エピソード 21 才能開花
死を受け入れたはずだった。
楽になるつもりだった。
人生を諦めたつもりだった。
体から痛みが消え、逆に体がフワフワする。
心地良い、感じた事のない感覚。
目に、眼に、瞳に魔力が全て集まり熱くなる。
(見える)
何が?
(見える)
どんな?
(見える)
青く、蒼く世界が見え、周りが眩しく光る。
剣がラインの首元に迫る。
その時、男の首元が紅く染まり光輝く。誰かが脳に語りかけて来る。
【チャンスだ、ヤれ、殺せ!】
ラインは即座に手に持っていた剣を男の首筋に突き刺す。
眼に蒼が宿る。前世は死と隣合わせだった、現世は絶望が日常だった。
幾多の不平不満を抱え地獄を渡り歩き、修羅の道を歩んだ者だからこそ見える世界がそこにあった。
「嘘だろ!ぐ、ぐふぁ」
ラインの剣は男を一発で仕留め、首が床に転がる。
ラインの今までとは一味違う動きに周りの男が驚き一斉にラインを襲う。
見える。
気持ちが良い。
力自体が拮抗してる、いやそれ以上かも。
全体が青い世界に見え、相手の体の一部が赤く光る。
本能が【狙え】と言っている。
相手の赤く光る部分を狙って剣を振ると体勢が崩れる。そしてまた新たに赤く光る。
赤く染まる場所を斬ると豆腐の様に斬れる。
赤く光る場所は体だけではなく相手の持つ剣までもが光始めた。
(左側剣身、右腕、左足首、右肩、最後は首か…)
次々に赤く光輝く場所を斬りつけると面白い様に男共は倒れた。
(この力はなんだ?)
普通は見えない筈の何かが見え、自分に相手の弱点、崩し方を教えてくれる。
相手と力の強さが対等になり、今までの努力で更に相手を上回る。
言うならば世界が、周りが、相手が、サーモグラフィーの様に見え、蒼く染まり、一部だけ紅く光る。
光り輝く箇所を斬ると、前世でハマったゲームに似た快楽へ導かれた。
クリティカル!!
会心の一撃の様な効果音が脳に響き同等の興奮と手応えが手全体に残る。
今、この瞬間にラインの才能が開花した。
この事実に神は喜ぶ。
「あと、何人だ?」
三人、四人、いける、ヤれる、殺せる。今の自分なら。
数十秒…
殺した。
全員殺した。
初めて人を斬った時の様な気持ち悪いと思う感覚がなく、目の前にいる相手を作業として殺す。
(疲れた)
床に倒れた敵の死体を椅子の代わりとして腰を下ろす。
尻についた血を気にする余裕はない。
既にラインの身体は血だらけである。
死体の山を見て非情な現実が迫り、先ほどの興奮は消えた。
(生き残ったのは自分とダイナだけか…)
その事実に泣きそうになる。
「おいおい、これはどう言うことだ?」
玄関からルーラ教会がぞろぞろと中に入ってきた。増援なのだろう。
「こいつは化け物だ!」
細身の男が言う。
「司祭様、後は我々が」
「ええ、そうしましょう、この子はもう虫の息です、私が直接手を下さなくても問題無いでしょう」
(アイツは強い、他の奴より遥かに…)
司祭様と呼ばれる男は他の人より赤く光る場所が小さい、分かりやすい隙が一切ない。
(あと10人弱、やるしかない!)
ラインは最後の力を振り絞り、フラフラになりながら敵の前に立つ。
クラッバタンッ!!
(あれ、力が入ら・・・)
ラインはうつ伏せの状態で司祭の前に倒れた。
限界だった、体力も精神も魔力も気力も、全て尽きて倒れる。
「もうとっくに限界でしたね、殺しなさい」
司祭が命令する。
「やっと見つけたぜ、蒼い眼の少年!」
いつの間にか家の玄関に新たな男が立っている。顔を隠しており眼だけ蒼く光輝く。
「なんだ、お前さん、殺されたいのか?」
「俺は見たぜ、今、蒼く光る所を!」
「何が言いたいのだ?もうよい、まとめて始末しなさい」
司祭が手下に命令したと同時、時が全て止まった…
世界が止まり死神だけが速く動く。
悠久のような時が流れドミノ倒しの様に男が倒れる。
「まさか、死神!」
司祭が気づいた時には全て遅かった。
深淵に光る充血した蒼い眼は剣と共に死を知らせ、蒼い眼は紅に変貌する。
血しぶきが噴水の様に首から溢れて地面を湿らせる。
飛び散った紅い血がラインの顔へ涙の代わりとして肌を濡らした。
死神の剣は司祭の首を捉えそれは綺麗に美しくはねた。
「死神ってのはあの世に連れて行くらしいが俺はしないぜ、テメェらは地獄へ堕ちろ、俺も後で見舞いに行ってやる」
ラインは僅かに目を開けて死神を見ていた。
眼の周りは充血しており、瞳は蒼く光り輝く。
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