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楽園〈エデン〉〜才能無しと言われた少年が失われた才能を継承する〜  作者: SS神威


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エピソード11 ライン対ローザ

 7歳になった。

最近気になる話で言うと、母が自分の事を見ると泣きそうな顔する。

(何故?)

何か嫌な事あったのだろうか、凄く心配だ。



 それはそうと、ローザ先生と魔法の練習した甲斐あって魔法の精度が上がっていると思う。 

具体的に言うと、出来る魔法が2つ増えた。

 

 1つ目は手を地面に付けて魔力を送ることで、地面を泥に変化させ、相手の足場を悪くさせる魔法だ。

 

 2つ目は地面から岩を出して相手にダメージを与えたり、進路を妨害する魔法である。

泥沼と岩柱という名前らしい。 


 これで前から覚えていた水や火を球体にして相手に飛ばす魔法、(水球と火球)を合わせて戦闘に使えそうな魔法は4つになった。

今日こそは、ローザに1本取ろうと思う。


「今日こそはいける気がします」


「確かに最近動きがいいわね、油断してたらヤラれちゃうかも♡」


 左頬に人さし指を当てて、ナメた態度を取り挑発する。

自分は真面目に言ったつもりだが、ローザはヤラれる訳ないと思っているらしい、顔を見れば分かった。


(今の顔イラっとするな、まじで)

 

 自分の感情の高まりとは別に頭は冷静だった。ローザは基本カウンター主体だ。


 自分が先に動くと、防御の構えを取り、受け流してからカウンターを決める。

ローザの戦い方は、何十回もボコボコにされて気がついた。。


(今日はローザから攻撃を引き出す、絶対に我慢する)

 

 ラインがなかなか攻めないので、ローザがこちらの意図を読み取ったのか、逆に仕掛けてきた!


 鋭い足取りで一気に距離を詰める、自分はギリギリの反応で前に岩柱を放ち、ローザと自分の間に壁を作る。ローザは岩柱で作った壁すらも剣で切り裂くがそれを予想して自分は先に剣を振る。


「ちッ」


 ローザが舌打ちをする。

 

(イケる!)


 だが一瞬剣をローザの右頬に掠めたがしかっり当てきれず、すぐに後ろにバックステップで距離を取られてしまった。惜しい所までいったが状況はリセットした。


(決めきれなかったけど大丈夫、あっちは焦ってる)

 

 いつもはローザからアドバイスがあるが今日は何もない、顔つきが変わった。


(焦ってるうちに、決める)

 

 今度は自分から仕掛ける。仕掛けると言っても、ただ距離を詰めるのでなくローザの足元を泥沼に変えて動きを一瞬制限。


 ローザが泥沼から抜け出すのを予測して両サイドに勢いの強い水球を放つ。


 だがローザはそれを読みきり、地面から足を離して凄い勢いで前に突っ込んできた。滞空時間の長いジャンプでラインとの距離を一気に詰める。


(ヤバイ!)


 ローザの想定外の動きと身体能力でラインは動揺する。


 ローザの攻撃を予測するのは無理だったので勘で一か八か右にダイブするように避けた。

ローザの一発目は当たらなかったが、すぐさま横に転がって避けたラインに追撃する。

 

 ラインは態勢を立て直す時間がなく腕だけローザに向けて、使うつもりがなかった火球を反射で放った。


 しかし、ラインが反射で放った火球すらもローザは目の前で躱してラインの左頬に剣を叩きつけた。


バババァーン!


 剣から本来出る筈のない音が鳴り、音の後にとてつもない痛みが襲った。


「うぐぅ、ぐぐ…」


 声を出すことすらままならずうめき声をあげる。


「前よりは大分マシね」


「う…まじでくっそぉ」

 

 左頬が痛い、惜しい所までイケたと思ったがローザの方が何枚も上手だった。


「いや大分マシは嘘よ、私の想定以上に上達が早くて少しムキになっただけ、良かったわ」


 そう言って右手を差し出された。確かに手応えは今までで一番あった、でも最終的に負けた。


「何が駄目でした?」


 右手を取りアドバイスを聞く。


「全体的には良かったわ、直せる所で言うと攻撃は全部避けられる想定で毎回動いた方が良いかな、希望的観測は負けに直結するからね」


「分かりました、次もお願いします」


「うん、あの・・・ちなみになんだけど、ラインって目が良かったりする?」


「え?」


 ラインは話が変わり過ぎて質問が頭に入って来ない。


「いや、遠くの物が見えたり夜も普通に昼と同様に見えたりするのかなーって」


「確かに遠くの物とか見えますけど、ローザ先生は逆に見えないんですか?」


 ローザが珍しく複雑そうな顔する。


「ま、まぁね、あ、それよりラインは、魔法と剣術を組み合わせて戦うのは上手いわ、私には出来ないからそれは認めて上げる」


(何?何が言いたい?)


 話を逸らされた感じがして、褒められたのに釈然としない、何か、隠し事をされてる気がする。

深くローザに聞こうとしたが、ローザは逃げるように家の中に入った。



 夜

 

 ラインが寝た後、ローザ、ハルト、ライナはリビングに集まった。


「ハルトさん、ライン君の戦闘センスは非凡なものを感じます、なんとかなりませんか?」


「無理だな、ラインには限界がある」


「でも、ライン君も努力すればいずれ…」


「どうしたって無理だ、ラインには酷な話だが現実は私が直接伝えるさ」


「ハルト、ごめんなさい、私の血のせいでラインに辛い思いをさせることに…」


「ライナのせいではない、大丈夫、ラインの将来は私の仕事を引き継がせれば上手くいくさ」


「でも…でもラインは、冒険者になるのを夢見てるのに私がぁぁ……」


「ライナ!!大丈夫、ラインは君に似て頭が良い、分かってくれるさ」


 泣き崩れるライナをハルトはぎゅっと肩に引き寄せて慰めた。



 ライン視点


 今日はオフだ。ローザが私用で休みを取ったので自由である。

 

 自由と言ってもこの世界にゲームなどの娯楽は無いのでやれることは限られてくるが、とにかく好きな事をする。


「うーん、何しようかな?」


 特に考えても何も思い浮かばなかったので、前から気になっていた貧困層のスラム街に行こうと思う。

母にバレたらまずいのでバレないようにね…すまないね、母上。



 スラム街は、街の中心にある教会から西側に位置する。

人口の割合的には貧困層に住む人は10分の3にあたるらしく思っている以上に多い。

教会の西側に行くにつれ、黄色のバッチを付けた人が多い気がする、気のせいだろうか?

 

(ちょっと臭うな)

 

 貧困層と言われてるだけあって、街並みがガラッと変わり、ボロボロの家が並んでいる。物乞いをする人すらいて治安も悪そうだ。


(子供の自分が来たのはちょっと早かったか)

 

 予想以上の現実がそこにあったので、自分の生活は幸せだと感じた。もし転生先がスラム街だったら?と考えるとゾッとする。


 ゴミが散乱し、人の血痕の様な跡が付着している道を散策した。


 10分ほど歩いて雰囲気を肌で感じ取った。確かに子供が1人で歩いてはいけない街だ。

ラインは長居せずに家に帰ろうとした、その時…


(何あれ?)


 スラム街には珍しく立派な建物があった。興味本位で近づくと黒い屋根に石壁で周りの建物より骨組がしっかりしている。


 しかも多くの人、それも服が綺羅びやかな人が出入りしているので気になり入ることにした。

中に入ると、薄暗い部屋の中にたくさんの人が入り乱れている、映画館のようだ。


 椅子に座っている人もいれば立っている人も居て、皆が舞台を見ていた。

舞台には手錠をつけた人が並んでおり、値札のような物を身に付けている。


(うわ、まじか、奴隷市場じゃん、この世界でも奴隷いるんだ、しかも男女両方いるし、ん?なんで奴隷にも黄色のバッチを付けているんだ?)



 正直に言ってラインはスラム街を舐めていた。

なぜククルおばさんが強くスラム街に近づくなと指摘されていたのかを理解していなかった。

自分はまだ子供だという事実を忘れ、ローザとの練習で強くなったと勘違いしていた。


 ラインは、舞台を集中するあまり、警戒を怠る。

今、この瞬間から獲物として狙われているのにも関わらずに…


 それは一瞬だった。

ラインの背後からゴツゴツとした手が目の前に現れて口元を抑えられた後、体を掴まれて身動きが取れない。


「んん…う、うわ、た…す…ん…」


 体を思いっ切りバタバタさせるが、大人数人が自分を徹底的に抑え込む。自分は抱えられ何が起こったか分からず、恐怖に陥る。


「こんな所で、臨時収入だぜ」


「スラム街でこんな身なりの良さそうなガキは久しぶりだな」


 自分を捕まえた人達が上機嫌で話す。


(しまった、まずい、売られるの?奴隷?なんで?お母さんの約束破ったから?)


 今見た奴隷の姿が未来の自分とシンクロして、涙が出てきた。


(お父さん、お母さん、ごめんなさい、ククルおばさんごめんなさい、お願いローザ助けてぇー)

 

 ラインの声は届かない、届くはずがない…筈だった。


 男達はラインを抱えて大急ぎでスラム街を走る、その時、


「おい、待ちやがれ」


 誘拐した男達の前に立ちはだかる一人の男。


「そいつは俺の獲物だ、ここに置いていけ」


「テメぇ、それはどうゆう意味だ、コラァァ!!」


「1回言っただろ、ソレは俺のだ、よこせ」


 渋く野太い声で話す。


「それは申し訳ねぇけど出来ねぇな、何故ならこの子の父親だからッ…」


刹那。


 時が止まったと感じる程、彼は速く、時は遅い。ラインの目から男がブレて次の瞬間目の前から消える。


 男達は声を上げる暇もなく、斬りつけられ意識を失う。

全てが一瞬だった…自分と男が同じ世界に生きているのか?

疑いたくなるほどの速さと人が見たら目を逸らす事が許されない程の剣技。


 ラインは何が起こったのか理解出来ず、立つのもままならない、助かったのか?今殺されるのか?まだ誘拐されたほうが安全なのか?

理解が追いつかず思考が停止する。


「お前もしかして俺と同じ眼をしているのか?」


「な、何!?」

 

 目の前には、顔隠して表情が見えない、黒髪と蒼く光る眼だけ分かり自分を舐めるように見ている。


「いや、見間違いか…まぁいい、ガキは逃がしてやるからもう帰れ」


 そう言うと何も無かったように立ち去った。

自分は10分くらい頭がフリーズして座っていた。思考が戻ると急いで家に帰った。

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