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楽園〈エデン〉〜才能無しと言われた少年が失われた才能を継承する〜  作者: SS神威


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エピソード27 ダイナの才能

 寝不足です。理由は聞かないで下さい。


 ダイナが横で寝ていると吐息が耳に入り、寝れない。さっき倒したはずの悪魔が懲りずにまたやって来る。


【押し倒せ!男になれ!】と言ってうるさい。


 夜は悪魔との激闘を繰り広げてダイナの笑顔がある。昨日はヤバかった…全世界の女性は褒め称えて拍手して欲しい…



 今日は、やけにニコニコだった。ワクワクしているのが分かる。魔法はそれほど魅力的で身近なモノだと改めて感じた。


「今から出す魔法は水球って言うんだよ、よく見ててね」


 ラインは手から水球を出して木に向かって放った。それを見たダイナの瞳はキラキラと輝く。


(可愛い…)


 茶褐色の肌、紫色の髪、アメジストの様な瞳が新たな性癖に追加された。


 ラインはダイナに目を奪われていると


「ねぇ、ライン?どうしたの?」


 目の前でダイナが手を振っているのが見えて、こっちの世界に帰ってきた。新たな扉が開いたのは黙っておく。


「ごめん、ごめん、帰ってきたから大丈夫だよ」


「帰って来たって何?私の魔法って変?」


「いや別に違うから、少しだけ考え事してただけで…」


「ねぇ、それより見てよ!」


 そう言うとダイナは綺麗な水球を作り、木に飛ばした、しかも威力がラインより強く木が折れている。


(え、もう出来るの?まだ何もコツすらも教えてない…)


「へぇ、いきなり出来るんだ…」


「教えるのが上手いからだよ!ありがとう」


(何も教えてないけど…)


「私なんだか魔法が得意かも!別の魔法も見せてよ!」


 ダイナはラインの手を握り目を輝かせる。手を繋いでいるのに今は何故かドキドキしなかった。

ラインは複雑な心境で今出来る魔法を全部やってみせた。



 2時間後。


「ライン!見てみて、ほら、また出来た!!」


 そう言ってロックダウンをラインの目の前で放つ。自分より更に大きい岩石が目の前に現れ地面に穴が空くほどの衝撃が走る。


 ラインは思った。


 あぁ、これが天才って奴か。


 ふーん、なるほどね…ってなるわけねぇだろ!!いや、普通に考えて一度見せただけで出来ます?今まで凄い努力してここまでやってきたのにそれをダイナはなんでそんな簡単に全部出来るの?


 そのロックダウンだって自分は1年間くらい掛けてやってきたのに、ダイナは2時間で出来ちゃうのって神様いくらなんでも不平等じゃないですかねぇ。自分だって血の滲むような努力をして今があるのに才能の格差がありすぎますよ!!


 本当の天才を見た。無自覚無双系の主人公みたいである。でも嫌な気持ちや嫉妬はない。


 ダイナが魔法に触れ、出来たら大喜びし、家の周りをはしゃぎ回る。そんな姿を見るとラインはどうでも良くなった。



「ダイナ、凄いじゃん、めちゃ凄いよ!!やるね」


 改めて、ダイナと同じテンションで喜ぶとダイナは頬を赤に染めた。ラインはダイナの変化をイマイチ気づいていなかった。



 ベルナルと暮らし始めてしばらく経った。ベルナルが居る時は毎日修行している。


「見えるか?」と、ベルナルに問われるが


「まだ見えません」

ラインは答える。


 修行始め、修行途中、修行終わり、毎度毎度問われるが答えは変わらない。一度絡め手として魔法使って応戦したが怒られた。目に全ての魔力を集中しろと。


 ベルナルの説明によると、自分が見えているのは青の世界という才能らしい。


(見たまんまじゃん、なんかダサくね)


 そう思うが先人達が考えた事なのでつべこべ言わない。今は名前を気にしてる場合ではなく青の世界を習得しなければ!


 このままだと習得する前に身体がベルナルによって壊されてしまう。昨日は夜にベルナルに殺される夢を見た。最近は身体だけでなく精神も悲鳴をあげている。


 ベルナル曰く、青の世界の原理でいうと、マハト人やリヒト人が体に纏う魔力には切れ目がある。それを魔力の切れ目と言って、青の世界で魔力の切れ目が赤く光り輝く。


 それを探し、又はつくり出してそこの箇所を狙って攻撃を加える。魔力の切れ目は弱点に近い形で力が伝えやすく相手としてはマハト人と対峙している感覚になるらしい。


 あの日以来見えていない。感覚は覚えているがあの感覚の出し方が分からず今日も苦戦していた。


「一度死地に追いやらないと駄目か…はぁ、」


(はぁって何?死地って何?もうここって死地じゃないの?これ以上が存在するの!!)


「これ以上やったら死んじゃいますよ!!」


 ラインは叫んで訴いかける、しかし、


「その時はお前が死ぬだけだ、すまんな」


 その言葉がトリガーだった。命の危険がラインを更に強くさせる。 


 ベルナルの体がブレて見える程の剣速が襲う。ラインは勘だけで反応し、剣を剣で捉えた。いつもなら力で押され弾き飛ばされる、しかし。


 剣身が赤く見えた。


 体が死を恐れ極限の集中に入る。身体中の痛み、恐怖、記憶が呼び覚ましラインの才能はまた奮起しようとしていた。


 あぁこの感覚、気持ち良い…世界が自分中心で回っている様に感じる。パズルが全部ハマる感覚で次々に襲ってくる攻撃を受け止める。


 速さは全く追いつけず腕や足から血が吹き出すが急所の部分だけは気合で防ぐ。いつもなら最後に力負けをしてしまい、ベルナルに強烈な一発を貰うが、今日は力勝負で押される事はない。


 ベルナルの攻撃でラインの腕、腹から血が流れるが決定打にならずに倒れない。ベルナルがラインの目が蒼く光るのを確認して攻撃を辞めた。


「見えたか?」


「はぁ、はぁ、ふぅー…ぐぅふぅ…うぷ…見えました」

 

 ラインは沸々と湧き出てくる胃酸を抑えながら答えた。腹に手痛いのを食らったがそれよりも達成感があって嬉しい。今日初めてベルナルの期待に応えた。



 ラインの修行が終わった後はダイナの番である。ラインはダイナの修行を見て感心した。


 ダイナはメキメキと強くなっている、このままだと自分もすぐに越されるかも知れない。3ヶ月でこれなら伸びしろがありすぎて逆に怖い。


(エルフの才能は凄まじいな、いいなー、俺もチート能力ほしい、目が強いって能力として地味すぎる!)


 ダイナ自身は近接は得意じゃないがベルナルの攻撃を少しは避けれる様になっている。しかし怖さの理由はそれではない。


 ラインが魔法を教えたあの日以降ダイナは個人で魔法にひたすら励み強くなっている。使っている魔法の種類はラインと変わらない。しかし威力と精度は圧倒的にダイナの方が上だ。



「ライン!!こんなのどう?次にベルナルおじさんと戦う時に放ってみようと思うの!」


「うん、当たるか分からないけどまぁ良いと思うよ…」


 ラインの目の前には水球がある。普通は大きく出来てもバスケットボール位がラインの限界。しかしダイナの片手にはベルナルのボロい家と同じ位に大きい水球。


(コレってもう水球じゃなくね?)


「でしょ、でしょ、これって綺麗だよね」


「・・・」


(これって綺麗か?)

 

 ラインには綺麗には見えず兵器に見えた。今日はダイナの事を初めて恐ろしく感じた。


 その日夜


「俺は少し予定がある…明日から1週間は家に居ないから飯は自分で準備しろ」

 

「街に行っていいの?」


「あぁ、ここはライブプレスト王国だし時間も経った、ルーラ教会も他国まで追ってくるほど暇じゃない」


 ベルナルの家はライブプレスト王国を一望出来る山の上に住んでいる。周りに人はいない。でも魔物らしきモノは1回見たことがあった。


 金色に光る狐のような魔物で大きさは犬より大きく熊より少し小さい。気になって近づこうとしたが鋭い牙があって辞めた。今まで野生の魔物を見た事なかったが予想以上の迫力と獰猛性が感じる。いやー怖い怖い。


「冒険者ギルドってあります?」


 ご飯を食べるならお金を稼がなくてはならない。先日12歳を迎えたばかりでお金を稼ぐ場所は冒険者ギルドしかなかった。


 ダイナは何を話しているか分からず頭に?マークがある。


「王都の近くにある、この山を降りればすぐだ、後は自分達で何とかしろ」


「はーい」

「…は、はーい」


 ラインの真似をしてダイナは返事をした。

 これからは、ダイナとラインの絡みを増やしていきます。

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