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使えないと追い出された生活魔法使い、無限の魔力で生活無双  作者: 九頭七尾


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第76話 少年……お前もか……

 アルテアさんが目を丸くして叫ぶ。


「ど、どうしてなのだ!? せっかく地下六千メートルまで来ているのだ! せめてもういくつかアダマンタイトを採掘してからでも遅くはないのだ!」

「いえ、魔境の探索では余裕があるうちに戻るのがセオリーですの。すでに当初予定していた三日間の半分が過ぎようとしていますし、ここはいったん帰還し、改めて挑戦すべきですわ」


 アルテアさんの訴えを一蹴するローザさん。


 どこかで聞いたことある意見だなと思ったら、ローザさんの妹のリーゼさんがダンジョンで同じようなことを言っていたのだった。

 さすが姉妹だね。


「あたしはローザに同意するわ」

「……同じく……」


 タティさんとカーミラさんがローザさんを支持。

 アルテアさんが縋るような目で僕を見てきたけれど、


「僕も同意見ですよ」

「少年……お前もか……」


 しぶしぶといった感じでアルテアさんが観念し、ここで僕たちはギアの街に引き返すことになった。


「ライルくん、帰り道も頼みますわ」

「あ、はい。ただ、一つ確認したいことがありまして」

「……?」

「三日の予定よりもずっと速く戻ることができそうなんですけど、大丈夫ですか? というか、何なら一瞬で戻れるんですが……」

「どういうことですの……?」


 僕は〈即帰宅〉という生活魔法のことについて説明した。


「なるほど、それで空き家を所有しようとしていたわけですの。……と言いつつ、さすがに半信半疑ですけれど」

「往路だけで復路はスキップできるとか、探索計画が根本から変わってくるわね……」

「……いつでも家に……帰れるなんて……魅力的すぎる……」

「そんな生活魔法があるなら、まだまだ探索ができるのだ!」


 アルテアさんが先ほどの主張を蒸し返そうとしたけれど、本当に一瞬で帰宅が可能なのか、まずは試してみる必要があるとのことで、


「じゃあ、やってみますね。〈即――」


 と、そのときだった。

 近くの天井から次々と何かが降ってきたのは。


 地面にぶつかってバウンドしながら、こちらに猛スピードで転がってくる。


「ボールなのだ!?」

「違うわ! アルマジロの魔物、スパイクロールよ!」


 どうやら身体を丸めることで、直径1メートルほどの硬質な球形と化しているらしい。


 こちらに飛んできたそれを、僕は慌ててしゃがんで回避する。

 ただ、発動しようとしていた〈即帰宅〉をいったんキャンセルすることになってしまった。


「はぁっ!」


 鞭を振るって応戦するローザさん。

 重たいスパイクロールを鞭で弾き飛ばしているのは凄いけれど、一方で硬い甲殻のせいで有効なダメージにはなっていない様子。


「こいつら物凄く硬いのだ……っ!」


 豪快に大剣を振るうアルテアさんの攻撃でも、スパイクロールの甲殻に僅かな傷を与えるにとどまっている。

 僕も〈食材切り〉を試してみたけど、ほとんど効果がなかった。


「しかもまだまだ降ってくるわよ!?」


 タティさんが叫んだその直後、巨大な球体が落ちてきた。

 ドオオオオンッ……ゴロゴロゴロゴロゴロッ!!


「って、大き過ぎるのだあああああああああああっ!?」


 アルテアさんが絶叫する。


 巨大なスパイクロールの直径は三メートルを超えていて、穴全体を塞いでしまうほど。

 それが轟音と共に転がり、こちらに迫ってくるのだ。


 ローザさんが鞭で叩いてみたけれど、まったくビクともしない。


「避けられないんだけど!?」

「う、後ろに逃げるしかありませんわっ!」


 僕たちは慌てて走り出した。

 追いつかれたらぺしゃんこにされてしまうだろう。


 というか、他のスパイクロールが普通に踏み潰されている……。


「ここから軽い上り坂なのだ! これで勢いが……って、普通に上ってきてるのだああああああああっ!?」


 どうやって推進力を得ているのか分からないけれど、上り坂を悠々と転がってくる巨大アルマジロ。


「もしかしたら黄魔法を使ってるのかも? 微かだけど魔力を感じられるし……」

「少年、冷静に分析している場合ではないのだ!」


 巨大アルマジロはどこまで逃げても付いてきた。

 ローザさんたちはともかく、一番足の遅い僕やカーミラさんでは、なかなか振り切ることができない。


「執拗すぎるのだ! レディにそんなに付きまとったら嫌われてしまうのだ!」

「レディって笑」

「実は少年、吾輩のことを小馬鹿にしてるのだあああああっ!?」


 そんなやり取りをしていると、後ろから消え入りそうな声が聞こえてくる。


「ぜぇぜぇ……も、もう無理……体力の……限界……」


 青白い顔で訴えてくるのはカーミラさんだ。


「サポート要員の少年よりも先に限界が来てどうするのだ!?」

「横穴の終わりが見えてきましたの! 竪穴に出てしまえば、もう追ってくることはできないはずですわ! あと少しの頑張りですの!」


 ローザさんが叫んだ通り、竪穴はすぐそこだ。

 断崖絶壁になっている竪穴では、あの巨大な球形はもはや落ちていくだけだろう。


 ギュルンッ!!


「って、加速してきたのだっ!?」

「は、早く竪穴に逃げるのですわ!」


 竪穴に逃げ込まれる前に僕たちを踏み潰そうというのか、ここにきて巨大アルマジロが一気に加速。

 ローザさん、アルテアさん、それにタティさんはどうにか横穴から竪穴に到達したけれど、彼女たちほど速く走れない僕はギリギリ間に合うかどうか、カーミラさんに至っては竪穴に届く前に追いつかれてしまうだろう。


「い、急ぐのだああああっ!」


 僕は足を止める。


「少年!? 何をしてるのだ!」

「〈重さ軽減〉っ!」


 一か八か、迫りくるスパイクロール目がけて生活魔法を発動した。


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生活無双
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