表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/48

38 不思議なお客さん


「やっぱり……つきあってるんだぁ〜」


女性が柔らかくそう言った瞬間、俺の心臓が大きく跳ねた。

思わず口から「はい」と返事が漏れてしまう。

否定する余地もないし、むしろ彼女の前ではすべて見透かされている気がした。


「やっぱりね。だって、お二人……とてもお似合いだもの」

女性はにこやかに笑みを浮かべながら続けた。

「仲良くね」


「はい……」

隣にいたひなも、頬を赤らめて小さく頷いた。その仕草がまた、照れくさくも愛おしい。


女性はそんなひなの様子を見て、ふと思い出したように声を潜めた。

「そうそう……もう店長さん、気づいてるんじゃないかしら。そろそろ白状したほうがいいわよ」

俺とひなが目を丸くすると、彼女はさらに穏やかな口調で続けた。

「だって、店長さん……気になって仕方がない、そんな顔していたもの」


その言葉に、俺もひなも思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。

まるで心の奥まで読み取られているようで、少し居心地の悪さすら感じる。


「また行くからね。その時もよろしくね」

女性はそう言って軽く手を振り、夜の街へと歩き出した。


ただのさりげないやりとりのはずなのに、妙に胸に残る。

その背中を俺は無意識にずっと目で追っていた。

どこか不思議で、すべてを見透かすような……そんな雰囲気をまとった女性。


ふと隣を見れば、ひなも同じように真剣な眼差しでその背中を見送っていた。

言葉にはしなかったが、彼女もまた何かを感じ取っているのだろう。

二人して、しばらくの間その姿が見えなくなるまで目を離せなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ