タバコと希少価値
ピンポーン。
聞こえるチャイムの音。家のインターホン。
何処かで聞いたことがあるこの音。
林業を辞めてから、営業サラリーマンとしての仕事。トラウマの記憶。
何度も何度も、誰が住んでいるかもわからない一軒家、アパート、マンションを回って、商品の偽りを吐いていたあの頃だ。
「うぎゅぃぃ、気持ち悪すぎる…」
今更、酒の量に後悔しても身体に二日酔いの反応が出ている。吐いてしまったほうが楽になれる。しかし、吐くまでに至らないであろう気持ち悪さ。
どちらかの両極端に熟してしまいたい気分が永遠と続く、二日酔いと言う地獄。
丸テーブルから重たい身体を起こす。相変わらずのきったない部屋の中からタバコを一本探し当て、手に取る。次に探すのはライター。それがなかなか見つからない。
眠い、怠い、重い、気持ち悪い。
探すと言う作業以前に、気力が出ない最中。
ゴミ袋の海に隠れるライターを探すのは至難の業。故に、平凡な物までも希少価値にしてしまう俺の部屋は一周回って、優秀だろう。
「諦めるかぁ…」
口に咥えたタバコに火がつかないか、念力を込める。
つかなかったのでやめる…。
その瞬間だった。
どっかぁーん!!
ボロッぽろぽろぽろ………。
火炎混じりの熱風とともに、俺の視界の右方向。玄関の鉄製扉が吹っ飛んできた。
台風よりも騒がしく、目の前に落ちたあの時の雷を凌駕する衝撃。
声も出せない俺の喉と、脳内の思考と胸の心は気絶していた。
不幸中の幸運。
咥えたタバコの先に火種がついてくれていた。
ぷすぅー。
「ふぁー」
煙が静かに上がっている。




