだ?」
「それはあなたに決まっているでしょう」
「なんだそれ!税金じゃねーのかよ!て言うか!お前さ、さっきから俺に態度でかいのは気のせいだよな!?」
恐らく、母さんが政府にチクった形だろう。
今や名前だけでその人間がどこに居て、どんな性格で、どんな生い立ちなのかも政府が突き詰める。
生命の為のAIであり、平和の為の監視。
まあ、そんなことはもうどうでもいいとしてだ。
ちょくちょく、態度のでかいこのロボットに腹が立つ。だから、片付いた部屋でまたタバコをつける。ゆっくり吸い込んでゆっくり吐く。イライラとイライラとイライラを沈める為だ。
あぁ、心地いい。
「もう一度申し上げます。汚ったねぇ部屋の片付けが終わりました」
「お前ぶっ壊すぞ?!」




