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episode16 : 星脈が開く時



【惑星Zeronia

アルファ司令部 戦略室】



私はアルファ司令部の一室で、全宇宙の星図を眺めていた。


これに重ねて、星脈を可視化する。

星々にチカチカと瞬く蜘蛛の巣が張られるように、星脈が姿を現す。

シータの王族の力さえ手に入れる事ができれば、この全宇宙のエネルギーを我々が意のままに操り、掌握できる。


「素晴らしい眺めだ・・・」


その時、星脈がひときわ大きく脈打った。


「これは・・・?」


聴こえる・・・


本来沈黙しているはずの領域が“呼吸”を始めた。


その息づかいが、聴こえる・・・


〈ゼノンよ・・・〉


背後から頭の中に響く声。


アル=ラーグスだ・・・

やはり、おいでになった・・・


私はゆっくり振り返った。


そこに立っていたのは、シータの最後の王アルセリオンだった。


「おまえは・・・!」


肩の下あたりまである白銀の髪、神秘的なシルバーグレーとチャコールグレーの二重虹彩の瞳。

まるで彫刻のような顔だち。


〈そうだゼノンよ・・・再び星脈が開く日は近い〉


その輝く出で立ちは、我が神アル=ラーグスとは対照的な存在だ。


〈それを開くのはおまえか?それとも・・・〉


そこまで言うと、アルセリオンの姿は黒い霧となり、その後その霧は再び人の形になる。


「・・・誰だ・・・?」


華奢で美しい、短い黒髪のオメガ人女性。


「まさか・・・」


〈ゼノン様・・・〉


「ノヴァなのか・・・?」


彼女はふふふと控えめに笑う。


その笑い方は、間違いなく、ノヴァだ。


それがわかった瞬間、ノヴァの姿は再び黒い霧になり部屋に広がる。


そしてその霧は、大きな人のような形になり、光る2つの目が私を見下ろした。


「我が神、アル=ラーグスよ・・・」


私は両手を上げた。


〈始まるぞ・・・〉


アル=ラーグスの声が頭に響いた。

直後、その黒い形はザーッと音を立てて崩れ落ち、ネズミの大群となって四方八方に走り去った。


「うわっ!」


私は足元のネズミの大群によろけた。


「ゼノン様、こちらにおいででしたか」


カーディスがドアを開けて入って来ると、フッと大群のネズミは消えた。


我に返り、星図に目を向ける。

光る蜘蛛の巣のような星脈は消えている。


「聴こえたか」


私の問いに、カーディスは静かに答えた。


「聴こえました」


いよいよ、時がやって来たのだ。

星脈が開く時が。


「軍隊を集めております。ご挨拶を」




【アルファ司令部 中央広場】



私はカーディスに促され、司令部の広場へと出た。


そこには、整列する軍隊。

そしてその後ろには民衆も集まっている。


エリュシアに見守られながら、私は、一段高い台に上がる。


大声を上げる必要はない。

我らはリンクで繋がっている。


「ゼータの民よ」


ざわめきが完全に止む。


「我らは、長く待った」


軍隊と民衆を見渡す。


「オメガは、自らを自由だと信じている。

だが実際は、力を恐れ、秩序から目を背け、

宇宙を無秩序に放置してきた」


ゼータの民が前神経を私に向けている事が伝わる。


「我らは決して、“奪う”のではない。“正す”のだ」


私の傍ではエリュシアとカーディスが静かに耳を傾けている。


「支配とは、暴力ではない。選ばれた意思が、宇宙を導く事だ。シータは、その鍵だった」


“シータ”という言葉に、民の心がざわりと揺れるのを感じる。


「だがオメガは、それを隠し、歪め、我らから遠ざけた」


私はそこで、一段と声を強めた。


「だから我らが行く!」


軍隊が賛同の声を上げる。


「恐れるな、

疑うな、

迷うな!

逆らう者には容赦しない!」


民の声も重なる。


「今こそ進むのだ!

我らの真実を示す!」


一斉に拳を突き上げる兵、民衆。


私の、Zeroniaが、ここに在る。





【オメガ(Ω)軍

外来宇宙船停泊エリア 宇宙船メビウス号】



『わたくしめは正直、ご主人様が只者ではない事は察知しておりました・・・』


「ホントかよ」


オレはL2D2のセリフにため息をついた。


おまえの父親はアリゲーターだ、と言われた方がまだマシだったかもしれない。

まさかオレが、28年前に滅亡したシータの王族の血を引いてるなんて。


ウソであって欲しいと思い、もう一度、ニコライに遺伝子検査を頼んだが、結果はジアン・パクが出したものと全く同一だった。


“ちょっと1人になりたい”と、いったん自分の宇宙船に引きこもり中だ。


だが冷静になってみると、その結果を受けて、腑に落ちた事は多かった。

オレにしか読めない、ゼータの神経リンク受信周波数。

それは、シータの王族が持つ星脈のためだと言われれば納得がいく。


全宇宙の意識、時間、空間。

それら宇宙のエネルギーが巡回する星脈にアクセスできるからだ。


オレは今まで、それを断片的に、無意識のうちに使いこなしていたんだ。


そして、ここ1,2年で変化した瞳の色。

おそらくそれは、シータの王族の星脈復活が近いからだ。


ここで疑問が湧く。

オレの母親はいったい誰の子を産んだのか。


「L2D2、遺伝子に星脈位相制御領域を持つのは、王族の何親等程度までだ」


『1番強い星脈を持つのは王の直系男子です。女子にこの遺伝子はありません』


“直系男子”


という言葉がグサリと刺さる。


「じゃ“遠い親戚”でも遺伝することはある?」


王が遠い親戚なんだろ多分。


『どの程度までを“遠い親戚”と定義すべきか定かではありませんが、星脈位相制御領域が1番強く遺伝するのは王の長男で、次男はその半分以下しか遺伝しないという記録があります』


王の長男・・・


「シータの最後の王に子どもはいたのか」


『シータの最後の王アルセリオンには子どもが2人おりましたが、いずれも女子でした。そのため、星脈位相制御領域の遺伝子を継ぐ子どもはいなかったという事になります』


「アルセリオンに男の兄弟はいたのか」


『いえ、おりません』


と、言うことは・・・


『アルセリオンには男の兄弟もおらず、息子もいなかった。がしかし、現在28歳のご主人様の遺伝子には星脈位相制御領域が認められる。この事からご主人様は、隠されたアルセリオンの息子だったという推測が立ちます』


オレはコックピットのパネルに突っ伏した。


ダメだ・・・


それしか考えられない。


『残念ながら、アルセリオンの遺伝情報は残されておらず、ご主人様がアルセリオンの息子だというDNA鑑定はできませんが、ハッキリとした星脈位相制御領域を見る限り、親子関係は濃厚ではないかと思われます』


パネルに突っ伏したまま、なぜか頭に浮かんだのは、リラの笑顔だった。


こんな事なら、安易に“オレの特定の人になって”なんて言わなきゃ良かった。

オレのそばにいては、ますますゼータの標的になってしまう。


ゼータがオメガを狙う理由は、“シータの力の痕跡”が隠れているから。

それならばオレは、ここにはいられない。





【本部地下 レベルS-7会議室】



通常の作戦会議室よりさらに深い、遮断層の奥。

円卓の上に投影されたホログラムは、ただ一つのファイル名だけを示していた。


“案件:Stellar Phase Control Locus”


誰も口を開かない。

沈黙が、異様なほど長い。


その部屋に最後に入って来る人物。

統合防衛評議会議長兼、オメガ軍最高総司令官だ。


総司令官は中央の席にかけ、両脇をSPが囲んだ。


「・・・カイ・キリュウ大尉。確認するが、この件は、ここにいる者以外、誰も知らないのだな」


「はっ」


俺は頷いた。


「ゼータの神経リンク感染疑いのある医療部ジアン・パク、それにチームAZFのロベール少佐、私とニコライ・ソコロフだけです」


更に総司令官はロベール少佐に向かって続ける。


「ジアン・パクについては既に隔離済みということで間違いないな?」


「はい」


少佐は重く静かに頷いた。


ジアン・パクは、俺が目撃した不自然な様子、ルークの遺伝子検査の重要性を理解していながら黙っていた事から、ゼータの神経リンクを張られているという判断に至った。

クドウについても引き続き上長が監視を続けている。


参謀総長が低く言う。


「ゼータがルーク・ウォンのことを知れば、彼を狙って攻撃を仕掛けて来るのは間違いありません。危険です。即刻追放を」


「それも危険です!」


少佐が参謀総長に反論した。


「シータの力がゼータに渡れば、この宇宙はゼータに掌握されてしまう!」


しばしの沈黙の後、総司令官が再び口を開く。


「それを恐れた王アルセリオンは、自らの命と共に惑星Eliosを消滅させた・・・しかし、子孫を遺していた・・・」


まさかそれが、ルークだったとは・・・


「ジアン・パクに、ゼータの神経リンク切除術を行えるのも、ルーク以外にいない!」


ニコライが総司令官にそう訴える。


「・・・わかった。ルーク・ウォンは引き続き、AZF預かりとする」


「総司令官!」


参謀総長が反論するように立ち上がる。


「これはオメガ軍史上、最も危険な賭けでもあるが、最も大きな希望でもある。シータ族の復活があるならば、宇宙の調和は再び訪れるかもしれない」


そこまでで記録に残さない極秘の会議は終了し、ホログラムの


“案件:Stellar Phase Control Locus”


は消えた。





*作者コメント


本日は、意外とイケメンなこの方。


⭐︎司令官ゼノン⭐︎


この人最初はただの悪者にしようと思ってたんですが、書いているうちに、弱いところもあり、カリスマ的なところもある、意外と魅力のあるキャラに育ってしまいました。


アル=ラーグスは形を持たない存在ですが、ゼノンの前から去る時はいつも、大群を成す小動物に姿を変え、ゼノンはそれに襲われます。


それは、ゼノンの心を表しています。


ゼノンは、愛する“私の鳥”を取り戻すことはできるのでしょうか?


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