18 あの日のこと
「シュウくん、そこで一体何があったの?」
由紀子さんが、さっきよりも声を落として俺に尋ねてきた。
俺は少し息を整えてから答えた。
「実は……その時は、はっきり言って何も起こらなかったんです」
由紀子さんは静かに頷き、続きを促すように俺の目を見つめてくる。
その仕草を確認してから、俺は話を進めた。
「その建物を出て、車に乗り込んだ時も、全員が普通で……特に何か異変があったわけじゃないんです。
ただ、一人だけ……ある友達だけが、帰りの車の中でそんな心霊なんてって、声を上げて笑い出したんです。大笑いしながら、“そんなのあるわけないだろ”って、ずっと否定していました」
俺は、あの時の光景を思い出す。
笑っているはずなのに、その笑いがどこか不自然で、張りつめた空気の中に浮いているように感じた。
他の仲間たちも、最初は一緒になって笑おうとしたんですが……すぐに言葉が止まってしまって、みんな黙り込んだんです。
「だから余計に、あの笑いが耳に残ってしまって……。
何もなかったはずなのに、俺はなんだか妙に怖くなってしまったんです」
そこまで言うと、店の静けさがいっそう重くのしかかってくるように感じられた。
「それからすぐに……その友達の様子がおかしくなったんです」
俺はゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
「最初はただの冗談かと思ったんですけど、顔色がみるみる青ざめて……立っているのもしんどそうで。笑っていたのが急に苦しそうになって、結局、俺たちで慌てて近くの救急病院に連れて行ったんです」
店の中の空気が少し重くなり、みんなが息をのむのが分かった。
「でも……検査を受けても原因が分からなくて。医者も首をかしげるだけで、結局そのまま入院になりました」
俺は無意識にグラスを握りしめていた。
由紀子さんは黙って俺の話を聞き、ゆっくりと重々しく頷いていた。由紀子さんが、さっきよりも声を落として俺に尋ねてきた。
俺は少し息を整えてから答えた。
「実は……その時は、はっきり言って何も起こらなかったんです」
由紀子さんは静かに頷き、続きを促すように俺の目を見つめてくる。
その仕草を確認してから、俺は話を進めた。
「その建物を出て、車に乗り込んだ時も、全員が普通で……特に何か異変があったわけじゃないんです。
ただ、一人だけ……ある友達だけが、帰りの車の中でそんな心霊なんてって、声を上げて笑い出したんです。大笑いしながら、“そんなのあるわけないだろ”って、ずっと否定していました」
俺は、あの時の光景を思い出す。
笑っているはずなのに、その笑いがどこか不自然で、張りつめた空気の中に浮いているように感じた。
他の仲間たちも、最初は一緒になって笑おうとしたんですが……すぐに言葉が止まってしまって、みんな黙り込んだんです。
「だから余計に、あの笑いが耳に残ってしまって……。
何もなかったはずなのに、俺はなんだか妙に怖くなってしまったんです」
そこまで言うと、店の静けさがいっそう重くのしかかってくるように感じられた。
「それからすぐに……その友達の様子がおかしくなったんです」
俺はゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
「最初はただの冗談かと思ったんですけど、顔色がみるみる青ざめて……立っているのもしんどそうで。笑っていたのが急に苦しそうになって、結局、俺たちで慌てて近くの救急病院に連れて行ったんです」
店の中の空気が少し重くなり、みんなが息をのむのが分かった。
「でも……検査を受けても原因が分からなくて。医者も首をかしげるだけで、結局そのまま入院になりました」
俺は無意識にグラスを握りしめていた。
由紀子さんは黙って俺の話を聞き、ゆっくりと重々しく頷いていた。