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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
7章 封罪宮『強欲』攻略
99/140

99 なんて運のない

 

 さて、肝心の封罪宮『強欲』のある場所だが――封罪宮『暴食』があった古代遺跡の近くにある、というほどのご都合展開ではないものの、邪神いわく、わりと近くにつながっているという話だった。


 いや、十分なご都合だよ。けっこう広いらしい大陸の中で、私たちの攻略したい封罪宮が近くにあるという時点で。


 下手をすれば、大陸の端とか、移動だけで何週間、何か月とかかる距離にあってもおかしくはないのだから。


『封罪宮『強欲』のつながッテいル場所は、ハイエルドといウ都市国家の城内ダ』


 この国の西部、国境の先にある山岳地帯。その一つの山の頂に築かれた、天然の要害に守られ人も魔物も攻め込むに難い、小さくも堅固な国ハイエルドだが――しかし、すでに滅んでいるという。


 その原因が、国の中心となる城内につながった封罪宮の存在だ。

 中から魔物が出てきて、抗いきれずに滅亡してしまった。


 たとえ外からの侵攻に強くとも、内側から食い破られてしまえばどうしようもないだろう。


「なんて運のない」


 封罪宮のつながる先は、何かが意図してのものではないという。もちろん封印されている魔物でもない。たまたまなのだ。


 ちなみに、隠しダンジョンにかぎらず、町の中に突然ダンジョンが出現することも、めったにあることではないが、ないわけでもないらしい。過去にいくつか事例があるそうだ。


「ハイエルドか。話にゃあ聞いてるが、行ったことぁねぇなぁ」

「そうだねー。狩場としてはともかく、隠しダンジョンがあるって話も聞いたことないし」

「うちもだ」


 ここの隠しダンジョンの存在は、記録もなければ伝聞もないようだった。少なくとも両パーティの誰も知らない。


 単純に挑戦権を得られた者がいないのか、はたまたダンジョン内で死んでしまったのか。

 どちらにせよ、攻略されていれば彼らだって知っているだろうから、まだ攻略はされていないようだ。


 そのことに安堵する。なにせ、すでに攻略されていたら、私たちがほしい攻略報酬が得られないということになる。それは困るのだ。


『攻略さレた封罪宮ハ、まダ二つだけダゾ』

(あ、そうなんだ)


 最初が私の攻略した『怠惰』で、次が『暴食』だそう。


 まぁ、『暴食』は攻略されたというより、最奥まで行ったヴィレムたちによってボスが解放され、それを私が倒したわけだけど。


 ◇


 隠しダンジョン攻略にあたって、リューリたちは一度、村に帰すことにした。


 比較的近くにあるとはいえ国から出ることになるし、可能なかぎり最速最短でダンジョンを攻略して戻ってくるつもりではあるものの、それでも数日はかかる。


 そのあいだ、彼女たちを町に置いたままにはしておけない。


 私は親御さんたちから子供たちを預かっているのだ。私を信頼して任せてくれたのに、レーナに預けていくわけにもいかないだろう。


 たとえレーナや侯爵が快く引き受けてくれるにしても、目の届くところにいれないのなら、親御さんたちのもとへ返しておくべきだ。


 それをリューリたちに告げると、まだ予定していた日数を消化していないから一様に不満そうにしていたが、人命がかかっているということで納得してくれた。


 なにも、町に来るのは今回かぎりというわけでもないのだ。いろいろ済んだら、またくればいい。レーナも、そのときはまた歓迎すると言ってくれた。


 ちなみに、古城で吸血鬼と一度ドンパチやっているあいだに、留守番のリューリたちがレーナやお屋敷の料理人と作ったお菓子を、帰ってきたときにおすそ分けでもらったのだが、とっても美味でした。


 ◇


 ダンジョンを攻略するとなれば、相応の準備が必要だ。

 ゆえに丸一日を準備に使い、その翌日に出発することになった。


 その丸一日を使って、私はリューリたちを村へと送り届ける。

 徒歩のペースでは一日かかった距離でも、スロースコクーンの全速力ならあっという間だ。


「ずいぶん、早かった、な」


 出迎えてくれたゼストが、心底、意外そうに目を丸くしていた。


 彼が一番、娘の外への憧れを知っているのだから、その反応も当然だろう。

 むしろ、予定よりも戻ってくるのは遅いだろうと思っていたくらいだったとか。


 そんなゼストに事情を話し「おまえは、なんと言うか……大変、だな」と同情の眼差しをちょうだいしたあと、私は大食堂へと赴き、グラトニーグルメにて料理を大量に作った。

 それを片っ端からスゥの『無限異袋』へと詰め込んでいく。


 私ひとりでは一か月あっても食べきれない量だ。

 余分なそれは、万が一何かあったときの非常食的な分と、一緒に行くシグマたちの分である。


 彼らも彼らで食料は準備してくるはずだけど、聞くところによれば、遠征やダンジョン攻略中は携帯食などが一般的らしい。


 彼らが貧相な携帯食をもそもそと食べている横で、できたてのちゃんとした料理をひとり食べるのは、さすがに気が引けるからね。


 ◇


 亡国ハイエルドは西部国境の先にあるが、ロウデンの町は国の最東端。要するに国土を横断する必要があり、けっこうな距離だ。


 徒歩は論外だが、馬車を使っても普通なら片道で十日以上かかる。


 ただのダンジョンを攻略ならまだしも、今回は人命のかかった攻略だ。


 強者の血を欲する吸血鬼。人間を侮っていることや、その傲慢な性格、そして私への執着があるので大丈夫だとは思うが、依然としてギンとエリーの命が握られている以上、できるだけ無駄な時間はかけたくない。


「スロースコクーンなら、最速で行けるんだけど……」


 速度的にも馬よりスロースコクーンのほうが速いし、何より、生きものではないから休息も必要ない。一番の問題はそこなのだ。


 けれど、いくら拡張された空間とはいえ、さすがにレイドパーティのメンバー全員を乗せることはできない。詰め込めば可能かもしれないけど、そんな窮屈な道中は嫌だ……と、そこで天啓が下りた。


「馬車をスロースコクーンに引かせられないかな?」


 結果を言えば、できた。あったのだ、そういう機能が。

 さすが、移動系に長けた魔導機である。



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