エピソード16 才能
家に帰ってきた。
帰り道が永遠に感じた。
長い一日だった、そしてまだ長い。
「ライン聞いてくれ」
「うん」
「お前はヒカイト人の血を引いてしまった」
「うん」
「それで、そのなんだ、人には才能がある、それでリヒト人は俊敏でとても速い」
「うん」
「そしてマハト人は力が圧倒的に強い」
「うん」
「それで最後にお前が血を引いているヒカイト人なんだが実は目が強いという才能しかルーラ様は許さなかったんだよ、分かってくれるか?」
「う…ん、分かった」
ラインは涙を堪える。
「う…ごっめ…本当にごめんね、お母さんがヒカイト人の血を引いているばかりに本当にごめなさっい…お母さんがしっかり産んであげれなくて」
母がラインに抱きつく。
「お、お母さん、だっい…大丈夫だから」
枯れた涙がまた溢れてくる。
(頼む、耐えてくれ!ここで泣いたらお母さんが一生苦しむことになる)
「うぅ…う…う…うわぁわぁぁぁ」
無理だった、全て決壊し、一度崩壊したダムは底を突くまで泣いた。
翌朝。
おはよう、諸君元気かい?、自分は元気じゃない。
凄く元気じゃない、具合が悪いくらいだ。
苦しすぎて何度も吐いたよ、ワハハハハはぁ…
誰に対して話をしているか分からない。
昨日以来頭がおかしい、アレこれは元からか?
夢ならもう覚めて欲しい、これが現実でないなら、目覚めて天国に行きたい。
確かに第二の人生も悪くはなかった、むしろ昨日までは楽しかったよ、昨日まではね…
これからの未来はバッドエンドにしか見えない。
神が居るなら早くこの人生を終わりにしてくれますか?
この世界に神様って本当に居ますか?
自分に自問自答しなければこの世界はやってられない、辛すぎる、まじで本当に何なの、この異世界とやらは。
異世界にいきなり転生させといて全然チート能力はくれないし逆にデバフを食らっている始末。
もっとさぁー魔法が超すげぇーーとか、剣がクソ速いとか、せめて自分はイケメンで頭も良くて、可愛い幼馴染も居て、でもやっぱりイケメンだから周りからモテモテで、ちょっとハーレム?みたいなモノが欲しくない、ねぇ聞いてます神様?
せめてチート能力までは行かなくても頑張ったら報われる世界であって欲しかったんだけどこのゴミみたいな世界は何ですか?
要するにマハト人は力が強く、リヒト人は動きが速い、そしてヒカイト人は目が強い…
って不平等にも程があるだろ!!しかも鍛えれば鍛える程伸びるって言われてるけど、ヒカイト人だけ才能が伸びるのは目だけって割に合わなくない?
それに目が強いって何だぁーー!貴方は目が強いです(笑)みたいな能力は要らないんだよ!!
ルーラ様だって絶対苦笑いしてるでしょ、内心バカにしてるでしょ!
お父さんは(目が強いと言われているが要するに目が良いという意味だ)って言ってたけど意味が分かんないよ!
鍛えたら目が凄く良くなるらしいけど戦闘向きでは無いから皆諦めてるってほぼ詰みじゃんか。
それに目を鍛えるって何?前世で一度も聞いた事が無いワードなんですけど。
もう無理だ、辛い、辛いよ…
他にも聞いたことを絶望した頭で整理する。
才能は親のどちらかの血を引き継ぐ。父はマハト人で、母がヒカイト人だった。
自分は運悪く母の血を引いてしまい、ヒカイト人の才能を受け継ぐ形になってしまった。
(これが苦しい)
しかし今更母を責めるつもりはない、なぜなら転生して9年間愛情をもらい大好きだからである。
せめて魔法だけは!と思っていたけど魔法はエルフや魔族が優れるようになっているらしい。
自分はというと、ローザ先生いわく魔力量は中より上で、基礎魔法上級を連発出来ないくらいの魔力量らしい
まじで中途半端だな、はぁ…
ちなみに亜人は人それぞれのちょっとした特殊能力プラス、力と速さが両方優れてるだとか。
例えば鼻が利くとか…耳が良いとか。
しかし亜人はマハト人より力が強くなったり、リヒト人より速くなる事はあまり無いらしい。
少年期剣士大会後…
前とは違い魔法や剣術の練習に身が入らない。
「そんなに私とキス出来なかったのが悔しいの?」
笑い飛ばしながらラインに話す。
これでも気を使って話をしてるのだろう。
「そうですね、悔しいー、あー本当に悔しいなー」
ラインは全然気持ちが入っていない。あの日以降全部無気力である。
「確かに私は可愛いからそう思うのはしょうがないけど元気出して」
鉄板の様な胸を張って喋る、多分癖なのだろう。
「ローザ先生の胸見ても元気出ないよ…」
「いたぁ!」
ローザ先生に剣でシバかれた。
「あのさ、適当に練習したって意味無いんですけど」
「ヒカイト人だから真面目に練習したって意味ないですよ」
ラインは拗ねた声で返す。
前世ではこんなに幼稚ではなかった気がする。
でも思った事は全て口に出るし今は頑張りたくない。
「まぁ言いたい事は分かるけど、出来る限り強くならないといつ何があるか分かんないしさ、頑張ろうよ」
「逆に何があるんですか?」
「うッ、えっーと最近また物騒になっているらしいけど、今はあまり思いつかないし、どうしようかなぁ…」
「ほら、やっぱり強くなれないし、強くなっても意味ないじゃん!」
言ってて自分が嫌になる、子供すぎて。
「だったらもし私が襲われたりしたらラインは助けてくれないの、見捨てるの?逃げるの?」
(それを言うのはズルだろ)
「見捨てないですよ、頑張って一緒に戦いますよ」
「じゃあ、頑張るしかないね」
そう言われて自分は渋々剣を握った。
ラインからしたらローザは姉同然だった。
助けるのは当然である。




