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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
6章 血捧げの呪印
92/140

92 私は名探偵じゃないし

 

 その古城は、切り立った崖の上にたたずみ、なんとも雰囲気があった。


 まさに吸血鬼が住んでそうな城といった風情である。バックに月でも浮かんでいれば、もっとそれっぽくなっただろう。


 とはいえ、たしかに吸血鬼の住む城然としてはいるが、もとは百年近く前にいたらしい、少し風変わりな貴族の居城だったという話だ。


 シグマ、ミルミトの二人と、ヴィレム、ギデオン、セルカ、そして調べものが不要となったミリーを加えた七人で、古城の大きな扉をくぐり中へと入る。


 百年近く経った廃墟のわりには、外も内もさほど荒れてはいないが、調度のたぐいはほとんどなく、がらんとしていて寂しいものだった。


 というのも、この廃墟と化した古城はすでに探索され尽くされていて、大型のものや据付の家具以外は、すべて持ち去られてしまったあとなのだ。


 ヴィレムパーティとシグマパーティも、目的は違えど城内をすみずみまで探索しているが、吸血鬼と遭遇したのは被害に遭ったギンとエリーだけで、潜んでいそうな場所もなかったという。


「あるとすれば、単純に地下の隠し部屋なんだよなぁ」


 城内を闊歩していた魔物を一刀のもとに斬り伏せながら、シグマが言う。


 ヴァンパイアは夜行性、というか日中は焼けて灰になってしまうため活動できないが、吸血鬼は長時間でなければ日中の活動も可能だという。

 しかし日光が苦手なことには違いないので、やはりその点でも、寝床とするのは陽光の入らない地下なのだろう。


 地下室自体はあったそうだが、そこはもぬけの殻。それ以外には、それらしき空間はなかったという。


 外観と間取りは、ほぼ合致している。巧みに隠された部屋があったとしても、地上階の間取りには含まれていないことはたしか。地下以外にない。


 おそらくあるのだろう地下空間へと行ける、なんらかのギミックが存在する。それを探し出す必要があった。


 が、その手間は省けそうだ。


「ほかは全部、持ち出されてるのに、一か所だけ、調度品がいくつか残っている部屋があるんだ」

「そこが怪しいと思ってる」


 ミルミトとシグマからの情報だ。


 その部屋は最上階にあるという。

 たしかに、吸血鬼が潜む隠し空間が地下にあると予想はしたが、その入口が一階にあるとはかぎらない。


 地上階に間取り以外の、部屋ほどの空間はなくとも、階段を作る程度の余剰空間はありそうなので、上から地下へ階段がつながっていてもおかしくはないだろう。


 二人の案内で一階ホールから階段を登り、さらに通路を進んで再び階段を登る。そして最上階にある一室へと入った。


 そこには、たしかにいくつか調度品が残されていた。


 背の低い戸棚と、その上に置かれた錆びた燭台。壁掛けの時計に、本棚と、そこにびっしり詰まった本。


 確認してみると、時計は壁にしっかりと固定されていて、燭台も戸棚にくっついており、その棚自体も床と一体化している。本棚も同じで、中の本も奥と互いを接着してあるようだった。


「ん? ……この五冊だけ、奥に入るな」


 抜けはしないようだ。ので、その五冊をすべて押し込んでみる。が、特に何も起こらなかった。


「明らかに不自然ね。これらが隠し扉を開くための鍵で間違いないと思うわ」

「私もそう思うのですよ」


 私も同感だ。この三つをどうにかすれば、扉が開かれるのだろう。


 こういうのって、わりと定番だよな。部屋にあるものを回したり動かしたり、なんやかやすると隠し扉が開くやつ。


 時計は短針と長針をどこかに合わせて、本は順番どおりに押し込むのだろう。燭台は……金庫のダイヤルみたいに回すとか? うーん、わからない。


 というか、私は名探偵じゃないし、謎解きも得意じゃないから、こんなノーヒントじゃどうにもならないよ。きっと名探偵でも、なんのヒントもなしにこれを解き明かすのは無理だと思う。


「面倒だな。いっそ、俺が囮になっておびき出すか?」


 軽い調子でシグマが提案するが、それをミルミトが呆れまじりに却下した。


「意味ないでしょそれ。仮にひとりになったところで出てきても、その瞬間を見れるくらい僕らが近くにいれば、そもそも出てこないかもしれないし、だからといって距離を取れば駆けつけられない。ギンの野性的感覚でも接触を許したんだよ? 君も触れられて終わりさ」

「そうだなぁ。問題ねぇよ、とは言えねぇしなぁ」


 わずかに眉を下げつつ、シグマが提案を取り下げたとき、


『ふム。スロースコクーンの『追跡』機能と『精密解析』機能を使ッテみろ』


 邪神からの唐突なその助言に、私はきょとんとなる。


(スロースコクーンにそんな機能あったの?)

『あッタのダ。もともとそうイウのに特化しタ魔導機だしナ』


 いわく、『追跡』は目には見えない痕跡を取得しそれをたどる機能で、『精密解析』は追跡の機能で得たあらゆる情報を数値化し、計算して、当時の状況や動きを高精度で予測する機能だという。


(なんかよくわからないけど、なんかすごそうだね)

『まァ、それデいいンじゃナイか?』


 なんか馬鹿にされた気がする。


 にしても、おかしいな。機能の確認は、獣人の集落、いまは村に着いたあとにちゃんとしていたはずなのだけど、その二つはまったく記憶にない。


『オマエ、そのときネットに意識のすべテを持ッテいかれテいたダロウ?』


 あ……そういえば。ネットを見つけたあと、ずっと小説読んでた気がする。

 機能の確認は…………うん、ほとんどしてなかったなぁ、はっはっはっ。



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