表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
6章 血捧げの呪印
82/140

82 さっさと肥溜めにでも帰ってくれるかな

 

 ギルドへと到着し、その少し手前で馬車を降りる。


 事前に聞いたところによれば、イメージどおり荒くれ者も多い冒険者が集う場所ということで、最初は私ひとりで用事だけ済ませてくるつもりだったのだが、案の定と言うべきかリューリが一緒に行きたいと譲らなかった。


「トアがいるんだもの、大丈夫でしょ」


 と全幅の信頼を寄せてくるレーナの一言によって、結局、みんなで行くことになった。


 護衛なんて引き連れていたら目立つだけだと、騎士だけでなく従者のシウカも待機を命じられていた。そこも、私がいれば問題ないと。

 まぁ、大罪ボスや悪魔以上に強い奴は、そうはいないだろう。


 冒険者ギルドは、三階建てのけっこう大きな建物だった。

 高さより横と、たぶん奥にもでかい。


 正面のど真ん中に出入口があり、両開きの扉は開け放たれていた。

 中へ入ると、中央部分が二階まで吹き抜けになっていて、開放感がありとても広く感じる。


 正面にはカウンターが、右手には階段と紙の貼られた大きなボード、手前には別のカウンターがある。

 正面のものが登録や受注などの手続きをする受付カウンターで、もう一つのほうは買取カウンターのようだ。


 左手は酒場が併設されていて、二階席もあるらしかった。

 そんなフロア内は、多くの冒険者たちでにぎわっている。

 うーん、ファンタジーだ。


 リューリたちはキラキラがあふれ出てきそうなくらい目を輝かせ、しきりに首を振っている。しっぽも振っている。アルマのポンポンみたいなしっぽもぴょこぴょこ動いていて可愛い。


 意外だったのはレイニスで、珍しく獣人三人娘と同様にキラキラしているのだ。記憶の中に冒険者ギルドの存在がなかったのだろう。


「レーナは来たことあるの?」

「えぇ。何度か、お父さまに連れられてね。でも、普通にプライベートで来るのは初めてよ。全然、見え方が違う」


 ふらふらどっか行きそうなリューリは私がしっかり捕まえて、用のある正面カウンターを目指す。――と、その進路に男が立ちふさがった。


 その瞬間、私はげんなりした。あるのか、テンプレイベント。

 勘弁してよ。すんなりギルドから出させてよ、もう。


「おいおい、ここはガキの遊び場じゃねーぞ」


 チンピラ然とした、ここにいるからには冒険者なのだろう男が、見事と呼びたくなるテンプレ台詞を吐きながら近づいてくる。


「つーか、ガキ以前に、なんで獣人がいんだよ。ここは人間様の町だぞ、獣は獣らしく、さっさと森か檻ん中に帰りやがれ」


 男は獣人アンチらしい。


 さて、どうしたものか――と思っていると、キッと眦を吊り上げたレーナが前に出た。


「いまの言葉を取り消しなさい。彼女たちは、私たちと同じ、れっきとした人種族よ。侮辱もいいところだわ。取り消して、彼女たちに謝りなさい」


 体の大きい冒険者相手にいっさい怯まず、毅然とした態度で言い放つ。


「あぁ? なに言ってやがんだ、てめえ。取り消して謝る必要があることを言った覚えはねーぞ。むしろ、侮辱してんのも謝んのもそっちだろ? 俺ら人間様と畜生風情を同列に言うんじゃねーよ、胸クソ悪ぃ」


 対するチンピラ冒険者は、獣人アンチガチ勢らしく、心の底から嫌悪しているといった様子だ。

 もはや、そう植えつけられて生まれてきたとしか思えないレベルで、いささか奇妙なものを感じる。


「不愉快なのはこちらのほうよ。第一、ロウデンが人間だけの町だなんて定められていないし、今後もそうなることはないわ。ギルドにだって、種族制限はないはずよ。あなた個人が獣人を嫌うことに何かを言うつもりはないけど、あなたが彼女たちを追い出す権利はないのよ」

「んな御託なんざどうでもいいんだよ」


 男がハッと鼻を鳴らす。


「……おいおい。あいつ、あの方が誰かわかっていないのか?」


 遠巻きにしている冒険者たちの、ひそめた会話が聞こえてくる。


「まぁ、定期的に顔見せしてるとはいえ、見たことない奴もいるだろ、そりゃ。特にこの町に来て日の浅い奴なんかはさ」

「つーか、誰も止めないのか」

「んなこと言ったって、あいつはもう手遅れだし、下手に口出ししてこっちにまで飛び火したらたまんねーよ」


 ギルド内にいる全員というわけではないものの、周囲にいるけっこうな数の冒険者たちから、私たちは注目を浴びてしまっていた。


 けれど……そんなことはもう、どうでもいい。


「てめえだって、どうせ金持ちの道楽だろ? んなこれみよがしに着飾らせた獣人のガキどもを、ペットみてーに連れ歩いてよぉ?」

「っ!? そんわけないでしょう!? なんてことを言うのよ!!」

「はっ、どうだかな。だいたい、そんななり損ないの畜生どもと歩けること自体、俺には信じがたいね」


 男が嘲り笑う。……あぁ、すごく不愉快だ。


「どうせ、てめえも本心じゃあ――」

「ねぇ、そろそろ黙ってもらえる?」

「――あ?」


 思いのほか低い声が出た。


「だから、そのクソみたいな臭いのする口を閉じろって言ったんだよ。同じ空気を吸うのも不快。さっさと肥溜めにでも帰ってくれるかな」

「っ……! こ、このアマぁ、自分が誰に何を言ってんのかわかってんのか!? ちょっと可愛いからって調子こいてんじゃねぇぞ!?」


 え。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ