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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
5章 領主からの招待
71/140

71 え、土下座? なんで?

 

 壁を形成している樹木の一本を、レイニスが精霊術にて動かし、そこから五人の騎士が入ってくる。


 現状、よそと交流なんてないから門扉は不要だし、薄い部分を作るのも不安だということで、もし必要があったときは、こうしてレイニスに頼んで開けてもらうというかたちになっていた。


 それにしても、ほんと斬新な門扉だよなぁと思う。

 樹が自ら動くことで入口を作るとか。


 ちなみに、もしレイニスがいなくても、村長であるゼストの許可があれば開閉できるよう精霊にお願いしてあるそうだ。

 まぁ、そんな機会は当分ないだろうけどね。


 ともあれ、その五人の騎士は、どうやらレーナの家に仕えているらしい。


 見張りの報告では〝こうしゃくけ〟ということで、公爵だか侯爵だかはわからないものの、どちらにせよ貴族の爵位としては上位だ。

 私が持つ知識どおりなら、だけど。


『侯爵のほうダナ。この森に接すル領地の、領主のようダ』


 らしい。


 しかし、まったく予想していなかったわけではないけど、まさかそんなに身分の高い家のご令嬢だったとは……。


 この村の長として、ともに出迎えたゼストが一歩前に出る。


「おれが、この村の長、ゼストだ」


 それを受け、二人の騎士が前に出た。


「私は、ウルグレン侯爵家に仕える騎士、シェイヴィ・フェロウ」

「同じく、ウルグレン侯爵家に仕える騎士、エインバース」


 シェイヴィは、水色の髪を肩口で切りそろえ、涼しげな目元と深海色の瞳を持った、スレンダーで格好いい感じの女騎士だ。


 この人は見覚えがある。闇オークション会場にいた。突入してきて、レーナに真っ先に声をかけていた人だ。


 もう一人のエインバースは男性で、こちらは見覚えがない。

 会場にいたのかもしれないが、騎士たちの顔なんてほとんど見てないしね。


 赤茶の髪に健康的な肌の色をしていて、やや吊り目気味の双眸と、口元に覗く八重歯がやんちゃそうな印象を与える。

 男性、というか騎士にしては細身だが、おそらく着やせするタイプなのだろう。身ごなしから、ちゃんと鍛えられているのがわかる。


 この二人が使者としてのリーダーらしく、後ろに控えた残り三人の騎士は、己で名乗ることなく、ただ不動の体でたたずんでいた。


 にしても、同じ人間でも、家名があったりなかったりするんだな。

 貴族と平民の違い、とかだろうか。


 ちなみに、言うまでもないだろうが、獣人にはない。

 私はもちろんあるけど、この世界では必要ないかなと思う。


「彼女が、トアだ。おまえたち、トアに用、あると言ったな?」


 ゼストの問いに、シェイヴィが応じる。


「はい。ウルグレン侯爵様より、ご息女レーナ様の命を救ってもらった礼がしたいので、ぜひとも屋敷へお越しいただけないか、とのことです」


 レーナ関連での使者と聞いて、そんなところだろうなとは思っていた。

 とはいえ、それに対する私の答えはもちろん、


「礼なら不要です、と伝えてください」


 拒否である。


 これ以上、貴族なんかと関わり合いになりたくない。たとえそれが、善良な貴族であるとわかっていてもだ。

 だからあのとき、こっそりと抜け出してきたのに。


 シェイヴィは最初、何を言われたのかわからないといった様子で目を瞬かせていたが、ややあってうろたえ始める。


「あの、いえ、ですが、それでは、こちらとしても……」

「レーナのことは、あくまで成り行きだから。私は私で捕まって、私が逃げるためにしたことが、結果としてレーナたちを助けることになっただけ。なので、どうぞおかまいなく」


 どうしても礼がしたいというなら、放っておいてほしいものだ。さすがにそこまでは言えないけど、どうか察してほしい。……というのも無理があるか。


 にべもない私の様子に、思いのほか愕然としていたシェイヴィたちだが、しかし突然、その場に両膝をついたのだった。


「え、なに? え、土下座? なんで?」


 というか、この世界にも土下座の風習ってあるんだね?


「どうか、お願いします! 私たちとともに、侯爵様のお屋敷まで来ていただけないでしょうか! このとおりです! どうか、どうかっ……!」

「ちょっ、ちょっと待って。待って。なんでそんなに必死なの」


 土下座までして懇願してくるなど、とても尋常ではない。

 そこまでして礼を受け取らせたいなんて、いや、なくはないかもしれないが、普通に考えて妙な話だ。


「……私たちが手ぶらで帰れば、レーナ様は、今度こそ自らここへ来ようとするでしょう」

「なんで? どういうこと?」


 いわく、何がなんでも私にお礼をすると言って、ひとりでこっそりとここに来ようとしていたらしい。

 結局、父親に見つかり止められてしまったようだが……当たり前である。


 ここは森の中でも奥地、一般的にはかなり強い魔物がはびこる危険地帯。仮に護衛がいたとしても、貴族令嬢が足を踏み入れていい場所ではない。ひとりでなんてもってのほかだ。


 それに、シェイヴィいわく、闇オークションの一件で、レーナはしばらくの謹慎をくらっていたそうな。それもまた当然のことだった。


(でもまぁ、レーナらしいといえば、らしいけど)


 わりと突撃系っぽい、ものすごく行動力のあるおてんば娘みたいだったからね。



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