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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
5章 領主からの招待
72/140

72 なんだか幼い子供みたいだ

 

 しかし……どうしたものか。

 私が応じなければ、暴走したレーナが、危険な怪物どもの巣窟に飛び込んでくることになる。


 彼女のことだ、どうにかして監視なども振り切ってくるだろう。


 それで魔物に食い殺されてしまっても自業自得ではあるのだが、だから私には関係ない、なんて非情なことも言えそうにないし。


 面倒だけど、かかわりたくないけど……行くしかないか。

 あとのことは、まぁ、なるようにしかならないだろう。


 あぁ……ほんと、全然ぐーたらできない。


 けどま、ちょうど町には用事もあったしな。

 ついでに訓練用のポーションとか必要なものを買ってこよう。


 衣類とか生活雑貨とか。グラトニーグルメがあるから、食材とか調味料とかはいらないかな。いまのところは。


「わかった、行くよ」

「ありがとうございます!!」


 よほど嬉しかったのだろう、シェイヴィに両手を取られ、上下にぶんぶん振られた。激しい、激しい。


「それと、もしよければ、あのとき一緒にいた少女たちもぜひ、とレーナ様が仰っていました」

「リューリたちも?」

「はい。せっかく出会えたので、ちゃんとお友達になりたいと」


 あぁ、それもレーナらしいな、と思ってしまった。


 ほんの半日も一緒にいたわけではないけど、友達を助けるために自分をエサにするような子だもんね。


 檻の中でも、捕まっていた子たちに声をかけ、しきりに励ましていた。種族や身分の違いなど、まったく気にもとめずに。


 とはいえ、それは私には決められない。リューリたちの意思もそうだし、何より親御さんたちの許可がないと。


 ただでさえ一度、人間に捕まっているのだ。

 結果的に無事に戻ってきたとはいえ、それからまだ数日しか経っておらず、向かう場所は人間の住む町。


 いずれ冒険に出ることや訓練の許可は得たものの、その条件の一つとして、ある程度、技術を身につけなければ、村の外に出ての実戦さえ許されてはいないのだ。


 リューリたちは全員、当然と言うべきか「行きたい」と即答だった。


 そして、気になるゼストの返答だが……やはり悩ましげ。頭ごなしに駄目だと言わなくなったあたり、だいぶ考えや心境は変わったようだが。


「何があっても私が必ず守って、必ずここに連れ帰る。それでも駄目かな?」


 すると、ゼストの眉間からふっと力が抜けた。


「……そう、だな。おまえがいるなら、問題ないだろう。トア、娘たちを、よろしく、頼む」

「うん、任せて。ありがとう、信頼してくれて」

「当然だ。それだけのことを、おまえは、してるのだからな」


 というわけで、私とともに、リューリ、ヤエ、アルマ、レイニスも一緒に町へ行くことになった。


「それで、シェイヴィ。いますぐ行ったほうがいい?」

「どちらでもかまわない、と侯爵様には仰せつかっています。もし都合が悪いようでしたら、都合のいい日時を教えてください。それに合わせ、私たちが迎えに参ります」


 ということなので、ゼストとも話し合った結果、このまま騎士たちと行くことになった。

 別に用事なんてないしね。ついでに言えば、特に準備も必要ない。


「いつ、戻る」


 ゼストに問われ、私はシェイヴィを見る。


「滞在期間に関しては、トア様に任せるそうです。レーナ様は、いれるだけいてほしいと仰っていましたが」


 苦笑の気配をにじませて言うシェイヴィに、私は腕を組んで思案する。


 私としては、お礼を受け取って必要な買い物をしたら、すぐに帰ってきたいところなんだけど、リューリたちがいるからなぁ……まぁ、とりあえず、


「一週間以内には戻ってくるよ」

「わかった」


 町までは、ここからだと歩いて丸一日はかかるらしい。その往復を除いて、最大で五日も滞在すれば、ひとまずは満足してくれるだろう。

 別に、町に行くのがこれっきりということでもないのだ。


「じゃあ、みんな、行ってきます」

「父、行って、くる!」

「あぁ。気をつけて、な」


 そうして、みんなに見送られて、私たちは村をあとにした。


 ◇


 ウルグレン侯爵家が居を構えるロウデンの町までは、徒歩で丸一日、かつ森の中には魔物がいるので、状況次第ではもっとかかる。


 そんな距離を歩くなんて面倒きわまりない。ということで、私たちはスロースコクーンでいかせてもらうことにした。


 いろいろあって、ろくにぐーたらもできていないのだ。

 せめて町までの道中にたっぷり堪能させてもらう。


 全員が乗れれば、それこそ数時間程度の道のりとなるのだが、さすがに鍛えられた騎士が五人も同乗するのは無理なので、彼らには徒歩で頑張っていただく。


「な……なに、これ?」


 スロースコクーンを展開すると、シェイヴィ以下三人の騎士はただ驚き、未知への好奇をわずかに浮かべる程度のものだったが、約一名、反応の毛色が違った。


「おおおお!? これ、もしかしなくても魔導機だよな!? しかも古代超文明期の!! 嘘だろ、こんなでかいもんがこんなきれいな形で残ってるなんて!? パーツ程度ですら激レアだってのに! マジ奇跡!! マジすげーっ!!」


 エインバースだ。

 これでもかと目をキラッキラに輝かせ、鼻息も荒く拳を握り、それはもう大興奮といった感じである。

 スロースコクーンの周りを忙しなくぐるぐると回りながら、子供のようにひとりはしゃぎにはしゃいでいる。


「なぁなぁ、これどこで手に入れたんだ!? 遺跡か!?」

「隠しダンジョンの攻略報酬」

「隠しダンジョン!? 攻略したのかすげーっ!! いいなーすげーっ!!」


 興奮のあまり、ついに「すげー」しか言わなくなった。

 なんだか幼い子供みたいだ。


 とはいえ、あまり追及されなくてよかった。

 いちいち答えるのも面倒だし。



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