エピソード18 学校生活
ラインの初めての登校日。
あぁーモテたい、まじでモテたい。
あ、違ったわ、可愛い彼女が欲しい、欲言えば胸も大きっ、いやこれも違うか、友達がほしい、出来れば女の子が良いけどこの際男の子でも良いからとにかく話相手が欲しい、学校生活で1人は寂しいよ…。
ラインは目標を立てた。
(まずは男の友達を2人くらいは欲しいな、あと出来れば女の子も1人くらいは…)
べ、べっ、別に女の子に対してやましい事なんてないよ、ただ友達として欲しいだけで大きくなったら彼女候補になるかも!とか考えてないし理想を言えば可愛い子が良いな、とかも全然考えてないよ、今のところはね。
今のラインは煩悩の塊であった。
ラインは妄想を膨らませているといつの間にかニ時間目が終わって業間休みになっていった。
(あ!完全に乗り遅れた、もう色々グループが出来てるじゃん)
まず声を掛けなければ彼女はおろか友達すらなれないのでクラスメイトに話掛ける。
たまたま、本当にたまたま、クラスで一番可愛い女の子のグループが自分の前に居たので話掛けた。必然的な偶然である。
「自分の名前はラインハルト・マーチこれからよろしく、それでさこの後の4時間目の授業終わったら食堂で一緒にご飯食べない?」
ラインが勇気を振り絞って話掛けるが女の子達は引きつった顔していた。
(アレ、反応悪いな、まずい事言ったか?)
「君ってあのラインハルト君だよね?」
(あのって何?)
「いやぁ、まぁそうだけど…」
「ごめんなさい、私お父さんからヒカイト人とは仲良くしたら駄目って言われてるから仲良く出来ない」
ガーーーーン
頭に落雷が落ちる。
それと同時に4時間目のベルが鳴った。
「もう行かなきゃ、マリ行こ」
女の子達は席に戻る。
「ラインハルト、そこで何してるんだ、早く席に座れ」
先生に注意されたがラインの頭はショックで思考が停止していた。
嫌いだ、もう何もかも嫌いだ、世界なんか滅びてしまえ!あんまりだ、もう苦しいよ!
本当にルーラ様は自分に力が無くて良かったね、もし仮に力があったら闇落ちして絶対殺しに行ってる。
そもそも力があったらルーラ様に恨みを持っていないが今はそんな事関係ない。
誰に話掛けてもヒカイト人だからと言われ敬遠される。男の子に話掛けてもそうだった。
(ごめんね)と言われ敬遠されるならまだ分かるがある女の子には、完全に無視されそこに存在しない事にされた。
多分、親の意向が強いのだろう。悲しい。
だったらヒカイト人と友達になれば良いじゃないか!と思ったがこの学校にはヒカイト人は余り居なくて、居たとしても既にグループを作っており自分はハブられた。
「君はヒカイト人って分かりやすいから無理だよ、すまない」
何で知ってるの?と聞いたら、武道館の事件で自分は有名になったらしい。
ヒカイト人の子供がルーラ様が与えて下さった才能を冒涜したと。
(誰情報だよ、冒涜なんかしてないし、ただ悲観的になっただけだろ)
そういうわけで自分は晴れてぼっちとなった。
思い描いていた学校生活とは程遠い。
前世ではしっかり友達が居たし、作るのも簡単というより、勝手に出来たに近い。
そう、友達は作るものではなく、出来るものだ。今の自分だと一生出来ない。
母には「学校はどう?」と夕食の時にニコニコで聞かれるのも凄く辛い。
母には今の現状を話することは絶対出来なかった。
なぜなら武道館の事件以来、母は自分の事を悔いており、事あるごとに泣いて謝ってきた。
最近は自分が「学校は楽しいし友達も出来たよ」と言った事で元気を少しずつ取り戻した。
だからまた真実を話して母を絶望の谷に突き落としたくはない。
でも、でも!今のこの気持ちは誰に話せば良いんだ!!
お父さんもローザにも話してしまったらお母さんの耳に入る気がする。
それだけは避けなければならない!
ラインは八方塞がりだった。
走っても走っても壁にぶつかる。
それは分厚い壁で登ることも突き破ることも出来ない。
壁の向こうにはクラスメイトが居る。
仲間に入りたい、入れて欲しい、話をしたい!バカな話でも真面目な話でも良い…とにかく一人は寂しいよ…
半年が過ぎた。
友達はまだ出来ない、もう作るのは諦めた。
ただ学校行って授業を受けて帰る。
その繰り返し…つまらなく長い。
家では魔法を使って適当に遊ぶ。
剣術は辞めた。
剣を見ると駄目な自分を思い出す。
ローザには学校が忙しいから勉強に専念すると言った気がする。
ローザや母に魔法を教えて貰い、研究するのが唯一の楽しみだった。
水魔法の水球はどこまで粘りを出せるのか?
火魔法の火球はどこまで熱くできるのか?
植物魔法の実用性についても三人で議論した。
父とはたびたびギルドに訪れて仕事の話をする。
冒険者はある意味大雑把な人が多く自分をヒカイト人ではなくラインハルトとして扱ってくれる。
それでもパーティーに誘われる事は無い、ヒカイト人は戦力にならないと分かっているからだ。
それでも、学校よりは居心地が良かった。
嫌だったら学校に行かなければ良いじゃん!と思われるかも知れないが父が払ってくれる学費を考えると行かないという選択肢はない。
しかもちゃんと勉強して卒業すれば冒険者ギルド職員という安定した職業に就けるメリットもある、六年間頑張るしかない。
進級して11歳になった。
いつも通りの学校。
苦しさや悲しさはもうない、慣れた。
前世の病気で苦しんでた時より楽だと思う。
体が健康だから。
普通に考えれば他のヒカイト人に比べたら幸せだと思う。
でも誰かに今の気持ちを話したい。
心のタンスにしまった筈の思いが1人になると爆発しそうになる。
誰でも良い、話相手が欲しい。
慰めなくても良い。
励まさなくても良い。
なんなら喋らなくても良い。
ラインはただ自分の愚痴を聞いてくれる人が欲しかった。
学校帰り、その日何故か気になった。
スラム街の方向を見る。
誘拐事件以来行かないと決めていたが今日はやけに気になる。
奴隷市場で誘拐された時、助けてくれた男の事を。
そもそも助けてくれたのか?目的は?結局誰だったのか?今も分かっていない。
「お前、もしかして俺と同じ眼をしているのか?」
頭の中であの日の事がフラッシュバックする。
(同じ眼とはどういう意味だろう?最近魔法を使っていると目がやたら疼く、それと関係が?)
目に血液なのか?魔力なのか?分からないが何かが集まっている感覚に近い。
涙とはまた違い溢れ出るものではなく、そこに集まり力が留まって熱くなる。
あの感覚は何?
最近思う事がある。
本当にヒカイト人は目が良いだけなのかって…
ただ他の人より目が良く、動体視力もあり、夜間でもはっきり見れるだけの才能なのか、本当にそれだけって?
それだけだとしたら余りにも不平等だ。
でも世界が不平等なのはある意味平等なのかも知れない。
ラインは男を思い出す。
会いたい。
自分のことを助けてくれた男に。
話をしたい、眼のことも自分の愚痴も。
もう話をしてくれないかも知れない。
もう会えないかも知れない。
逆に殺されるかも知れない。
でも、あの時助けてくれたお礼を言いたい…
そう思うと自分は奴隷市場に駆け出していた。




