第5章 確率戦争 ― グランドタイガー vs ミラクルセブン ―
ムラサカは静かに煙草をくわえ、神殿の外を見ていた。
最近、客の入りが明らかに減っている。
村人たちが口々に言うのを聞いた。
「ミラクルセブンの方が出るらしいぞ」
「昨日、三連確変したって!」
ムラサカのこめかみがピクつく。
「……あぁ? 三連? 確率的にありえねぇだろ。」
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夜。
使者がやって来た。
ラルフ侯爵からの挑戦状だった。
> “確率の神ムラサカ殿。
> 貴殿の理論はすばらしい。だが、民が求めるのは『当たる楽しさ』だ。
> 近日、王の御前にて確率勝負を行おうではないか。”
ムラサカは手紙を握り潰した。
「……あの野郎、完全に裏モノ台じゃねぇか。」
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決戦の日。
王都の中央広場に二つの台が並ぶ。
左がムラサカのグランド・タイガー・プレミアムモデル。
右がラルフのミラクルセブン・ゴッドスペック。
観客は数千人。
王が玉を掲げて宣言する。
「どちらの神が真の“運”を持つか、見せてもらおう!」
ムラサカは静かにハンドルを握る。
「行くぜ……神台の矜持、見せてやる。」
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玉が弾かれ、盤面を跳ね回る。
1回転……2回転……何も起きない。
ラルフの台は一方で、派手に光り、音を鳴らす。
観客が湧く。
「うおおおっ!当たったぁ!」
ムラサカの顔に汗が伝う。
「……インチキしてやがんな。確率をいじりやがったな。」
ラルフが嘲笑する。
「民は確率など知らん。ただ“当たり”を求めるだけだ。」
「違ぇな。確率は裏切らねぇ。
裏切るのは、打つ側の信仰だ。」
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ムラサカは深く息を吸い、目を閉じた。
頭の中に光が走る。
> 『汝、確変を信じる者なり。』
次の瞬間、ムラサカの盤面が金色に輝いた。
——当たり。
——さらに確変突入。
——七揃い。
観客が立ち上がる。
王が叫ぶ。
「奇跡だ! 神の寵愛だ!」
ラルフの顔が歪む。
ムラサカは静かに言った。
「なぁラルフ。
確変ってのはな、“当たるまでやめない奴”のことを言うんだよ。」
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