エピソード12 植物魔法
誘拐された事は、自分以外知らない。
誰にも言うつもりもなく、自分の中で消化する。
何故助かったのか?顔を隠した男は誰だったのか?考えても一向に答えが出ず、運が良かったと考えるしかなかった。
ただ分かった事は、自分を助けてくれた男は恐ろしく強かったと言うこと。
余りにも強く、一瞬だった。
掛かった時間は1秒足らずいやそれ以上に速い。
(自分にも出来るだろうか?)
今の剣術と魔法を極めればあそこまでの高みに行けるのか?分からない、でも…
(自分は強くなりたい、もっと人を守れるくらいに)
今回の一件で魔法と剣術の練習に、より一層身が身が引き締まった。
8歳になった。
魔法は少しずつだが進歩してると思う。最近でいうと魔法で植物や花を生み出せる様になった。
キッカケは、庭で魔法の練習をしていた時に起こる。
「さて、今日はローザ先生に教えられた爆破魔法を覚えるか!」
誘拐事件以来ラインは分かりやすくやる気に満ちていた。
あの時、瞬間移動しているように見えた男の剣技が厨二病心をくすぐられる。
8歳になってからは身体強化魔法があるのでは?と思い魔法の練習に励む。
ローザに新たに教えてもらった火魔法の爆破魔法は基礎魔法中級に当たる。
爆破魔法と言っても、唱え方は色々で(ブラストバーン)とカッコいい名前で言う人もいる。
基礎魔法中級以上になると、よりイメージが大事なのでイメージにあった名前を人それぞれつけるらしい。
昨日は爆破魔法のイメージで上手くいかなかったので、今日はブラストバーンのイメージで(何それ?)やろうと思う。
名前はカッコいいほうが良いよね!
爆破魔法はローザがやっていたのを見るに、火の魔法をより小さく圧縮させ一気に解放させることで出来ていた。
「火種をイメージしてみようかな」
そう思い火種を思い浮かべるがなかなか真似出来ない、多分抽象的すぎるのだろう。
「火種って言っても全然イメージ湧かないな、火種自体をまじまじ見る機会がないし、イメージの具現化が全く出来ないわ、う〜ん…」
「あ、線香花火!」
前世で夏によくやっていた線香花火を思い出す。
前世では手がすぐ震えてしまい、火種を一番先に落としていた。
懐かしい記憶である。
最初に線香花火を思い浮かべて、魔力が圧縮し始めたら次は大きい花火を思い浮かべて火種を徐々に大きくする。
(あれ、ローザのよりちょっとデカくね)
「まぁいっか!大丈夫しょ」
ラインは楽観的である。
手に集め圧縮した魔力を一気に解放する。
バババッッバーン
打ち上げ花火のような音と車のハイビームのような光で腰を抜かす。
「うわぁぁわわ!!」
衝撃で体が後ろに倒れ尻もちをつく。
「いてぇ、ちょっと大きく作り過ぎたか」
ラインは周りに燃え広がってないか周囲を確認する。
「まぁとりあえずは大丈夫そうって!!ちょっと待って待って、ヤバイヤバイどうしようどうしよう…」
母が大事に育てていたチューリップに火種が当たり、燃え広がっている。ラインは急いで水を掛けた。
急いで水を掛けて鎮火したものの、チューリップ畑の大部分が手遅れであり、茎や花が焦げていた。
そしてそのタイミングで、爆発音を聞いたローザが飛び出してきた。
「ライン!!一体今の音は何、何なの!」
「ローザ先生、ヤバイかも、爆発魔法でチューリップ燃やしちゃった、お願いだからお母さんに言わないで、なんならローザ先生がやった事にして…」
今日、母と父は教会に行っており昼はいない。
自分は全身全霊の土下座をして危機を逃れようとしていた。
お父さんには軽く注意だけで終わるがお母さんは多分違う。
外出時間を破った時はこの世の終わりくらい怒られた、怖すぎる。
「いや、ふざけるなよお前、自分でなんとかしろ」
「そこを何とか、可愛いくて優しくてスタイル抜群のローザ先生お願いします」
地面にめり込むぐらい頭を下げる。
「全く今日に限って調子がいい奴だな、だったら今から植物魔法を覚えられるの?」
「へぇ?」
「私は出来ないけど植物魔法なら一応復元出来るかもね」
そう言われラインは覚悟を決めた。
(もうやるしかない!今の持ってる技術を全てここに注ぐ、アドリブでイメージを具現化させて絶対にチューリップを生み出してやる!)
それから2時間の格闘の末、なんと!魔法でチューリップを生み出せた。
ローザには「今までにないくらいの集中力だね」と皮肉を言われたが今の自分には関係ない。
人生が救われた、ホント良かったぁ〜
というわけで爆破魔法を覚える過程で植物魔法の花やツルなども生み出せる様になった。
ローザや母によると植物魔法は実用性があまりないためなのか出来る人が少なく、ローザも冗談で植物魔法を勧めたらしい。
せっかく出来るようになったので自分は植物魔法の実用性を今後考えようと思う。今は思いつかないけど。
家族で食卓を囲む。
今日は肉も野菜もある。前世と同じぐらい料理は豪華だ。他の家も同じ様なメニューなのだろうか?
「ライン、来月でもう9歳になるだろう」
(そうか、もう9歳か)
「うん、そうだね」
かれこれこの世界に来てからもう9年が経ち前世を足すと26歳である。
「実は9歳になるとこの街では、少年期剣士大会があるんだ、ラインにはそれに出てもらいたい、いいか?」
「え、逆に良いの?」
毎年大会がある事は知っていたが父は自分に冒険者や兵士になるのではなく、ギルドマスターになって欲しそうにしていたので、出れると思っていなかった。
「お母さんもお父さんも見に行ってあげるからね、ふふふ」
「剣士大会はラインと同じ年齢の子が出るから今の立ち位置を確認するのに適してる、それに好成績を残したら学校の推薦も貰えるからな!」
実は前から学校の存在自体は知っていた。教会から南側に位置している。
この世界では義務教育が無さそうなので、自分も学校に行けるのか心配していたが父の話し方的に行けるのだろう。
ラインは裕福な家庭環境に感謝する。
「学校って何歳から入学するの?」
「10歳からだな、別に推薦が取れなくても全然問題ないからな、お金の心配は要らない、気楽に頑張りなさい」
父のとても頼もしい言葉である。でも欲を言えば推薦が欲しいな。
「無理したら絶対駄目よ、これはお母さんとの約束ね」
母が真剣な顔で言った。自分が外出時間を守らなかった時と同じ顔をしている。
「分かったよ、あんまり無理はしない様にするからそんな怖い顔しないでよ」
(まぁ、なにはともあれ、初めて同年代と戦うし、それにずっと欲しかった友達が出来るかも知れない。もしかしたら彼女とかも!ってまだ気が早いか)
目の前に分かりやすい目標が出来てよりやる気が漲った。
ククルおばさんによると、自分は教会の南側に位置するクリスタル学校に入学する予定らしい。
10歳から入学して16歳で卒業する予定だ。
中には強く才能ある人材を育成するクラス、剣士育成科があると聞いた。
誘拐事件からより強くなりたいと思っているので興味がある、自分も入れるだろうか…




