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異世界ぐーたら無双  作者: 空木るが
5章 領主からの招待
70/140

70 侯爵の使者

 

 樹海じみてうっそうとした森の中を、奥へと進んでいく五人の騎士がいた。

 彼らはウルグレン侯爵家に仕える騎士であり、使者として派遣されている。


 その中でも、使者としての任を与えられたのは先頭を行く二人の男女だ。

 この森には多くの魔物が闊歩し、奥へ行くほど強力かつ一筋縄ではいかない個体がはびこっているため、戦力としてもう三人つけられたかたちである。


 彼らの目的地は、この先にあるという獣人の集落。

 より正確に言うなら、その集落にいる可能性の高い、人間の少女――侯爵の一人娘レーナが命を救われたという大恩人に会うことが、彼らの使命であった。


 ただし、可能性が高いというだけで、その少女がそこにいるという確証はない。


 件の闇オークション会場に一緒にいたというその少女は、レーナが突入してきた騎士らと話しているうちに姿を消してしまったらしい。


 命を救われた礼をしたくても、どこに行ったかがわからない。レーナも、その少女の名前と圧倒的な戦闘力以外は、何も知らないという。


 状況も状況、ゆっくりと話すのは事が済んでからと思っていたらしく、彼女がいなくなってしまったのはレーナにとっても想定外だったそうだ。


 ただ、会場から消えていたのは、その少女だけではなかった。

 レーナも少し言葉を交わしたという、獣人の娘が三人とエルフの娘が一人、ともに姿を消していた。


 レーナいわく、彼女らは一緒に行動している可能性が高い――ということで、距離的にも、獣人娘たちの故郷だろう、この森にあるという獣人の集落をひとまず訪ねてみることにした、というわけなのだった。


 それ以外にあてがなかったのだ。調べようにも、そのトアという少女の情報がなさすぎた。まったくもって情報が得られなかった。


「この辺り、だったよな?」

「うん。そのはずだよ」


 やがて、一行の前に巨大な壁が立ちふさがる。


「なんだこれ。樹の壁?」


 そう、それは樹木の壁としか言いようのない代物であった。

 樹々がずらりと並び立ち、視認できる範囲までずっと続いている。


「こんなもの、聞いてはいないけど……」

「集落の場所は?」

「ここだよ」

「マジかよ。こんな厳重に守られたところだったのか……にしても、こんなもの、いったいどうやって作ったんだ?」


 なにせ、壁に使われている樹々は、地中にしっかりと根を張っているのだ。

 もともとそういうかたちで植えて成長を待つか、根っこごと引っこ抜いて移動させるかしかない。


「うぅん……魔法でも、これほどまでのことは難しいだろうしね。話に聞く、エルフの精霊術なら、あるいは……」


「――人間、か!? 我らの村に、何か、用か!」


 そこで、頭上から声がかかった。


 顔を上げてそちらを見れば、壁を形成している樹木の一部に見張り台のようなものがあり、そこに獣人の男が一人。


 彼はいま、〝我らの村〟とたしかに言った。ということは、ここは間違いなく獣人の集落、いや、村なのだ。


「私たちは、ウルグレン侯爵家より遣わされた使者です! トアという人間の少女を探しているのですが、こちらにいませんか!?」


 女騎士が言うと、獣人の男はわずかに目を見張ったようだった。


「その人間が、ここにいる、として、どうする!」


 騎士二人が顔を見合わせる。


 どうやら当たりのようだ。こんな森の奥でほかと交流なく暮らしていれば、そういった駆け引きにも通じてはいないのだろう。


 二人はうなずき合い、女騎士が引き続き代表して答える。


「侯爵家のご令嬢、レーナ様の恩人である少女トアに、侯爵様より言伝を預かっています! それをお伝えしたい!」


 見張りの男はしばし悩むそぶりを見せたあと、


「そこで、待て!」


 そう言って、見張り台から姿を消す。

 誰かに判断を仰ぎにいったのだろう。


 魔物を警戒しつつしばらく待っていると、男が戻ってくる。


「いま、入口、作る!」


 村へ入る許可が下りたようだ。

 しかし……


「入口を、作る?」


 たしかに、いま彼らのいる辺りに門や扉のたぐいは見受けられないが、出入りできるところへ案内する、ならまだしも、入口を作る、とは……いったいどういうことなのか。


 言葉どおりの意味にしたって、あまりにも不可解である。

 だが直後、訝しむ騎士たちの眼前で、それは起こった。


「――は?」


 壁を作っていた樹木の一本が、かすかな地響きを立てながら、その根を地中から引き抜いたのだ。

 あたかも、自らの意思で動いているかのように。


 かなり太い樹だ。それが大地より離れ、根っこを脚のようにして移動すれば、大人が三人は並んで通れる門となる。


「オレ、夢でも見てんのかな……」

「現実だよ、たしかに。とても信じられない光景だけど……たぶん、エルフがいるんじゃないかな。エルフの精霊術なら、こんなことができてもおかしくはない、かもしれない」

「っても、ここは獣人の集落、村だろ?」

「似たような境遇だし、エルフの一人や二人、一緒に住んでいても不思議ではないでしょ。会場で一緒に消えた中にエルフもいたという話だし、そのままこの村にとどまってるのかもね」


 ともあれ、やや警戒しつつ樹の壁のあいだを通り抜けると、そこには褐色肌の銀狼人とともに、ストロベリーブロンドの髪を持つ人間の少女が立っていた。



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