プロローグ0 奴隷制度
プロローグは主人公視点ではありません。特殊な始まりですが宜しくお願いします。
あと、何人殺せば俺達は救われる?
幾多の屍を踏み越えてもまだ足りないってのか?
来世は地獄行きだろう、最早地獄すら行けないかも知れない。それでも俺は迷いなく人を殺す。
人には才がある様に俺には人を殺す才能があった。
世間では俺を死神と呼ぶ。
裏の世界では、No.1の殺し屋らしい、勝手に異名をつけるのは良いが興味のない仕事が舞い込んでくるので迷惑極まりない。
死神の足元には女の首が転がり湖の様に血が広がる。隣の部屋には男と子供の兄弟が横たわっていた。
「この家は4人だったよな…」
誰かに聞いたわけではない、ただ頭に入れた情報と照らし合わせる。1人も逃がしてはならない、これは絶対だ。
四人家族で大人二人に子供二人。
この家系は武器商人として莫大な利益を生み出した事でこの国でも有数の大貴族になった。
嫡男は今度入学式があるので家の中はその準備で追われていた、全寮制なので無理もない。
金の心配がなく、愛に溢れ、将来が約束された誰もが羨む理想的な家族。
子供は親が敷いてくれた道を歩くだけで明るい未来が予定されていた。
俺も貴族だった、歩く道が用意されていた、訳あって今は殺し屋だ。道から逸れたつもりはない、ただ新しく道を開拓してるだけだ。
開拓中に障害を見つけた、それがこの家族だ。
邪魔だから俺は全部壊し全員を殺した。
この家族を殺した理由は武器商人ではなく奴隷商人だからだ。
表向きは武器商人となっているが、実際は奴隷を売り捌く事で、財を成し家を大きくしてきた。
代々受け継がれてきた事業であり、この男で三代目だ。
この家族が私利私欲の為に奴隷を売買するように俺も自分の為に奴隷商を殺す、そこに正義はない。
だからと言ってこの家族に個人的な恨みは全くない。ただ生きていられると困るので殺しただけ…そう、奴隷商人に生きられると俺達の立場が危うい。
奴隷の殆どは俺の同胞、又は同族だ。
同じ血を引いている、世間一般的には劣等人種だとよ。
才能が無く、ルーラ様から見放され、世界から淘汰されるべき存在、それが俺だ。
だが俺には才能があった。
三国世界大戦の大敗から途絶えたと思われた才能が俺に芽生え、開花し、覚醒した。
疑問だった。
何故失われし才能が俺に芽吹いて輝き放つのか?
己の才能に戸惑い迷う中で親父の言葉が全てだった。
「私達を助けて欲しい、お前だけが頼りだ」
俺は家から出た、次の日には母国から飛び出して世界を駆け巡った。
初めて人を殺した時は、罪悪感で押し潰されそうだったが指が足りなくなると数えるのを辞めた。
一人、一人、殺した感覚が墨の様に黒く手に残る。飯を食べても味がしない。夢の中で殺した奴の屍が俺の首を絞めてくる。気が狂いそうだ。
好きで殺してる訳じゃない、出来るなら誰も殺したくない、でもしょうがないだろ…俺が殺らなければ俺と同じ血を引いた者が犠牲になる。
俺は危険を冒してでも、この手が穢れたとしても奴隷商を殺した。
奴隷商を殺せば全て変わると思っていた。しかし、俺の考えは甘かった。
100年以上前から始まった奴隷制度は一つの産業になり、国にとって大事な資源になっていた。
奴隷を持つ事が貴族にとってステータスになり、奴隷を多く貯蓄する事が国の軍事力に繋がる。
国の中枢が腐り、それが末端まで広がる。
世界は、俺の想定より更に根深く闇に支配され腐敗していた。
俺が数多の奴隷商を殺しても時が経てばその子供や家族が奴隷商になる。
商品はいつも俺達だ、生まれる家が違えば俺も売られていた筈だ。
だから奴隷に関わる全てを殺した、そこに男も女も関係ない、大人も子供も関係ない。等しく平等にあの世に送る。一人目を殺した時から地獄に行く覚悟は出来ている。
しかし全てを断ち切ったとしてもウジのように新たな奴隷商が現れる。
根本的な理由があった。
国だ、国を変えなければこの生き地獄は終わらない。
母国は奴隷制度が無かった、しかし1つの強国が奴隷制度を完全に認めている。
特にサントルクラフトを支配しているルーラ教会は奴隷制度を強く推し進めてきた。
俺が変えなければ・・・だが俺一人では無理だ。
せめてもう一人、失われた才能を継承した人が欲しい。
最悪俺が死んでも俺の意思を継ぎ、俺の才能を継承すれば、いずれ劣等人種でも陽の目を堂々と歩ける世界がやって来る。
なぁ、そうだろ、応えてくれ、俺の歩んでる道に未来はあるよな、そうでなければ俺はただの人殺しになっちまう。
俺は奴隷商殺しを続けながら、蒼い眼を持った子供を探し回った。
次回から主人公視点で物語を始めさせていただきます。




