第8章 確率崩壊世界 ― 無限当たりと永久ハマり ―
世界が、止まらなかった。
空には巨大なリーチ演出。
大地は光と音で脈動する。
生まれた赤ん坊が笑えば、同時に別の赤ん坊が泣いた。
——確率が、壊れたのだ。
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ムラサカは荒廃した神殿の中で、崩れた盤面を見つめていた。
「……やっちまったな。
世界が全部“確変中”じゃ、誰も打つ理由がねぇ。」
そこへ、ゆらりと現れる白髪の影。
アイリ。
相変わらず狂った笑顔で、玉を指先で弾く。
「フフ……これで世界は完璧デスヨ。
誰も負けない。誰も勝てない。
すべてが“平等”デスヨ♡」
「……それは確率じゃねぇ。
そいつは、“運命の死”だ。」
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二人の前に、天空から一つの巨大なパチンコ台が降りてくる。
《世界台》
無限に回転する盤面。
打てば現実が書き換わる。
この世界の“最後の台”だった。
アイリが微笑む。
「この一打で、どちらかが世界を取るデスヨ。」
ムラサカは深呼吸した。
「打ち止め上等。最後の一玉、入れてやる。」
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玉が弾かれ、時間が止まる。
世界が光に包まれ、二人の記憶が流れ込む。
ムラサカの脳裏に、初めて台を打った日の記憶。
空っぽの日々、当たった時だけ感じた“生きてる実感”。
アイリの心に、過去の叫び。
かつて、彼女の世界でもギャンブルにすべてを奪われた人々がいた。
「だったら、壊してしまえばいい」と、彼女は狂気を選んだ。
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盤面が止まる。
数字が揃う——
「7・7・7」
当たり。
だが、同時に別の盤面では「ハズレ」。
——両方が、成立した。
世界は二つに分かれた。
片方は永遠の勝利。
もう片方は永遠の敗北。
ムラサカとアイリは、それぞれの世界に落ちていく。
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最後にムラサカが笑った。
「……結局、“当たるか外れるか”なんて関係ねぇ。
打ち続けるやつだけが、確率の中で生き残るんだ。」
アイリの声が遠くで響く。
「フフ……同感デスヨ♡」
そして光が弾け、世界は静寂に包まれた。
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