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episode6 : 二重の虹彩と蒼いライフル



【オメガ軍 

 第一戦闘部 射撃訓練場】



AZF招集の翌日、第一戦闘部3人はまず射撃場に集まる事になった。

後から医療部2人とルークも合流する。


機関システム部が開発した対ゼータ用の新しいマルチフェーズライフル“ケストレル”を試すためだ。


基本は、コイルの磁力で金属弾を一気に引っ張って加速し、音速以上のスピードが出るガウス式ライフルだが、非殺傷モードがあり、ゼータの神経リンクを一時的に無効化できる。


他にも粒子散弾、EMP弾、逆位相妨害弾などのモードがあり、あくまでも救出を念頭においたライフルになっている。



私がZeroniaでスパイ任務に着いている1年の間に、このケストレルもそうだが、戦闘用のAIロボットの躍進は目を見張る物があった。


第一戦闘部はもはや、自分が戦闘に出るのではなく、AIをいかに操るかが重要な任務になる。


ゼータは戦闘種族であり、敵侵略の最終手段はやはり武力での制圧だ。


そのため、神経リンク対策と同時に、戦闘訓練も必須だった。



カイは訓練室の壁に立てかけてあった黒いライフルを手に取った。

続けてグオも隣のライフルを手に取る。


私は、元々ライフルが苦手だ。


新しいライフルの扱いを覚えなければならないのは気が重いが、戦闘部に所属しているからには扱えないと話にならない。


黒い銃身には光を吸い込むようなマット加工が施され、側面のコイルラインが青く脈動している。


そのラインの下に、小さく“L.Mitarai”とネームが刻印されており、自分のものだと識別できるようにしている。


私はそのライフルを手に取った。


「思ったより軽いわ」


私の呟きにグオが早速ライフルを構える格好をして見せる。


「火薬を使わず磁力で弾を加速するタイプだからな」


ガウス式ライフルはすでにオメガ軍の主流だが、今回のこの“ケストレル”は、対ゼータ仕様にアップデートされている。


「まず個人IDの登録だ」


「どうするの?」


「簡単だ」


私とグオはカイの手元をのぞき込む。


カイのネームが、“桐生輝”と漢字で刻印されているところに目がついた。


漢字は私とカイの出身地、オメガ第81自治区の言語だ。


「ねぇ、あなたの名前、“輝く”で“カイ”と読むの?」


「ああ、そうだ」


「あなたらしい」


同期の中でも1番輝かしい功績を収めている。


漢字がわからないグオはなんのことやらという顔をしていた。


「輝かしい功績を持ったリーダーに相応しい名前なのよ」


私がそう説明すると、カイは少し照れたように微笑んだ。


「言い過ぎだ。始めるぞ」


「了解」


「まず階級バッジを読み取らせる」


軍服の襟に付けている階級バッジには、個人の情報が登録されている。


身長や体重などの生体データも含まれるため、個々の体格に合わせた形にライフルが変化する。


「あ、トリガーが小さくなった」


小柄な私に合わせてくれている。


「グリップを握って」


言われた通りにする私とグオ。


ライフルは指紋を読み込んでいるのか、コイルラインが赤く光る。


「光が青に戻ったら完了だ」


「戻ったわ」


「よしオレも戻った。これだけ?」


「これだけ。これで登録した本人以外は使えない」


なるほど。


「次に訓練モードにする」


ふんふん。


私はカイの手元を見ながら訓練モードにシフトした。


「訓練モードにしておかないと、的を外した時に建物ごと吹っ飛ばすから要注意だ」


「そりゃヤベーな」


言いながらグオも訓練モードにする。


「これでもう撃てる?」


「ああ、やってみろ」


カイに促され、グオは早速、訓練用レーンに立った。


手慣れた構えで、ホログラムの標的を狙って撃った。

パシュッと空気を裂くような小さな音がしたのみで、ホログラムの標的にヒットした。


命中位置を示すライトが白く光る。


「ナイス!」


カイが声をかけた。


「これすごいな、反動がほぼ無い」


「ノイズ補正機能が強化されてる。反動が無い分、連射時、2発目以降の標的に対するブレが減る」


それなら私にも上手く扱える気がしてきた。


「おまえはもう難度を上げていいな。ホロ標的をゼータに設定して、重力変化も考慮した訓練モードにしろ」


「了解」


グオは難度を上げて訓練を始めた。


「さて、問題は・・・」


カイはそう言いながら私をチラッと見る。


「なんで私が問題だってわかるのよ」


「過去の成績を見た」


見なきゃいいのに。


「ま、君のようなタイプでも扱いやすくなってるのが“ケストレル”だ。撃ってみて」


私は小さく息をつき、レーンに立った。


ホロ標的のユラユラする動きが、なんだかこちらをバカにして見ているようだ。


構えて照準器をのぞき、撃った。

命中位置を示すライトは赤く光った。


「惜しい」


「惜しくないわよ、ハズレなのに」


肩を落とす私にカイが近づく。


「まず姿勢が良くないんだ、構えて」


私は構えた。


「頭が斜めになってる」


そっか・・・


「もっと頬にギュッと当てて、反動は無いから怖く無い」


別に怖いわけじゃないけど。

心の中で言い訳をつぶやく。


「右脇はキッチリ締める。安定するまで左手は添えるだけでなく握り込んだ方がいい」


私は言われるままに構える。


「頭まっすぐ」


頭の位置を手で修正される。


「よく見て」


ホロ標的は私に向かってあっかんべーをした。


イヤなヤツ!


「撃て」


トリガーを引く。


パシュッと音がして今度は“イヤなヤツ”を一撃した。

ライトは青く光った。


とりあえず、かすっただけだが当たった。


「その調子で繰り返すんだ」


「了解」


何度か狙撃を行っていると、ニコライとメイヴが姿を現した。


「お疲れさま!グオったらほとんどプロじゃない!」


メイヴの言葉にグオは激しく動いてバリケードに隠れる標的を狙いながら答える。


「プロだから!」


言いながら難しい重力と角度でホロ標的に見事に命中させる。


「おぉ、カッコイイ!」


メイヴが感心する。


ああいう人が、第一戦闘部に相応しい人間よね、本来。


「私たちもやりましょ!」


「最初にID登録が必要なんだろ?」


2人は私たちと同じようにカイに登録方法を教えてもらっている。


よし、頑張ろう。


気を取り直し、私を相手に余裕を見せているホロ標的に向き合った。


カイに言われた通り姿勢に気をつけ、冷静に標的を狙う。


何度か繰り返すが、なかなか命中の白いライトは点灯しない。


そもそも私は機関システム部だったが、スパイ養成のために第一戦闘部に配属になった。

こういうアナログな戦闘は得意ではない。


ニコライとメイヴも訓練を開始し、何度か撃つと早くも命中させるようになる。


専門の訓練を受けていない医療部の2人ですらあのレベルなのに・・・


ああ・・・大丈夫かな、私。


「なにションボリしてんの」


気がつくとルークが横に来ていた。


いつの間に・・・


「狙撃は苦手なの」


「ゲームだと思って気楽にやればいい」


笑いながら自分のライフルのグリップを握る。

赤く光るコイルラインの下に刻印されているのは、“♾️”のマークだった。


「それもあなたらしいわ」


私は思わずそうつぶやいた。


『リラ様、元気を出して、わたくしと共に練習いたしましょう』


シャーっと姿を現したのはL2D2だった。


「あら、L2D2! あなたも狙撃練習するの?」


『もちろんでございます!ご主人様の身に危険があってはなりませんので、このL2D2めが全力でお守りせねば!』


L2D2はそう言いながら自分専用のライフルのグリップをフレキシブルアームで握る。


コイルラインが赤く光る。


ちゃんと“L2D2”と刻印されていた。


「似合うわ、カッコイイ」


『ありがとうございます!』


喋っている私の横のレーンでいきなりルークは難度の高い訓練モードに入る。


「ルーク、素人がいきなりそれは無理だって!」


グオに突っ込まれるも、お構いなしで構えるルーク。


「えぇ?どこがだよ」


喋りながら、激しく動くホロ標的をホントにゲームのように撃って命中させた。


一同はポカーンとする。


「おぉさすが、よくできたライフルだな・・・」


ルークはそう言いながらライフルを眺める。


『ご主人様に負けてはいられません!』


L2D2がその横のレーンで、最高難度の訓練モードでいきなり連射し、ホロ標的をコテンパンにした。


射撃場に居合わせた人々が唖然としてL2D2を見た。


「もういいや」


私はそうつぶやいてL2D2の後ろで彼?の狙撃を見学した。


「もう私はL2D2に守ってもらうわ」


『リラ様!お任せください!』


「うふふ、頼もしい」


「ミタライ、サボるな!」


カイに見つかり怒られる。


「ここでの狙撃に慣れたら本格的なホロプログラムでの戦闘訓練に入るぞ!」


「よーし、じゃ、オレはもうプログラムに入るわ! オメガ最新鋭の戦闘用AIロボットのホロが相手だ! ワクワクする!」


グオは鼻息荒くそう言いながらホロプログラムがあるエリアへ移動した。


真面目にやらなきゃ、居残りさせられそう。

私はため息をついて立ち上がった。


「終わったら、経過観察の診察をする」


ホロ標的を狙いながらルークが私にそう言った。


そうだ、今日は診察の日だった。


「オレは早く帰りたいから、早くクリアできるよう頑張ってくれ」


「えぇぇ、プレッシャーかけないでよ」


私はレーンに戻った。


「こんなのゲームだゲーム」


ゲームじゃないわよ、もう・・・


私は適当にホロ標的を狙って撃った。


「あ!」


初めて命中の白いライトが点灯した。

それを見ていたルークが言う。


「ほら、力入れすぎだったんだって」


そうなのかな。


私はもう一度、照準器をのぞき、ホロ標的を狙って撃った。


点灯する白いライト。


いきなりの覚醒に、私を馬鹿にしていたホロ標的もビビっている。


「なによ、めっちゃ上手いじゃんリラ!」


プログラムに移動を始めたメイヴが私にそう声をかけた。


「うん、なんか、コツが掴めたのかも・・・」


よくわかんないけど。


「さ、もういいだろ、オレたちもプログラムに進もう」


言いながらレーンを外れるルークを、ニコライがじっと見つめた。


「ルーク」


「ん?」


「おまえ、目、そんな色だったっけ? コンタクトしてる?」


ニコライの言葉に、私はルークの目を見た。


射撃場の訓練レーンには自然光が差し込んでいる。

より実際の戦闘の環境に近づけるためだ。


その光に当たるルークの瞳の色は、不思議な色をしていた。

虹彩が二重になっているのだ。

外側はシルバーグレーで、中心に向かい濃いチャコールグレーになっている。


「いや、裸眼だ。ここ1,2年でかな、こんな色になった」


「目の調子はいいのか」


ニコライは医師として気にかかるのだろう。


「いい。心配するような疾患ではないと思う・・・」


ルークは少し表情を曇らせた。


「でももしかすると、父親がヘンな異星人だったんじゃないかって、そっちが心配になってきてる。ちゃんと聞いとけば良かった、母親に」


お父さんの事は知らないんだ・・・


「希望すれば遺伝子検査で父親の種族はわかる」


ニコライの言葉にルークは首をブルブル横に振った。


「いいよコワイから。アリゲーターだったらどうすんの!ショックで立ち直れないだろ」


「いくらおまえでもそれはないだろ」


「いくらおまえでもってなんだよ」


「いや待て、確かにアリゲーターの目の色と似てるな・・・」


「やめろよ」


2人が笑って話しているとカイがやって来た。


「さ、もうここは全員いいな、プログラムに移動するぞ! 今日のところは30分程度のプログラムとする!」


「了解!」



その後全員で戦闘用のホロプログラムへ移動し、私は初級者のプログラムに入った。


密林の中、隠れているゼータの戦闘員とライフルを武器に戦うと言う、ほんのゲーム程度のものだ。


初級者コースなので、晴れて視界は良い。

10m程先の木の影にゼータを見つけて狙って撃つが、相手はもちろん逃げるので外す。

ここでめげずに、辺りに気をつけながらゆっくり密林を進む。


野生の鳥の声、川の流れる音が聞こえ、緑の清々しい空気に包まれる。

戦闘プログラムじゃなきゃ癒しの空間なのだが。


カサッと音がして、背後から狙われた。

私はそれをしゃがんで避け、相手を撃って命中させた。


「ヨシ!」


やればできる!


と思った瞬間、倒した敵と反対側に現れた敵に撃たれて死亡した。


とは言っても、パシュッと風のような圧力が体に当たるだけなので心配は無い。


“MISSION FAILED”


赤い文字が浮かび上がり、辺りは瞬時に無機質なホロプログラム・プレイルームに戻った。


『もう一度ミッションをやり直しますか?終了しますか?』


「終了」


いったん外に出よう。


今日が実戦復帰の第一日目のようなものだ。

リハビリと思うことにしよう。


私はそこでその日のプログラムを終えた。




いつもお読みいただきありがとうございます。


毎日21時UP↑

全35話です。


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