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37 鉢合わせ


「でも朝、めちゃくちゃ早いね。ひな、起きられるかなぁ〜」

心配そうに笑いながらひなが言う。


「もし寝落ちしてたら……そのまま置いていくからね」

シュウがわざと意地悪そうに冗談を言うと、


「ひどいよぉ〜!」

ひながぷくっと頬をふくらませる。その顔を見てシュウは思わず笑ってしまう。


「嘘だよ。ちゃんと枕元に携帯置いとくんだよ。俺が必ず起こすから」

「……うん」

安心したようにひなは小さくうなずく。


そのあとシュウが、ふと思い出したように声を落とした。

「俺ね、ちょっと連れて行ってあげたいところがあるんだ」


「えっ、なになに?」

ひなの目がきらきらと輝く。


「それは……お楽しみ」

イタズラっぽく笑うシュウに、ひなは「え〜気になる〜!」と口をとがらせた。


そんなやり取りをしているうちに、気づけば店を出る時間。

「じゃあ、そろそろ帰ろうか」

「うん」


2人は顔を見合わせて笑い、名残惜しそうに立ち上がった。

店を出る瞬間まで、笑い声と楽しそうな空気がふたりを包み込んでいた。



楽しそうに笑い合いながら店を出たその瞬間だった。

ふと顔を上げると、昼間にお店で見かけた女性と、まさかの鉢合わせ。


「……あっ」

俺は思わず立ち止まり、少し慌てて頭を下げた。

「こんばんは」

声をかけると、その隣でひなも小さく会釈をしながら「こんばんは」と続いた。


女性は昼間と変わらず柔らかい表情を浮かべ、2人を見つめる。

「昼間のお客さん……ですよね?」と俺が確認するように口にすると、

彼女はふわりと微笑んで言った。


「こんばんは。……ふふっ、やっぱり仲がいいのね」

その視線は、まるでひと目で事情を見抜いているよう。


「やっぱり……付き合ってるのかしら?」

軽く冗談めかした調子で言いながらも、どこか確信を持った眼差し。

「すぐにわかったわ。そういう空気がもう出てるもの」


にこやかな笑みを浮かべたままのその言葉に、俺とひなは思わず顔を見合わせた。

頬がほんのり熱を帯びて、返事に困ったまま、ただ苦笑いを浮かべるしかなかった。


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