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楽園〈エデン〉〜才能無しと言われた少年が失われた才能を継承する〜  作者: SS神威


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エピソード7 街

 父は何の仕事をしているか分からない。


 朝早く家を出て夜遅く帰ってくる。

何気ない会話もするが挨拶程度で、遊んでもらった記憶がない。

まぁ母にも遊んでもらうより魔法の話をよくしてもらう感じだけどそれはそれで楽しい。


 でもさ、父にもなんかして欲しいじゃん。


 いや、まぁね精神的には高校生だし、遊んでもらう年齢ではないと思うよ、でもさ今の体は子供だからさ、多少はお父さんにも甘えてもいいんじゃないかなぁーて。


 自分は愛に飢えていた。

前世も愛されてはいたが、病のせいで後悔だったり、苦労のほうが圧倒的に多い。

それを現世では上書きしたかった。


 父を見ていると日本で有りがちなブラック企業の様な感じでは無く、しっかり休みも取れている。

少し朝が早く夜が遅いだけ。というよりこの世界は基本寝るのが早い。

勿論、この世界にはテレビやゲームのような前世にあった娯楽が少ないので当たり前といえば当たり前なんだろうけどね。


 父は、休みの日庭で剣を振っている事が多い。

父が筋肉質なのは剣を振っているからだろう。

素人目に見ても体にキレがあってフォームも綺麗に見える。

もしかして仕事に関係してるのかも。


 色々考えてみたが今ははっきり言ってどうでもいい。今日は、父におねだりするつもりだ。


 小さい体で首を斜めに傾けて、自分のキラキラした目を上目遣いで使う。

ポイントは目をウルウルさせて滲ませること!!

母にはこれで効いた、今回もこの技を使う。


「お父さん、街に連れて行って!」


「お、確かにそうだな、最近街に連れて行ってないし、久しぶりに二人だけで出掛けるか!」


「お父さん、大好きー」 


 父の膝に勢いよく抱きつく。

今日は、とことん甘えようと思う。


 街自体は2、3回連れて来られたがまだハイハイしか出来ず父に抱っこされながら回ったので、街並みをしっかり見れていない。

基本、今まで家の中で過ごしていたので、ワクワクしていた。

 

 そう、この気持ちはあれだ。


 新作ゲームを買ってもらった帰りに、車でゲームの説明書を見る感じに似ている。

まだ知らない世界にワクワクしながらゲームのパッケージを見ているあの時間が一番楽しかった。

前世の懐かしい記憶が思い出された。


 マーチ家は、住宅街のど真ん中でその中でも唯一大きい庭があり一際目立つ。

住宅街を抜けると服屋や雑貨屋などが立ち並び、商店街が広がっていた。

雑貨屋では野菜や果物を売っていたり、職人が工房で剣などの武器を造っていた。 


(魔法も面白いけど剣術も出来たらカッコいいよな…女の子にモテる気がするし…よし!お父さんに後で剣術を教えてもらッ、ん?何あれ…)


 商人がキャラバンの様なモノ?に乗って街を歩いている。中は薄暗く外からよく見えない。

最初は馬車かと思ったが商人が握っている手綱の先に見た事ない動物?が繋がれていた。


(馬?いや馬が二本足で歩くわけないし、ダチョウか?でもダチョウだとしたらクチバシがあるのは変だな…ま、いっか!ここは異世界だしそれに見た目が可愛いじゃん!)



 街並みは、住宅街から橙色の屋根が連なっており、壁は白く濁った石壁で出来ている。

道自体も少し狭く入り組んだ感じになっており、抽象的なことを言うと、中世ヨーロッパ的な、異世界転生した時のよくありがちな街になっていた。


 通行量も多く、父と手を繋いでないと迷子になりそうなくらい活気がある。地方の小さな都市部と同じ位人口密度がありそうである。

 

 通行人に関して前にも思ったが、この世界には色んな人種?人が街を歩いている。


 動物と人間のハーフの様な見た目で、猫耳や犬の尻尾が付いていたり、体の色が紫や少し茶色で、尖った角を持っている人間である。

以前、父に聞いた所、獣人と魔族と言われる人種らしい、まさに異世界だ。 


 初めて外出した時、猫と人間の中間みたいな人が普通に喋っているのを見ると違和感があったが何人も通り過ぎて行くと何も思わなくなった、むしろ今は猫耳に触ってみたい。

自分もだんだん異世界の感覚に慣れているのだろう。


 暫く父と歩いていると、今日は別な事が気になった。


 それは時折、通行人の胸に黄色でひし形のバッチを付けていることだ。もちろん全員ではないし、魔族や亜人も付けていない。


 だが街の10人に1人くらいは付けているからやけに気になる。注意深く見ていると店などもバッチを付けた人と付けてない人で分けているらしい。


 自分は一抹の不安を抱えながら一緒に繋いでいた手を一瞬強く握り父の注意を引いた。


「お父さん、あの黄色のバッチって何?」


 それとなく聞いてみる。

すると父が少し眉毛を三角にして困った様な顔をした。


「それはまた今度話そう、今は知らなくていい」


(いや、何それ、その含みのある言い方嫌なんだけど!この世界にも面倒くさい派閥があるのか?)


 家を出た時のワクワクの気持ちから一転、不安な気持ちで街並みを進む。

人と店でゴチャゴチャした商店街を抜け、大きな広場に出た。

目の前には真っ白い壁に金色に塗られた屋根の教会があった。


(うわ、なんか怪しそうな宗教じゃん、もしかして自分の家も厳しい規律や教えがあるのか?)


 前世では、仏教だったもののお盆に墓参りする程度で、熱烈な信徒などではなかったし、特別宗教に入り込んでなかったので少し萎える。


「ライン、今からお祈りをするから一緒に来なさい」


 嫌だが父に言われたら頷くしかない。

自分は首を縦に振った。


(はぁ…)


 中に入ると雪の様な純白の壁に、白く艶の良い柱、エメラルド色の重厚なカーペット、周りの装飾品は金色に彩られている。


 嫌だ、嫌だと思っていたがあまりの美しさに息を呑む。

まさに豪華絢爛。


 ここまで美しいと悪い宗教ではないのかも知れない。自分は単純だが素直にそう思ってしまった。


 お父さんにつられどんどん前に進む。

奥の方まで進むと、金色に祀られた1枚の絵画があった。


 1枚の絵画には金色のドレスを纏う一人の女性。


(女神様?)


 何故だろう、初めて会った気がしない。

自分は絵画を見つめていると父は膝を折り頭を下げた。


「ルーラ様、今日も生という祝福をありがとう御座います。ルーラ様のおかげで私達、ヒカイト人とマハト人は才能を授かって生きています」


(ルーラ様、マハト人、ヒカイト人?)


 頭に?マークが灯り思考が停止する。

分からない事だらけだったが父の真似をして祈りを捧げた。


 帰りの途中、父に甘い林檎の入ったパンを買って貰ったが自分は林檎の甘さよりも今日の疑問の方が残った。

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