第2章 釘師ムラサカ誕生
翌朝、ムラサカは村の広場に立っていた。
見渡す限り、土と木と石。
金属もネオンも、何一つない。
「……マジで、文明がハマってんだな。完全に単発だわ」
隣の畑で農作業していた老人が不思議そうに首をかしげる。
「旦那、何をお探しで?」
「鉄。あと、釘。あと、……玉。」
「釘は鍛冶屋に頼めば打ってくれるが……玉ってのは?」
ムラサカは指で丸を作った。
「こういう感じの。銀色で、キラキラして、転がるやつ。」
老人はますます混乱した顔で、「頭を打ったのかね」と呟いた。
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その日の夕方。
ムラサカは鍛冶屋に乗り込み、作業台の上に描いた謎の設計図を叩いた。
「これを作ってくれ。」
「……こ、これは何だ?」
「夢だ。」
「夢?」
「そう。人を希望と絶望に叩き落とす装置だ。」
鍛冶屋の男は引き気味だったが、金貨を数枚見せると目の色が変わった。
「……で、どう動くんだ?」
「玉を弾いて、穴に入れる。入れば勝ちだ。」
「勝ち?」
「そう、勝ち。人はな、勝ち負けがあるから生きていけるんだ。」
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数日後、ムラサカは完成した**異世界初の手打ちパチンコ台(木製)**を前に、感慨深げに立っていた。
釘の代わりに鉄片、玉の代わりに磨いた石。
演出も電飾もないが——確かに「それ」はあった。
ムラサカは村人たちを呼び集めた。
「さあ、見せてやる。この世の“確率”ってやつを。」
玉(石)を弾く。
コロコロと転がる石。
静寂。
——カコン。
偶然、狙った穴に入った。
村人たちは一斉に歓声を上げた。
「入った!」「当たったぞ!」「ムラサカ様は神だ!」
ムラサカは静かに呟いた。
「……あぁ、当たった時の音。やっぱり、世界で一番気持ちいいな。」
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その夜。
焚き火の前で酒を飲みながら、ムラサカは空を見上げた。
「ハマりも悪くねぇ。けど、次は連チャンさせてぇな。」
月が輝く空の下、彼の中で何かが“光り始めていた”。
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