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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
6章 血捧げの呪印
91/140

91 こういう予感って、高確率で当たるんだよねぇ

 

「ごめん。悪いこと聞いちゃったね」

「気にしなくていいのですよ。顔すら知らないと、意外と平気なものなのですよ。教会の人たちもよくしてくれましたし」


 ふわりと笑うセルカからは、心の底からそう思っているのが伝わってくる。

 両親の顔も知らない孤児でも、育った環境には恵まれたようだ。


「それなからよかった」


 だから私も、言葉どおりの笑みを返した。


 とまぁ『暴食』解放の件はそれで終わりとして、私が思うところのもう一つは、彼らの話が、どこかで聞いたものだということ。


 どこかでというか、ついさっき聞いたばかりである。

 シグマとミルミトから聞いた彼らの事情に、ヴィレムたちのそれが、あまりにも酷似しすぎていた。


(もしかしなくても、ギンと同じで、エリーの衰弱の原因も吸血鬼じゃない?)


 それをかいつまんで話したところ、彼らにも心当たりがあるようだった。


「俺らも、その古城には行ってる」


 彼らはロウデンの町を拠点としているわけではなく、流れの冒険者パーティだそうで、町へ赴く道中に偶然、見つけた古城を、興味本位で探索したのだという。


 その探索中のことだ。

 気づくと、エリーがいなくなっていた。


「といっても、すぐ近くの階段にいたんだが……思い返せば、そのときのあいつ、様子がちょっとおかしかった気がするな」

「えぇ。でも、お姉ちゃん自身はなんともないと言ってたし、そのときは普通に元気だったから、あまり気にはしていなかったのだけど……きっと、あのときだわ」


 ギンのときもたしか、彼だけがひとりだったと言っていた。

 彼には相棒の狼たちがいるから、二手に分かれて探索していたと。


 どうやら、間違いなさそうだ。


 その後、一度も使わないだろうと思っていた〈通信オーブ〉をセルカが代わりに起動してくれて、シグマたちと連絡を取る。

 簡単に事情を話すと、まだギルドの近くにいた彼らはすぐに戻ってきてくれた。


 二つのパーティは、互いに見かけたことはあっても交流はなかったようで、まずは自己紹介から始め、お互いの状況を話し合った結果、ヴィレムたちも一緒に吸血鬼討伐へ赴くことになった。


 ◇


 まったく想定もしていなかった予定外の用事が入ってしまったが、とりあえず今日は本来の予定を消化する。


 服屋にてレーナたちと合流し、そこでいろいろあって精神的に疲労しつつ、その後、まずは本屋へと寄ってもらう。


「……本って、意外と高いんだね」


 元の世界の換算で、一番安いものでも一冊二千円だ。しかもかなり薄い。


「これでも安くなったほうらしいわよ。いまは、同じものを何枚も複写できる魔法が開発されていて、手間もさほどかからなくなっているけど、昔は人の手で一冊一冊、書き写していたそうだから」


 そこは印刷の魔道具とかじゃないんだね。


 まぁ、元の世界も、印刷技術が発達するまでは写生だったんだよな。

 考えただけで腱鞘炎になりそうだ。なるわけないが。


「さ、遠慮しなくていいわよ。必要なものは全部、買いましょ」


 セレブの金銭感覚が怖い。


 ここでもし私が、この店にある全部の本が必要って言ったら「ここにある本、全部ください」とかやっちゃうのかな。……やっぱりこわい。


 ◇


 お次は、魔法雑貨店に入る。


「おぉ、いろんなポーションがある」


 色とりどりの液体が入った、いろんな形の瓶が棚に並んでいる。

 いかにもファンタジーな魔法ショップって感じだ。


 治癒に魔力回復、解毒、耐性ポーションに……お、エナポもある。


「レーナ。ポーション類、ここにあるの全部、いい? これ以外に在庫があれば、それも全部、買い占めたいんだけど」


 セレブの金銭感覚が怖いと言ったあとでアレだけど、本と違ってポーションは必須アイテムだ。あるだけほしい。


「えぇ、もちろんいいわよ。でも、〈エナジーポーション〉も全部、買うの? これ、使いどころのかぎられたポーションよね。体にもあまりよくないと聞くし。そんなものをこんなに買って、どうするの?」 

「あぁ……うん。心底嫌なんだけど、なんか必要になりそうな予感がするから。こういう予感って、高確率で当たるんだよねぇ……だから、一応、念のためにね」


 と答えた私の虚無を見てしまったらしいレーナが、ぶるりと震える。


「わ、わかったわ。全部、買いましょ」

「ありがとう」


 ◇


 そんな感じで、その日は以降、リューリたちにも付き合いつつ、可能なかぎりの買い物をした。

 しかし明日は当然、彼女たちを連れていくわけにはいかず、私がいないのに外に出られるのも心配なので、屋敷にいてもらうことになる。


 仕事には一緒に行けないことはわかっていて、町にも出れないことに、リューリたちはしょんぼりしていたが、


「そうだ! 明日はみんなでお菓子作りをしましょう! 自分たちで作ったお菓子でお茶会をするのよ。素敵だと思わない?」


 とレーナが言えば、一瞬でこちらから意識が逸れた。お菓子作りとお茶会へ完全に興味が移っている。チョロイとは言うまい。


 そこでさりげなく私を見たレーナが、パチリと可憐なウィンク。

 やはりフォローしてくれたようだ。助かる。


「レーナ、お菓子作りとかするんだ」

「たまにね。クッキーとかガレットとか、簡単なものしか作れないけど」

「それでもすごいと思う。私は全然できないし」


 貴族令嬢でもお菓子作りとかするんだなぁ。

 それが普通なのか、レーナが特殊なのかはわからないけれど。



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