24 違和感
俺と同じ歳のいとこが死んだなんて、到底信じられるものじゃなかった。
だが――それは紛れもない現実だった。
無事に葬儀が終わり、両親は親族の片付けや手伝いが残っていると言い、俺だけがひと足先に実家へ戻ることになった。
黒い礼服のまま夜の道を歩きながら、胸の奥に広がるのは喪失感と、言葉にできない空虚さ。
そのときだった。
背後から――誰かが、ついてきているような気配がした。
足音はしない。けれど、確かに肌の上を這うような視線を感じる。
恐る恐る振り返る。
……誰もいない。
ただ、夜風に揺れる木の葉の音だけが響いていた。
気のせいだろう。そう自分に言い聞かせ、歩みを進める。
ところが次の瞬間――。
上着の裾が、ぐい、と後ろに引かれた。
思わず振り返った俺の視線の先には、やはり誰も立っていない。
心臓が喉を突き破りそうなほど高鳴る。
“何か”が確かにそこにいる――そう思わずにはいられなかった。
「なんなんだ……」
そう不思議に思いながらも、背筋に冷たいものが走り、恐怖に駆られるように俺は歩を速めた。とにかく実家に戻りたかった。
玄関の灯りをつけ、靴を脱いで部屋に入る。両親はまだ葬式の後片付けで戻っていない。家には俺ひとりきりだった。
いつもと変わらないはずの自分の部屋に腰を下ろす。けれど――なぜだろう、どこかが違う。
壁も家具も、子供の頃から見慣れてきたままなのに、空気だけが重く淀んでいる。
まるで、俺以外の“誰か”がこの空間に潜んでいるかのような気配が漂っていた。
もちろん、実際に人がいるはずはない。そんなことは頭ではわかっている。
だが理屈では割り切れない、落ち着かない感覚が、じわじわと胸の奥を締めつけてくる。
時間が経つのが遅く感じられるほどの静けさ。時計の針の音がやけに大きく響く。
「気のせいだ、疲れているんだ」
そう自分に言い聞かせながらも、視線は何度も部屋の隅へ、暗がりへと吸い寄せられた。
やがて夜も深まり、両親がようやく帰ってきた。
「信じられないね……同じ歳の裕二が、あんなふうに急に……」
二人はその言葉を繰り返しながら、重い溜息をつくばかりだった。
結局、その日の夜は終始いとこの話で終わった。
けれど俺の胸の奥には――あの“違和感”が、消えずに残り続けていた。