02 イケメンですが何か?
山田 正、28歳。
自分でいうのもなんだが、容姿は整っているほうだと思う。
中学3年生のとき、初めて女性から告白された。
特に興味はなかったが、人生経験のためだと友達に言われ付き合った。
しかし、1週間で別れることになる。
その理由が「真面目すぎるから」だった。
真面目に、すぎるという表現があっているのか。
1年間、それについて悩んだ。
高校1年生のとき、また女性に告白され付き合ったが「つまらない」という理由で1週間で振られた。
高校2年生のとき、3年生の部活の先輩に告白されて付き合うこととなる。
部活の先輩であれば、多少は自分のことを理解してくれているだろうと思ったからだ。
しかし、2週間で振られる。
「思ったのと違った」という理由からだった。
「無駄にかっこいいんだよ」とも言われる。
思ったのと違うとは、どういう意味なのか理解できないまま高校を卒業した。
大学に入るとき、先輩に言われた無駄にかっこいいという点は善処できると考えた。
伊達メガネを装着し、前髪を伸ばし、服装も地味にした。
できるだけ人と顔を合わせないようにすると、女性から告白されることもなくなった。
これでいい、そう思って社会人となる。
市役所の経理課に配属となった。
社会人になっても先輩の教えを守り、地味に、無駄にかっこいいところを知られず生きてきた。
ところが、上司からお見合いを勧められた。
断り切れず、お見合いすることになった。
そこで出会ったのが、清子さんだ。
いまどき、お見合いに振袖を着てくる人だった。
古風な人なんだろうなと思った。
「それでは、あとは若いお二人で」
お決まりの文句で2人きりにされる。
俺は、女性とどんな話をすればいいのかわからなくてとても困った。
「…あの、ご趣味は」
何も思いつかなくて、これまたお決まりの質問をしてしまった。
「振袖を着てきて期待をさせてしまったかもしれませんが、お茶もお花もできません。趣味は読書です」
そう言ってまっすぐ俺を見て、すぐ俯いた。
「そうでしたか。俺も趣味を聞いておいて申し訳ないのですが、男らしい趣味はありません。しいて言うなら、料理が趣味です」
聞かれていないが、相手に趣味を聞いたのだから、自分も答えるべきだと思って伝えた。
「料理が趣味なのですね。とてもいいと思います。これからの時代、男性も女性も、料理を学んでおくのは自立にもつながりますし、防災のためにも大切だと考えます」
そう言われて、ドキっとした。
自立に…防災。
なんて素敵な考え方なんだ。
「そうですよね。防災といえば、日頃からの備えはどのようなことをされていますでしょうか?」
それから、清子さんと防災について熱く語り合った。
こんなに話が合う人に、これまで出会ったことがない。
「ハザードマップは常に確認する必要があると思うんです。更新されるたび、自宅からの避難経路を見直しています」
「わかります!いざというときのために、避難訓練も大切ですよね」
「はい、そうなんです。正さんも避難訓練を?」
「毎年、行っています」
そんなお見合いを経て、お付き合いをすることとなった。
お付き合いをして1か月。
レストランで食事をしているときに、清子さんにプロポーズをした。
「通常、お見合いから結婚までは、短くても3か月はお付き合いするものだと言われていますが。結婚していただけないでしょうか」
そう言って、婚約指輪を出した。
清子さんがフリーズしている。
やってしまったか。
やはり、早急であったか。
「…はい。ふつつかものではございますが、よろしくお願いします」
そう言って清子さんは頭を下げた。
まじか。
本当に、プロポーズを受けてもらえた。
人生初めてのプロポーズで…いや、プロポーズとは多くの人にとって人生で1度きりだ。
だから、誰でも初めてなのかもしれないが。
こんなにスムーズに結婚を受け入れてもらえるものとは思わなかった。
この1週間、何度もシミュレーションをしてよかった。
やはり、一般的な事例を出したのがよかったのかもしれない。
指輪を出すタイミングもばっちりだったはずだ。
何はともあれ、プロポーズが成功してよかった。
「あの、実は私、結婚が初めてでして」
清子さんがあらたまってそう言った。
「そうですか。実は、俺も初めてです」
そう言って清子さんを見ると、清子さんは申し訳なさそうに頭を下げる。
「すみません。自分が結婚すると思っていなかったので、この後、どうしたらいいかわかりません。明日までに調べてまいりますので、また明日、お時間をいただけますでしょうか?」
そう言われてハッとした。
俺も、この後どうするのかは知らない。
「たしかに。うかつでした。そこまで調べていませんでした。ではまた明日、この後どうするのか話し合い、検討し、実行していくことにしましょう」
そう言って、2人で頷き合った。
清子さんとは考え方がにていて、気を遣わなくていい。
そんな人に出会えた俺は幸運だ。




