エピソード6 魔法
母がよく居る場所は決まっている。
大体は庭で植物や花の手入れをしているか、又は、家の2階で編み物をしている。
今着ているパジャマも母が作ってくれた。
最初の頃は、家が裕福そうに見えるので、服も買ってくれば楽なのにと思っていたが、母の趣味らしい。
この家にある半分くらいの服が母のお手製だ。
窓を見た時、庭には居なかったので2階への階段を登る。
ちなみに1階は、寝床に、お手伝いさんの部屋、リビングに台所、お風呂がある。
2階は父と母の個人の部屋になっている。
母の部屋には、編み物だったり植物の種?があって父の部屋には大きい机に大量の資料が山積みになっている。
父は何の仕事をしているかまだ分かっていない。
家が裕福な感じを見ると役職が高いのは、間違いないのだが、何だろう?
一応考えてみるが答えは出なかった。
自分は4歳の体を目一杯使って2階に登り母の部屋に入った。
「お母さん、入るよー」
案の定、母はお洒落な椅子に座って編み物をしていた。
(本当に、編み物が好きなんだなぁ)
母は自分の新しいパジャマを縫っている。
(確かにこのパジャマ小さいかも)
自分の成長に合わせて服を作っている。
母の愛が感じられてむず痒いけど嬉しい。
「あら、どうしたの、ライン」
自分は周りからラインと呼ばれている。
(確かにラインハルトって名前長いと思う、ちょっとだけね)
「お母さんが前にやってた魔法、教えてちょうだい」
少し頭を傾けておねだりしてみる。
2歳くらいの時に、まだ拙い言葉でそれとなく頼んでみたがその時は相手にされなかった。
2歳だとリスクが高いと判断したのだろう。
母が手に口を当てながら考える。
前世だったら母ぐらいの綺麗な人に見られるとドッキ!としてしまうが血の繋がりからか何も感じない。
「うーん、そうね、少し早いと思うけどいいタイミングかもね、ふふ」
「やったー」
両手の拳を高らかに突き上げる。
心で思ったことが思わず口と体両方に出てしまった。
最近というか生まれてから、年相応に幼くなった気がする。
赤ちゃんの時も、泣きたくなくても勝手に泣く時があった。
もしかしたら、本能がそうさせてるかも知れない。
まぁ今は子供だしそのほうが都合が良いと思う。
母が近くにあったコップを左手に持つ。
「ふふ、今から水をだすからよく見ててね」
そう言うと左手に持つコップに右手をかざす。すると音もなく濁りの無い澄んだ水が手から出た。
(スゲー、やっぱりいつ見ても魔法は神秘的だ)
「はい、これと同じ事をやってみるのよ、コツはイメージよ、イメージ」
母は(見せたからもう出来るでしょ)みたいな顔している。
(え、それだけ?たしかにイメージは大切だと思うけど他に何かここを意識してとかないの?)
イマイチ納得していない顔をしていると、見かねた母が焦ったように続けて話す。
「なんか〜そのね…手をかざした時に、体からドバ~って感じで魔力が外に出る感じよ、ドバ~って…分かるわよね?」
(はい?抽象的すぎて分からないんですけど!うちの子なら出来るよね、みたいな顔辞めて!プレッシャーになってメンタルがヤバイよ、ハ!もしや母って天才肌なのか?)
母の説明だとよく分からないが、とりあえずやるだけやってみる。
左手にコップを持ち右手を上にかざす。
(とにかくイメージが大事)
水と言われたのでなんとなく雨をイメージした。
そうすると体から少し力が抜け全身の血液が手に集中しているように感じる。
(うわ、確かにドバ~って感じだ)
そう思うと同時に手から水の球体が現れた。
「そうよ!その調子で後はそれを流すのよ!」
母が横から助言をする。
「流す?流すって、どうやって?」
「それは、もうドバ~って感じよ」
(ここでもドバ~って全然分かんないけど!)
ラインの右手を見るとどんどん水の球体が膨らんでおり大きくなっている。
自分の体から力が抜けていき、右手が熱くなる。
(え、これってどうやって止めるの?怖い、ちょっと一旦離れて!!)
ぐんぐん大きくなる球体を見て、焦り右手を上に大きく振り回す。
手から水の球体を離そうにもなかなか離れようとしない。
「うぅ、も…もういいから、離れろ、お願いだから離れてぇー」
焦りに焦った自分は甲高い声で叫んだ。
そうするとサッカーボールくらい膨らんだ水の球体がバブルの様に弾け飛び、自分の顔面に落ちた。
お母さんの部屋は水浸しになってしまった。
「惜しかったわね、ふふふ」
(どのへんが?)と思ったが確かになんとなくコツは掴んだ。
「お母さん、ごめんなさい、でも次は出来る気がするからもう1回挑戦してもいいですか?」
何故か敬語になってしまった。
「ラインなら次はちゃんと出来るわ、ふふ」
(あ、これあんまりお母さん怒ってないわ)
母は機嫌が良いと、ふふ、と笑う癖がある。
ラインは転がっていたコップを拾い、左手に持つ。
手には魔法の感覚が残っている、多分これが魔力だ。
(集中しろ、次は多分大丈夫)
さっき、雨をイメージした時、雨粒を意識してしまい球体が出来てしまった。
次は前世の蛇口を想像する、蛇口を捻り冷たい水を出すイメージ、そうすると勝手に水が出るはず。
頭で想像した光景を思い描くと右手から水が流れ出た。
すかさず、コップに溜まったら蛇口を閉めるイメージをする。
「本当にすぐ出来るなんて偉いわ、ふふ」
自分が喜ぶより先に母に抱かれ頭を撫でられる。自分は現世で一番の達成感に包まれた。
それから1週間、自分は魔法の虜になっていった。
母には(お母さんが居る時だけ練習しなさい)と言われたが、今の自分が守る筈がない。
母の目を盗んでは勝手に練習していた。
練習して出来るようになった事が2つある。
まずお湯を出せるようになった、というよりこの世界ではイメージ次第である程度魔法の性質を変えることが出来るらしい。
蛇口からお湯をイメージすると温かい水が出るようになるし、スライムをイメージすると水の粘性が増したドロドロとした液体が出る。
他には水の形を球体にしてピストルをイメージすると水を前に飛ばせるようになった。
ちなみに母にはまだ見せていない、上達が早すぎると隠れて練習しているのがバレてしまうからである。
悪い子でごめんね。
もう一つは火の魔法。
やっぱり魔法といったら火でしょ!
単純だと思うかも知れないが火はロマンたっぷりで男の子の憧れだよね。
と言うわけで母に火の魔法を見せてもらった。
ちなみに母が言っていたのだが、今覚えてる魔法は基礎魔法初級にあたるものらしい。
魔法には階級があるらしく、
基礎魔法初級
基礎魔法中級
基礎魔法上級
そしてオリジナル魔法に分かれる。
初級と中級は、大体無詠唱で出来るらしく、上級とオリジナル魔法は、魔法を発動させる為に呪文が必要になる。
魔法に名前をつけイメージさせる為に呪文があり、難易度やイメージしやすいかどうかで使う力、いわゆる魔力がある。
オリジナル魔法は言葉どうりで人の発想で多種多様な魔法を人それぞれもっているんだとか。
(詠唱無しで魔法を打てる自分って天才じゃね)と思ったが人生そこまで甘くないらしい。
一人で舞い上がっていたのがバカみたいである。
早速、母に見せてもらった火の魔法の練習をするため家の庭に来ている。
家の庭は、街の公園くらい広くその上色んな植物や花が植えてあるが今の自分はそれどころではない。
火の魔法を使うために暖炉の火をイメージする。
そうすると手から穏やかな火がでた。
この体は、本当に物覚えが良い、前世は不器用でサッカーも何回も失敗して上手くなった経験がある。
だが今の所壁に当たる経験がなくコツを掴むのが早い。
(あれ、やっぱり天才?)
そして火の魔法を使って気づいたのだが魔法は手から直接出ているのではなく、手から10センチくらい離れた空間から現れている。
手から出るのではなく現れるのだ、火も水も。
確かに思い返すと、水の魔法を使っていても手に水が当たっている感触はなく使い終わった後も濡れていなかった。
そしてなにより火の魔法を使っていても手が全く熱くない。
男のロマンとしてどうしても火の魔法を習得したい自分からしたら火傷の心配がないのは大きい。
しかし手から離れたら普通の火なので、そこに関しては気おつけよう、さっき服少し焦がしちゃったし…
ゆくゆくは、オリジナル魔法とか作って見たい。
上級魔法やオリジナル魔法などは魔法に精通してる人だけで母も父も使えないと言っていたけど、自分ならいずれ出来るようになるでしょ!!




