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楽園〈エデン〉〜才能無しと言われた少年が失われた才能を継承する〜  作者: SS神威


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エピソード10 冒険者ギルド

 毎朝走るのは良い習慣だと思う。

単純に体力が増えるし、街についても知ることが出来て一石二鳥である。


 母は最初、1人で街を出歩くことに心配していたが、自分がワガママを言って1時間以内に戻って帰ってくるのを条件にやっと了承してくれた。


 父が「街に出掛けるのも勉強になる」と言って母を説得してくれたのが大きかった。 

お父さん、ナイス!



 ククルおばさんに教えてもらったがこの街はクリスパレスという名前で、ルーラ教会を中心に街が出来ており、自分の家は東側の住宅街に住んでいる。

 

 西側には貧困層の人が多く住むスラム街があるらしい。

前世はスラム街という言葉すら馴染みがないので1回見てみたい、興味がある。

 

 ククルおばさんには、「治安が悪いので、西側には近寄らないように」と忠告された。今すぐには行くつもりはない。

母やククルおばさんに行ったのがバレると外出禁止になりそうなのでタイミングを見計らって行こうと思う。


「今日は北側の方角でも走ろうかな、まだ行った事ないし」


 ラインは家からランニングして、教会に着いたら一旦休憩する。


(全然余裕だな)

 

 前は教会に走って行くだけでも辛かったが、今は体力が有り余っている、疲れはまだない。

予定通り教会から北側に進む。周りを観ながら走ると、景色が移り変わり面白い。

 

 それと最近気づいたのだが、今の体は凄く目が良い。多分前世の5倍、6倍以上遠くを見えるし、集中すれば夜もびっくりするぐらい何処に何があるかはっきり分かる。

前世は視力が低かったので便利である。



 教会から東側は住宅街や商店街が並んでおり、道が狭く入り組んでいたが北側は、道幅が広く、酒場などの飲み屋街や武器屋が立ち並んでいた。


(少し雰囲気が変わったな、ん?何あれ)


 緑屋根の大きい建物が気になったので足を止める。看板を見ると冒険者ギルドと書いてあった。


(キターー!異世界転生した時の毎度お馴染みのアレじゃん!!)


 アニメで描かれたモノが目の前にあるのでテンションが上がる。


(ギルドがあるってことは、当然冒険者が居て、もしかしたら、ダンジョンとか洞窟とかあって、いやそもそもこの世界に魔物はいるの…)


「おい、坊主、そこで何してる」

 

ビクッッ!!


 目に切り傷が入った強面の男に声を掛けられた。


「え、いや別に何も」


「別にって事ねぇだろうよ」


(雰囲気が反社なんですけど!)


 見知らない人に声をかけられて動揺してしまう。男は顔が怖く胸板が厚い、身体がガッチリしている。


「いや、あのその、お使い、お母さんにお使いを頼まれただけで……」


「お使いねぇ、その年齢でな、はーん…」


(もしかして怪しまれてる!いやまぁ普通に考えて子供1人はおかしいか?おかしいよね、でも迷子とかで問題になったらお母さん絶対面倒くさいしなぁ〜嫌だな、逃げちゃおうかなぁ〜)


「自分は決して怪しい者じゃありません、野菜を買ったら家に帰ります」


 逃げる選択肢もあったが自分の能力と男の能力の差が分からず正直に話をした。


「お前さんがどうって話じゃねぇ、最近この街も物騒になってきたからな、先週は3人も殺されたから子供1人は危ないと思って声掛けただけだ、迷子じゃないならいい」


(なんだ、意外と良い人じゃん)


 顔に反して、良い人なら質問したい。


「お兄さん、あの看板って何?」


「お、お兄さんってお前、あれはだな冒険者ギルドだ、分かるか坊主」

 

 お兄さんという言葉が効いて親切に教えてくれた。少し照れくさそうにしている。


「冒険者ギルドって何?」


「冒険者ギルドってのはギルド側が冒険者などに仕事を依頼をして、冒険者が報酬を受け取る場所だ、国から依頼されるものもあるし、街からの依頼もある」


「依頼ってどんなの?」


「まぁ色々だな、街の掃除から外にいる魔物駆除まで幅広くある」


(やっぱり魔物がいるのか、一回ぐらいは戦ってみたいな)


「魔物って外にいるの?」


「大体は壁の外にいるが、多いとたまに侵入するするから駆除しなきゃならねぇ」


「この街って壁があるの!」


「坊主、お前まだ見たことなかったのか、ギルドから更に奥に進むと壁が見えてくるぞ、この街は国の中じゃ2番目に大きいからな」


(やっぱり結構大きい街なんだ、しかも壁に囲まれてるって相当だな)


「へぇ~教えてくれてありがとう、お兄さん、ちなみにギルド見てみたいけど駄目?」


「坊主にはまだ早いな、今日はもう帰りな」


(ちぇ、まぁこの人も自分の事を心配してくれてるだけだししょうがないか、隙を見てまた来よう)


「分かった、またね、お兄さん」


「おう、またな坊主、帰りは気をつけろよ、ケイシーダーマって奴が夜に徘徊してるかも知んねぇからな」


 強面のお兄さんに対しては家に帰る振りをしているがまだ帰るつもりはない、壁があると言われたからには、どんな物なのか気になるので最北まで走る。


 ギルドを過ぎると酒場だったり、工房がある。

東側には店といっても服屋や食べ物を売ってる店が多かったが北側にはギルドがあることもあって武器屋や職人の工房が多い。

商人の数も東側より多く、商人と冒険者は、魔物らしき毛皮だったり、牙を直接売買している。


(将来冒険者になるかは置いといて、外で魔物と一回ぐらいは戦いたいわ)

 

 アニメで夢見ていた世界が更に広がりワクワクが増す。

 

(そもそも今の自分は、同年代とどのくらいの能力差なんだろう、弱いとは思わないけど友達が居ないから分からないな)


「おっと、見えてきた」


 考えごとをしていたらいつの間にか壁が見える所まで来ていた。大体ギルドから走って20分程である。


(思ったよりデカいな)


 壁は10メートル以上あり、街門や見張り台もある。予想より強固に見える。


(もっと近くで見たいな)


 そう思って壁に近付こうとした時、寒気がした、背筋が凍り母の鬼の形相が脳に浮かぶ。


(アレ、今何時だっけ…あ、ヤバイかも)

 

 母に言われた時間をとっくのとうに過ぎている。自分はこれまでないくらいの勢いで家まで走って帰った。


 勿論、母には凄い怒られ1週間外出禁止になった。お母さん、反省してるから許して下さい。




 ある日、自分は思った…


 いい加減、父の仕事が知りたい!

ローザ先生のシゴキですっかり忘れていたが、父が何の仕事をしているかまだ把握していないもん!


 というわけで父に直接聞く事にした。


「ライン、おはよう、今日は早いな」


 父は玄関に居て仕事に行く準備をしていた。


「おはよう、お父さん、今日も仕事?」


「あぁ仕事だ、今日も良い子にしてろよ」


「ねぇ、お父さんの仕事って何してるの?」


「興味あるなら一緒についてくるか?」


「興味ある、絶対行く!」


 ラインは迷わず即答した。

ローザ先生のシゴキから解放されてラッキーである、たまにはズル休みしたい。


 ラインは父と手を繋いで出勤する。父の仕事を見学するからか今日は余計カッコよく見える。

 

(へぇ~仕事場って教会の北側なんだ)


 街を進むにつれて、毎朝の見慣れた光景が続いた。教会から北側を進み、まさかの場所で止まった。


「ここって?」


「お父さんは冒険者ギルドで働いてるんだ、冒険者ギルドって分かるか?」


「お父さんって冒険者だったの!?」


 まさかお父さんが冒険者だとは思ってなかった。

剣術の練習はしていたものの、強いという感じはしない。何より働く格好がラフでしかも毎日綺麗な服で帰って来るので意外である。


「ふ、違う、違う、お父さんは冒険者じゃなくて冒険者ギルドのギルドマスターなんだ、冒険者ギルドを管理してる人って覚えればいい」


「おおぉぉ」

 

 多分偉い役職なので感嘆の声をあげておく。


「中に入ってみるか?」


「うん」


(いつ冒険者ギルドの見学行くか迷っていたがまさか父がギルドマスターだったなんて)


 予想外の職業だった。ギルドマスターなら家が裕福なのも納得がいく。

 

 中に入ると多くの人がいて、短剣や大剣、杖、戦斧などの武器を持っている人で溢れかえっていた。


 初めて杖を見た。魔法の威力や精度を高めてくれるが接近戦に弱いので持つ人が珍しいと母に聞いていた。


 入口の隣には掲示板があり依頼の紙が大量に貼ってある。掲示板には人だかりが出来ている。この感じを見るに依頼は早い物勝ちなのだろう。


「マスター、おはようございます」


「おはよう」

 

 通り過ぎる受付のお姉さんや係の人が挨拶してくるが自分の事は全く気にしない、冒険者が雪崩の様にやって来てはすぐ出ていく。人の出入りが激しい。


「おい、坊主、ここで何してる?」


「あ、あの時の!」


 前に会った強面のお兄さんに声を掛けられた。


「ダンクは今日も精が出るな、俺の子供と知り合いか?」


「おう、まぁな、そうかハルトのガキだったか」


「私の子供のラインハルトだ、世話になったな」


「確かに世話になったよ、でもお兄さん、今度からは坊主じゃなくてラインって呼んでね」


 すかさず会話に入る、自分は坊主ではなくラインなのだ、自分の名前は気に入っている。


「ハルトのガキなだけあって利口そうだな」


「まぁな、頭は相当良い」


(いきなり褒められた!)


 父にはなかなか褒められないので急に褒められると顔がニヤニヤする。


「じゃぁな、俺はルックバードを狩りに行くから失礼するぜ」


「待てよ、ダンク…この街を離れるのは本当か?てっきりずっと居るもんだと思ってたんだがな」


「受付嬢から聞いたのか?口が軽いのも考えもんだな」


「寂しくなる、ダンクにはいずれ新人教育を任せようと思って画策していたのが…報酬はかなり弾ませるつもりだ、どうだ?クリスパレスに残る気は無いか?」


「新人教育だって?俺はそんな柄じゃねぇ、金もたんまり稼いだ、悪いがこれからはライブプレスト王国で更に名を挙げるぜ、今日までの付き合いだ、な〜に今生の別れじゃねぇよ、またいつか遊びに来るぜ」


 そう言って他の人も引き連れてギルドを出た。

杖持ちの人が一人、大剣を持った人が二人、ダンクさんは、戦斧を持っていた。

4人パーティーなのだろう。


 その後、自分はギルドマスター専用の部屋に通されて午前中お父さんの仕事を見ていた。

見学した感じギルドマスターは店長のような役回りに見える。名前の割に仕事は地味だ。


「お父さんって強いの?」


 机に溜まった書類を読んでいる父に話しかける。


「普通だな、そこまで強くはない」


「強くなくてもギルドマスターになれるんだね」


 前世見ていた異世界アニメのギルドマスターは、街で一番強いという設定だったので意外である。この世界は割と現実的かも知れない。


「お父さんは計算と人の使い方が上手かったからな、ギルドマスターは別に強くなくても問題無い、機転と要領さえ分かればラインでもなれるさ」


(これは自分に仕事を引き継いで欲しいアピールなのか?確かに収入とか悪くなさそうだけど冒険者になってみたいよなぁ〜、夢がありそう、ギルドマスターって公務員みたいで安定はするけど、ロマンが無い気がするし…)


「分かった、考えておくよ」

 

 曖昧な答えを言ったが父は集中していて聞いているか分からなかった。

ずっと父の仕事を見るのは飽きたので午後はギルド内をフラフラしていた。


 依頼書に目を通して見る。

依頼には依頼内容、お金、ランクなどが書いてあった。


「このランクってどんな感じなんだろう?」


「僕?ランクが気になるの?」

 

 依頼書を見ていたら後ろから受付嬢が話しかけてきた。受付嬢なだけあって顔が整っている。


(こ、これは…凄い)

 

 顔だけじゃなくて胸も素晴らしい物をお持ちだ。ローザの10倍はある。いや0に10掛けても0だから違うか。

冒険者ギルドの受付嬢が可愛いのはどの世界も共通である。


「もしかしてこのCとか気になるの?」


「いや、Cどころの話じゃないだろ、E以上はあるな、いやFもあるかもしれな…ボソボソ…」


 父はギルドマスターだったがラインはグラビアマスターだった。

グラビアで培われた目利き能力のお陰で大体のカップ数が分かる。

欠点は測っている最中に周りが見えなくなる事だ。


「あのライン君で合ってるよね?女性のカップ数を測るのは一旦止めようか」


「あ、」


 受付嬢は、ニコニコしているが目の奥が笑っていない。人の目にはよく本質が映る。


「気になってしまいすみません、失礼でした」


 ラインは深く頭を下げる。この女性からはダンクとは違うベクトルの怖さがあった。


「もしこれから、好きな女の子が出来たときに嫌われちゃうから今度から辞めようね」


(ギクッ、その言葉は凄く刺さる、現世では女の子に嫌われたくない!)


「もう二度としません、ここに誓います」


 ラインは絶対守れない誓いをした。


「よし!物分りのいい子だね、そんな子には冒険者ギルドについて教えてあげよう」


 巨乳受付嬢が人差し指を立てて説明を始めた。

冒険者ギルドは朝は賑わっていたが昼過ぎからはガラガラだった。

このお姉さんも暇だったのだろう。

ラインは話すたびに揺れる受付嬢を見ながら説明を受ける。


(も、もちろんしっかり聞いてますよ、別に胸なんかミ、見てないし…)

 


 要約すると冒険者には上から

S、A、B、C、D、E、F、Gの8ランクあり、依頼を達成するとランクが上がるようになっている。

依頼も難易度によって同じランクがあり、自分のランクと同じもしくは、自分のランクから下のランクの依頼を受けれる仕組みになっている。

Gランクなどは上がりやすくBやAなどの上位ランクは上がりづらい。

冒険者ギルドの仕組みは至ってシンプルである。


「朝居たダンクって言う人はランクいくつなの?」


「あの人は、結構ベテランでCランクかな、この辺では結構高い方の部類に入るね」


(Cランクで高い部類に入るのか)


「AランクとかBランクってなる人少ないの?」


「そうだね、このギルドに来る人でAランクは1人いるくらいでSランクの人は、私は見たことないかな、そもそもA級の依頼がなかなか無いから上げる意味が余りないのが原因だけどね」


「教えてくれてありがとう、お姉さん」


 丁寧にお辞儀をしてお礼を言った、決して胸が大きくて可愛いからではない。


 夜まで適当に時間を潰し(最後は飽きた)父と手を繋いで帰る。


 途中、父に「また来てもいいぞ」と言われたがもう当分行く気はない。やる事が何も無く、暇すぎると逆に疲れることが分かった。

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